2045年問題とは?シンギュラリティの意味・AI事例

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近年のAI(人工知能)の発展により、話題になることの多い2045年問題。内容について漠然と知っているものの、正確に説明できない人も多いのではないでしょうか。

本稿では、2045年問題とはなにか、何が起こるのか?そのとき私たちはどう行動すべきかについて解説します。

AI(人工知能)とは?

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まずAI(人工知能)の定義について解説します。そもそもAIに確立した定義は存在せず、専門家により定義はまちまちであり、その解釈は人により異なります。

中島秀之
公立はこだて未来大学
武田英明
国立情報学研究所
人工的につくられた、知能を持つ実態。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究する分野である
西田 豊明
京都大学
「知能を持つメカ」ないしは「心を持つメカ」である
溝口理一郎
北陸先端科学技術大学院
人工的につくった知的な振る舞いをするためのもの(システム)である
長尾真
京都大学
人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステムである。人工的に作る新しい知能の世界である
浅田稔
大阪大学
知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない
松原 仁
公立はこだて未来大学
究極には人間と区別が付かない人工的な知能のこと。
池上 高志
東京大学
自然にわれわれがペットや人に接触するような、情動と冗談に満ちた相互作用を、物理法則に関係なく、あるいは逆らって、人工的につくり出せるシステム
山口 高平
慶應義塾大学
人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための構成的システム
栗原 聡
電気通信大学
人工的につくられる知能であるが、その知能のレベルは人を超えているものを想像している
山川 宏
ドワンゴ人工知能研究所
計算機知能のうちで、人間が直接・間接に設計する場合を人工知能と呼んで良いのではないかと思う
松尾 豊
東京大学
人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術

出典:松尾 豊「人工知能は人間を超えるか」P45より

また、AIを「強いAI」と「弱いAI」、また「汎用型AI」と「特化型AI」に分類し整理する方法もあります。

 

 

2045年問題とは何か

Photo by Sam Howzit on Flicker

2045年問題とは、AIなどの技術が、自ら人間より賢い知能を生み出すことが可能になるシンギュラリティが2045年に起こると予測され、それに伴うさまざまな影響、問題の総称のことです。

アメリカのレイ・カーツワイル博士が2005年に著書「The Singularity Is Near:When Humans Transcend Biology」で提唱しました。

・シンギュラリティ(技術的特異点)とは

シンギュラリティとは、日本語で技術的特異点のこと。AIなどの技術が、自ら人間より賢い知能を生み出すことが可能になる時点を指します。この説は、アメリカの数学者ヴァーナー・ヴィンジによって提唱され、レイ・カーツワイル博士も賛同しています。

レイ・カーツワイル博士が提唱する2045年問題

Photo by Pete Linforth on Pixabay

カーツワイル博士によると、人間の脳は100兆個の極端に遅いシナプスしかなく、2029年には、すでにAIの思考能力が人間の脳の演算能力をはるかに超えるだろうと予測しています。

また、2045年には10万円のコンピューターの演算能力が人間の脳の100億倍になると表現し、これらの予測を「ムーアの法則」「収穫加速の法則」を根拠に提唱しています。

ムーアの法則

ムーアの法則とは、集積回路に使われるトランジスタの数が18ヶ月ごとに2倍に増える法則です。

インテル社の創業者であるゴードン・ムーアにより論じられた指標で、もともとは大規模集積回路(トランジスタ)の生産時の長期傾向における指標を表すものでした。

一般的な公式としては

p=2n/1.5

が用いられ、nは年、Pはn年後のトランジスタ倍率を表しています。つまり、18カ月で2倍、3年で4倍、15年で1024倍の容量のメモリチップが登場することを示します。

ただし、ムーアの法則は物理的な限界を迎えつつあるという意見も存在しています。

NVIDIAのCEO、Jensen Huang氏は、「ムーアの法則はかつて、5年ごとに10倍、10年ごとに100倍だったが、いまでは毎年数%だ。10年単位でおそらくせいぜい2倍だろう。ムーアの法則は終わったのだ」と語っています。

引用文献:「ムーアの法則は終わった」:NVIDIAのCEOがCES 2019でも明言

収束加速の法則

収束加速の法則とは、技術進歩において、その性能が直線的ではなく、指数関数的に向上する法則です。

つまり、新しい技術が発明され、複数のそれらの技術が次の段階の発明に利用されることにより、次世代の技術革新までの間隔が短くなることです。

ムーアの法則では物理的な限界値を迎える半導体の進化も、収穫加速の法則では三次元分子回路などの新たなテクノロジーの出現により、さらなる発展が予測されています。

ヒューゴ・デ・ガリスの予測

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また、遺伝的アルゴリズムの研究で知られるオーストラリアの研究者ヒューゴ・デ・ガリスは、シンギュラリティは21世紀の後半に訪れると予測しています。

ヒューゴ博士は著書「The Artilect War」(2005)で、近年のAIの急激な進歩から計算すると、21世紀後半にはAIの処理能力は、人間の10の24乗倍(1兆×1兆)になると主張しています。

なぜ2045年問題が注目されているのか

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近年、2045年問題が注目を浴びるようになった理由の1つとしては、2014年にイギリスで行われた、コンピューターに知性があるかないかを判定するチューリングテストの結果があります。

この実験では、ウクライナ製のAIが「Eugene(ユージーン)」という名前の13歳の少年として振る舞いました。その結果、30%の観察者が「人間かAIか判断できない」という評価をし、大きな話題となりました。

