【農業AI注目企業9選】人工知能で農家の働き方改革は実現するか?

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就農人口の減少や高齢化など、深刻な問題を抱える日本の農業。これらの問題を解決するため、AIなどの先端技術の導入が急速に進んでいます。

本稿では、その中でも注目の農業AI企業をピックアップしてお届けします。

「ドローン×農業AI」で畑の見回りから農薬散布まで

農業は、広い圃場を自在に飛行できるドローンと大変相性が良いと言われています。ドローンにAIが組み込まれ、育成状況の解析や自動農薬散布が実現しています。

葉色解析AIサービス 「いろは」

いろは」は、圃場の様子を上空からドローンで撮影することで、作物の育成状況を一目で把握できるサービスです。ドローンで撮影した画像をAIで解析し、収量の予測を助けたり、ピンポイントの除草剤散布でコスト削減を実現したりすることが可能です。

画像提供:株式会社スカイマティクス

特に露地栽培では、栽培環境が天候に大きく左右されます。そのため、作物の育成状況を正確に把握することが難しく、圃場の巡回に時間を割く必要がありました。

しかし「いろは」を使えば、圃場巡回の時間が削減できるだけでなく、ドローンでのより正確な育成状況の把握が可能になります。

無料トライアルから始められるようなので、一度試してみるのもよさそうです。

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オプティムのピンポイント農薬散布

株式会社オプティムは、「スマート農業アライアンス」に参加しており、一定の基準を満たした生産者へ無償でピンポイント農薬散布テクノロジーを提供しています。

ピンポイント農薬散布テクノロジーを活用すれば、ドローンで病害虫の発生を検知し、必要最低限の農薬散布が実現します。

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中国最大手の農業用ドローン 「XAIRCRAFT」

飛行制御と農薬散布状況の把握を可能にする最先端システムが、中国農業ドローン最大手「XAIRCRAFT」のドローンに搭載されています。

このシステムにより、完全自動航行と完全自動散布が実現するため、特別な操縦技術を作業員が身につける必要はありません。電柱などの障害物を避ける機能にAIが使われています。

展示会で実際にドローンを見ましたが、農薬用のタンクを搭載することもあり、横幅は1メートルほどの機体です。

広い平野に大規模な圃場がある中国とは違い、山間部の多い日本でもスムーズな飛行が可能なのか気になるところですが、ドローンが一斉に圃場を飛行する様子は圧巻です。

遠隔モニタリングで育成状況を管理、AIで収量予測も

圃場が広いと作物の育成状況を把握するにも一苦労です。さまざまなセンサーで収集した環境データをAIが分析し、最適な作業判断を助けます。本格導入が始まり、多くのデータが蓄積されれば、精度の向上や新機能の追加も期待できます。

生育環境の自動制御システム「クレバアグリ」

クレバアグリ」から、IoT+AIによる農業の専門家のための農業クラウドサービスがリリースされています。CO2センサーや温湿度センサーなど、各種センサーで収集した環境データをクラウド基盤上で機械学習し、水分量・日照量等を自動制御するサービスです。

クレバアグリのシステムの管理には、日本と中国にデータセンターを有するクラウドサービス「Alibaba Cloud」が使われています。機械学習の精度を上げるために必要な、大量の観測データがクラウド上にどんどん蓄積されていく仕組み。

これにより、日本での生産支援ノウハウを迅速に中国でも展開できます。国をまたげば、気候や土壌、作物の品種が変化しますが、世界中の圃場環境データを学習し、AIが頼れる農業アドバイザーとなる日が来るのでしょうか?

簡単操作の圃場モニタリングシステム「みどりクラウド」

気温や湿度のほか、CO2濃度や土壌水分などのハウス内の環境が一目で確認できる、温室内環境遠隔モニタリングシステムが「みどりクラウド」です。通常のモニタリングに加え、AIによるデータ分析を用いた、収穫時期予測病害虫発生原因の推定収量予測精度の向上などの新サービスが展開される予定です。

モニタリングシステムみどりクラウド自体は導入実績がすでに多数あり、2018年11月15日よりAIによるデータ分析サービスの提供が開始されます。そのため、みどりクラウドを利用する農家から取得した作物の品種や土壌環境、気候変動などのデータが、クラウドに溜まっています。気候や土壌環境、栽培品目が似ている国内のデータが豊富なのも、みどりクラウドの利点です。

病害予測特化型モニタリングシステム「Plantect (プランテクト)」

病害予測に特化した温室内環境遠隔モニタリングシステム「Plantect(プランテクト)」がBoschから発売されています。

ハウス内に設置したセンサーで環境データを計測、AI技術を駆使したアルゴリズムにより、病害の感染リスクを92%と、かなりの高精度で予測します。

作物が病害に感染するリスクを事前に知ることで、病害が発生する前に農薬を散布するなど、タイミングを逃さず対策を打つことができるようになります。また、病害によって廃棄する作物が減ることとなり、収穫量の増加につながりそうです。

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農業AIツール導入で作業効率化を目指す

新しい技術の導入にハードルを感じる農家も多いですが、従来の作業を大きく変えることなく、作業の効率化できるAIツールもあります。

豚の体重推定サービス「デジタル目勘」

豚を上から撮影するだけで、体重を推定できるサービス「デジタル目勘」が開発中です。1頭ずつ豚を体重計に乗せるのは、熟練作業者でもかなりの重労働ですが、「デジタル目勘」を使えば、未経験者でも約1分で体重推定が完了するとのこと。

開発の裏側や畜産農家の抱える苦労を聞いてきました。

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inahoのアスパラ収穫ロボット

鎌倉の農業AIベンチャー「inaho」は、アスパラガスの収穫作業をAI搭載ロボットで自動化する取り組みを進めています。

今後はキュウリやナス、ピーマンなど、”選択収穫”が必要な他の野菜にも対応していく予定だといいます。

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AIで大葉の選別出荷「大葉収穫作業支援ロボット」

画像認識AIで大葉のサイズや表裏、異物を選別する「大葉収穫作業支援ロボット」をシンフォニアテクノロジーが開発しています。AIと聞くと、大規模農家で導入して作業効率化をするというイメージがあるかもしれませんが、このロボットは個別農家でも設置が可能です。

今までおこなってきた作業の流れを大きく変える必要がないため、新しい技術に抵抗のある農家でも、AI導入の精神的ハードルが低くなるのではないでしょうか?

大葉は愛知県豊橋市の特産品です。豊橋技術科学大学との共同開発で、地域に根ざした開発をしていることも、農家が受け入れやすく感じる要因のひとつかもしれません。

農業AIの本格導入はまだこれから。今後の動向に期待がかかる。

現在、農業分野ではIoTにより、データの蓄積が進んでいます。まだ本格運用に至っていないサービスも多くありましたが、今後農業分野へのAI導入が確実に進んでいきそうだと感じました。人手不足の農業分野にAIが入れば、大きなビジネス効果が生まれます。

農業AIの導入には、第一次産業ならではの課題も多くありそうです。しかし農業をはじめ、一見、新しい技術が浸透しにくく見える産業こそ、産業全体をAIでアップデートする価値は大きくなります。就農人口の減少や高齢化など、日本の農業が抱える課題をAIが解決する未来が近づいています。