AIが認知症を顔写真だけで判断、正答率は90%以上

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東京大学医学部附属病院老年病科の秋下雅弘教授、亀山祐美助教(特任講師〔病院〕)らのグループは1月26日、東京都健康長寿医療センター放射線診断科の亀山征史医長らと共同で、人工知能(AI)が認知機能の低下した患者と健常者の顔写真を見分けられることを示したと発表。本成果は世界初とうたう。なお、本研究は1月26日に米国科学誌『Aging(Albany, NY)』に掲載された。

認知症は高齢化社会において最も深刻な問題の一つ

認知症は高齢化社会において最も深刻な問題の一つであり、今後の治療戦略においては早期診断が重要になってきている。しかし、同研究グループによると、認知症の診断のための検査はさまざまな制約を抱えているという。例えば、アルツハイマー病の主病変タンパク質であるβアミロイドが蓄積しているかを検出するための陽電子断層撮像(PET)検査「アミロイドPET」による検査費用は高額であり、脳脊髄液の採取は侵襲的とのことだ。そこで、非侵襲的で時間もかからない安価なスクリーニングが期待されているとした。

また、老化は全身的なプロセスなので、顔で判断する見た目年齢は余命、動脈硬化、骨粗しょう症の指標になるという。これまでに東京大学医学部附属病院 老年病科 秋下雅弘教授、亀山祐美助教(特任講師〔病院〕)らのグループも、見た目年齢が暦年齢よりも認知機能と強い相関を示すことを報告している(※1)。

(※1)Umeda-Kameyama Y et al., “Cognitive function has a stronger correlation with perceived age than with chronological age”, Geriatr Gerontol Int, 2020;20: 779–784, doi:10.1011/ggi.13972

そこで、本研究グループは、AIを使って、顔の情報から認知機能低下を見つけ出すことができるかどうかを調べたとしている。

正面、無表情の顔写真を使って解析

今回の研究では、東京大学医学部附属病院 老年病科を受診して物忘れを訴える患者、および同大学 高齢社会 総合研究機構が実施している大規模高齢者コホート調査(※2)の参加者の中から同意を得た人の正面、無表情の顔写真を使い、認知機能低下を示す群(121名)と正常群(117名)の弁別ができるかどうか、AIワークステーションで解析した。

(※2)2012年度から千葉県柏市在住の高齢者を対象に実施している調査。健康状態、身体の構造と機能、活動、社会参加、心理およびび認知機能などの精緻なデータ収集や解析を実施している。

最もよい成績を示したAIモデルは正答率92.56%

最もよい成績を示したAIモデルは、感度87.31%、特異度94.57%、正答率92.56%と高い弁別能を示した。AIモデルが算出するスコアは、年齢よりも認知機能のスコアに有意に強い相関を示している。


AIが算出したスコアと認知機能検査(MMSE)との関係。AI算出スコアの高いほうが認知機能が低い。

AIが算出したスコアと年齢との関係。AIモデルが算出するスコアは、年齢よりも認知機能のスコアにSteiger検定にて有意(p=3.25×10-35)に強い相関を示した。

また、年齢で2つのグループに分けて解析したところ、どちらも良好な成績を収めたため、年齢の影響は少ないと考えられるとしている。さらに、AIワークステーションによる判断は、顔のどの部分で行われているかわかりづらく、ブラックボックスの側面があるとのこと。そこで、本研究グループは、顔を上下で分けて解析し、顔の下半分のほうが少し良い成績を示した。

今後も実用化を目指す

本研究グループは「今回の研究は人数も限られているため、そのまますぐに応用ができるわけではありません」としつつも、より多くの顔写真を集め、AIに学習させれば、将来的にAIを用いて顔で認知機能低下をスクリーニングできる可能性があるとする。今後も実用化を目指し、本成果から得られた方法について研究を深めていく予定とのこと。

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