「チューリングテストの合格が、コンピュータに知性があるかを判断するわけではない」という議論も存在します。しかし、それらを踏まえても、チューリングテストをパスした事実は大きく、AIの急進的な発展が注目されています。

現段階で活用されているAI事例

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現在、強いAI、汎用型AIとよばれるAIはいまだ実現されていません。しかし、弱いAI、特化型AIなどのAIは、「画像認識」「音声認識」「自然言語処理」「予測」の分野で、多くのビジネスに導入されています。

これらの技術は、2012年に登場したディープラーニングがブレイクスルーとなり実現しました。

・ディープラーニングとは

ディープラーニングとは、データから自動で特徴を抽出し分類や予測を行う技術であり、機械学習の一種です。

従来の機械学習では、人間が特徴を定義しそれをもとに学習精度を上げていたため、認識率が低くAI研究が否定的なイメージを抱かれる「冬の時代」がつづいていました。

しかし、2012年のディープラーニング(深層学習)の登場で、学習データから自動で特徴を抽出し精度を上げていくことが可能になり、AI研究のブレイクスルーとなりました。

ディープラーニングの登場により、さまざまなビジネスにAIが用いられるようになりました。

画像認識

画像や動画から文字や顔などの対象物を認識し、検出する技術で、ディープラーニングの適用領域としてもっとも注目を集めています。

Google Lens

Googleが提供するGoogleレンズ画像認識サービスです。レンズを当てると自動的に被写体を認識し、詳細な情報を表示します。ディスプレイに表示されたテキストをデータ化したり、被写体をカメラで解析しその名前や関連情報を検出するなど、応用次第でさまざまな活用が可能です。

ベーカリースキャン

株式会社ブレインがレジに画像認識を導入した事例です。あらかじめ、販売しているパンの画像を登録しておくことで、AIが購入したアイテムを識別し合計金額を表示できます。ベーカリースキャンの導入により、人件費の削減、新人研修期間の短縮、レジの入力時間の短縮を実現しています。

音声認識

コンピュータにより音声を認識し、テキスト化する技術です。ディープラーニングやスマートフォンの普及により、場所を選ばず適用できる技術に進化しています。

豚の呼吸器系疾病の聞き分け

産総研発のベンチャー企業Hmgommは、熊本県立菊池農業高等学校と教頭で豚の呼吸器系疾病の聞き分けが可能なAIの開発実験を開始しています。豚の鳴き声から、呼吸器系の疾病を早期に発見することで、迅速な処置を行うことが可能になり被害を最小限にとどめる期待がされています。

議事録書き起こしAI 「ProVoXT(プロボクスト)」

株式会社アドバンスト・メディアのAI音声認識を活用したクラウド型議事録作成支援サービスです。数時間の録音データが十数分でテキストデータ化でき、茨城県庁にも導入されています。

自然言語処理

人間が会話などに利用している言葉を処理する技術です。現在も発展途上であり、さまざまなアルゴリズムが研究されています。

チャットボット 「Replika」

「Replika」は、アメリカ発で現在世界中に50万人以上の愛用者がいる、ある人のレプリカが作れるチャットボットです。ユーザーの口調や癖を真似、趣味や好みを意識した回答や質問を行い、使用頻度が高いほど精度も高くなります。

『実ビジネス』への自然言語処理の利活用 「Asales」

「Asales」は、「社内の自然言語データ」を解析するサービスです。
営業が残した商談メモなどの顧客接点データを解析し、誰の営業では売れて、誰の営業では売れなかったかを可視化、スコアリングします。これにより、優秀な営業マンのセールストークなど、ノウハウを横展開することができます。また、顧客接点データを解析することで、リードの潜在ニーズを抽出でき、成約率を高めたり、同じようなニーズのある別業界の潜在顧客が把握できます。

予測

AIが大量のデータセットを用い、将来の結果を予測するサービスがさまざまなビジネスに導入されています。

広告クリエイティブの効果を予測

電通はネット広告のCTRなどを配信前に予測するAIツール
「MONALISA」を、サイバーエージェントが同様の効果予測ツール「AI feed designer」を導入しています。
広告の効果測定が予測し効果が高くないものを弾くことで、本当に効果が見込めそうなものだけを選定するだけでよく、広告運用担当者の大幅な工数削減が期待されています。

タクシーの到着時間を予測

「JapanTaxi」アプリのタクシーを呼ぶ配車機能では、AIを用いたタクシーの到着時間を予測するサービスを導入しています。ユーザーは、予測されたタクシーの配車到着時間から、キャンセルするかどうかを判断できることにより、配車依頼数を維持したまま、配車キャンセル率だけを下げることに成功しています。

2045年にシンギュラリティは来るのか?

Photo by Cristian Dina on Pixwls

本記事では、シンギュラリティが来ることを前提として解説してきましたが、シェリー・カプランなどの専門家によってはシンギュラリティは来ないとする説もあります。

それだけ議論の余地のあるトピックであり、未来がどうなるかは定かではありませんが、事実としてAIの進化は著しいです。とくに、ビジネス領域でのAI活用は日々進んでおり、AIが徐々に社会に浸透してることは疑いようがありません。

2045年にシンギュラリティが来るのかは定かではありませんが、今後AIの発展により社会が大きく変化する可能性があります。最新技術により変わり続ける時代を生き抜くために、私たち自身も変わっていく必要があるのではないでしょうか。
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