月約700時間の業務削減に成功した事例も!ヤマトHDやキユーピーにAI活用の裏話を聞いた

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画像はUnsplashより

製造や建設、金融、不動産、エンタメなど、さまざまな業界・業種でAIが活用され始めている。これまでAI(人工知能)関連メディアのLedge.aiでは、企業の担当者にAIを導入した理由や効果などについて話を聞いてきた。

本稿ではLedge.aiで取り上げた、これだけは知っておくべきAI活用の裏話記事をまとめた。「AIを自分のビジネスに活用したい」という方はもちろん、「AIビジネスそのものに関心がある」といった方も要チェックだ。

コメ兵、ニセ物を見破れるAI鑑定「新人より間違いなく速い」

株式会社コメ兵ホールディングスは2020年8月25日から、KOMEHYO名古屋本店に、本物かニセ物を見極める「真贋(しんがん)判定」に加え、「型番判定(モデル名・型式などの判定)」も可能なAIを導入した。

2020年9月28日現在、同AIに対応しているブランドはルイ・ヴィトンのみ。最初にルイ・ヴィトンを選んだのは、同社で取り扱うメインのブランドであることや、定番で良いモデルが何年も続けて製造されることなどが理由という。

ただし、ほかのブランドも機械学習を正常に機能させるためにAIに与える「教師データ」を集めており、すでにAIの開発も開始しているとのこと。

コメ兵ホールディングスの担当者は「新人は鑑定に時間がかかります。新人がひとつの中古品を真贋判定するのに4分〜5分ぐらいかかりますが、AIを活用すると、平均して1分〜1分半ぐらいまで縮まります。真贋を判断する時間は新人より間違いなく速くなると思います」と話す。

社内で同AIの開発・導入に納得してもらった経緯については「いきなり社内で大きなポジションを取ろうとしても、なかなか通りません。われわれは(後で改良を見込んで、仕事をする大筋として作る最初の模型である)プロトタイプから始めました。『動くものがあること』が重要だからです」と説明している。

キユーピー、AI活用に成功した4つのワケ。食品の原料検査の事例から考える

キユーピー株式会社では、AIにおけるディープラーニング(深層学習)や画像処理技術を活用することで、原材料の不良品を検知できる原料検査装置を導入している。現場に同AIを導入したところ、作業工数が3分の1になったという。具体的には、3人必要だったところが1人で済むようになったとのこと。

現在、本装置にはジャガイモや人参など10種類以上の原料が対応しており、原料はベビーフードやカット野菜などに活用されている。

キユーピーの担当者は同AIを導入した背景について、「AIで何かやるにも明確な課題が必要です。AIは1つの道具であり、目的ではないからです」と主張する。

うまくいく事例とうまくいない事例の違いに関しては「(うまくいかない事例には)1番何が抜けているか言うと、『現場』が抜けています。エンジニアや技術者だけでやっていて、『こんな良いものできたんだから、使えるはずだ』と現場に持っても、現場には『こんなものは使えません』と断られてしまいます」と語った。

ヤマトHD、AIなどテクノロジー活用で収益増加

ヤマトホールディングス株式会社では、2020年の第1四半期(4月〜6月)の営業利益は99億5300万円となり、少しずつではあるが、AIなどのテクノロジー活用の効果が出てきていると明らかになった。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、2月以降はヤマトが取り扱う荷物の数が増加傾向にあるため、第1四半期の営業利益はその影響によるものとする見方が一般的かもしれない。しかし、実はAIなどのテクノロジー活用を進めた影響も少なからずあるようだ。

たとえば、そのような効率化をもたらしたAI活用事例の1つとして、同社が2019年末から導入している、機械学習による荷物の量の予測が挙げられる。本システムは過去数年分のデータを教師データとして活用し、宅急便センターごとの荷物の量を予測するというものだ。ヤマト運輸はこの予測に基づき、宅急便センターの人員や車両の配置を進めているという。

担当者は同AIを導入した効果について、「今までは予想外の荷量があったり、逆にリソースに余剰があったりしましたが、荷量の予測精度が上がったことで、適正配置が可能になりました」と話した。

AIで売り上げが最大39.5%も増加! JRのエキナカにある自販機の秘密

東日本旅客鉄道(JR東日本)の連結子会社で、JR東日本リテールネットの完全子会社である株式会社JR東日本ウォータービジネスは2020年12月から、自販機の売り上げ増加と飲料補充業務効率化を目的に、オーストラリア拠点のHIVERY(ハイバリー)社が提供するシステム「HIVERY Enhance」を本格導入した。

JR東日本ウォータービジネスは同AIを活用した実証実験を2017年から開始し、2019年冬季(2019年12月〜2020年2月)での検証では、全体で5.27%の売り上げが増加したという。

本格導入した2020年12月以降では、もっとも売り上げ増率が高かった自販機は東京駅 7-8ホーム上に設置した自販機で、AIを導入する以前と比較し、売り上げは39.5%も増加したとのこと。

担当者は同AIを導入した背景について「売り上げが高い分、『売切(売り切れ)』が付いたり、売れないものを入れていたりすると、ものすごくチャンスロスが大きいです。たとえば、新商品を入れ遅れたり、冬に寒くなってきているのに、ホット商品を入れていなかったりしても、損失額が大きくなります」と説明する。

ファンケルが月間約700時間の業務削減に成功! 大企業にAI導入の成功例を聞いた

株式会社ファンケルは2019年に、従来使用していたOCRをAIを活用したCogent Labsが提供するAI-OCRサービス「Tegaki」に切り替えることで、ハガキ・FAX受注業務の約50%を効率化、月間約700時間の業務削減を実現したという。

担当者は同AIを導入した背景について「受注登録業務の内製化です。弊社では、もともとはがきとFAXは月数万件の受注登録業務が発生するため、外部の委託会社様に依頼をしてきました。内製化することで、コストの削減に加え、よりハンドリングの部分もスムーズにいくといった背景がありました」と語る。

効果に関しては「最近では、2021年1月に定期商品の読み取りにAI-OCRを対応させました。まだ読み取り対応させていなかった2019年11月と比較すると、全体では50%ぐらい効率化できました。時間で言うと、トータルで月間約700時間削減できたのではないかと捉えています」と述べている。

江崎グリコ、収益改善に向けたAI需要予測は始まったばかり

江崎グリコ株式会社はAIを活用し、気象データや売り上げデータなどをもとに、新製品の売れ行きを予測する仕組みの構築を目指している。

同社の広報担当者に本取り組みを始めた経緯を聞くと、「弊社はお菓子とかアイスとか乳製品などを扱う食品メーカーなので、需要予測は肝になります。とくに、弊社に限らず有名な話ですが、アイスは天候や人の動きに左右されることが多い商品です。需要予測はメーカーにとって肝中の肝になります。そういった精度を上げるということで、この取り組みを始めました」と話している。

現在は、商品の開発から流通までに関わるマーケティングの部署などと連携しながら、この需要予測に関する取り組みを進めているという。いまだに成果が出ていない部分もあるものの、現在でもすでに成果が出ている部分もあるようだ。

そのほか、AI活用事例はこちらから

※本記事の情報はそれぞれ記事の掲載時のものです。