AI開発プロジェクトの全て|AIでできること・開発フロー・成功事例・失敗事例まで徹底解説

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あらゆる産業でAI(人工知能)の応用が進んでいます。AIを開発して自社のビジネスを伸ばせないのか、と考えこの記事にたどり着かれた方も多いのではないかと思います。本稿では、AIで何ができるのか、そもそもAIを開発するかしないかをどう決めるべきか、どのような手順で開発すべきなのか、AI開発の成功事例・失敗事例まで徹底的に解説し、皆様の悩みにお答えします。

AIとは何か

AIとは何か。この問いに対する答えは、「AI」研究者の間ですら一致しません。1956年夏に米国・ダートマス大学で開催された「ダートマス会議」で「Artificial Intelligence」という概念が登場して以来、幾度かのAIブームを経て、AIの定義は変遷してきました。


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現在では慣習として、AIは「学習・推論・判断といった人間の知能のもつ機能を備えたコンピューターシステム(広辞苑第三版より)」といった形で定義されることが多いです。AIのビジネスへの応用を考える方がイメージとして持っているのも、この定義なのではないかと思います。

AIにはどんな種類があるのか?

AI研究には半世紀以上の歴史があります。その技術の歴史は、ルールベース⇒機械学習深層学習(ディープラーニング)という進化を経てきました。2012年のディープラーニングの登場以来沸き起こった昨今のAIブームは、「第三次AIブーム」と位置づけられ、その中心を成すのは機械学習と深層学習、そしてベイズ統計学です。これら3つの領域が組み合わさり、世間を賑わすさまざまな種類のAIが生まれています。


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AIと「ビッグデータ」

さまざまな種類が考案されている近年のAIですが、その究極的な構造は以下のように表せます。


出典:経済産業省資料「シン・ニホン」

すなわちその構造とは、

1. 外部情報を収集(=入力を受ける)、
2. その情報を目的に合わせた形で処理
3. 処理した結果を出力

というものです。

以上の構造から分かる通り、AIにどのような「データ」を与えることができるか、という点がAI開発においては非常に重要となってきます。数学者クリーヴ・ハンビーの「データは21世紀の石油である(The data is new oil)」という名言を聞いたことがある読者の方もいるかもしれません。「石油」である「ビッグデータ」を活用し、ビジネスのエネルギーとするには、まさに「エンジン」に例えてもいい「AI」が必要なのです。この「AI×データ」の組み合わせこそが、AI開発において根底を成す考え方とも言えます。

AI×ビジネスで何ができるのか

AIを応用できる分野は、主に予測・分類・実行の3つです。その応用領域は、需要予測やマーケティングから、医療画像認識音声認識ゲーム攻略まで多岐にわたります。


出典:身につけておきたいAIの基礎知識とビジネス活用のポイント(三菱電機)

AI開発の全体像

具体的にAI開発がどのように進むのかを解説していきます。
AI開発の全体の流れは、

(1) 構想フェーズ
(2) PoCフェーズ
(3) 実装フェーズ
(4) 運用フェーズ

の順に進みます。


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それぞれのフェーズ別に、どのような手順が必要なのかを見ていきましょう。

(1) 構想フェーズ~どんなAIを開発するのか~

AI開発を通じて解決する課題を決めた上で、実行計画・体制を整え、AI開発への投資判断の承認を得るまでが構想フェーズです。そもそもAIを導入する必要があるのか、といった議論も含め、AI開発プロジェクトの起点となる非常に重要なフェーズです。

取り組む課題をどう決めるべきか?

AI開発プロジェクトを構想する際、とりあえず「AIを使って何かをしたい」ではなく、あくまで自社の課題を解決する一手段としてAIを位置づけることが重要です。本節では、会社内・組織内に存在する多くの課題の中から、AIを用いて解決する課題をどう選び取るかの流れを解説します。

全体の流れは以下の通りです。<i>から<iii>の順に取り組む課題を絞り込みます。


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<i> どのギャップ(=課題)を優先的に解決すべきか?
どんな組織であっても、改善したい点や不満は多く存在するでしょう。そういった数多くの理想と現実のギャップは、全てが解決できる、また解決すべきものだとは限りません。まずは、どの課題を優先的に解決するべきかを考える必要があります。

その判断基準として、主に次の3つが考えられます。

<優先順位を決める判断基準>
a. 解決することで効果がでるのか?
b. 効果が測定でき、客観的に理解できるか?
c. そもそも解決できるのか?

ここではこの3つの判断基準を、コンビニにおける「売上が不調」という「問題」の例を用いて解説します。


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a. 解決することで効果がでるのか?

    • 形態を問わず、売上が不調という「問題」を抱える小売店の売上を上げるアプローチとしては、価格変更や品揃え変更、従業員の接客態度改善、宣伝強化などが考えられます。

ここで重要なのは、「問題」を起点として、ある特定の店舗の売上が低い「原因」を正確に特定することです。品揃えが顧客層のニーズとマッチしていないことが売上を下げている原因である時に、宣伝をいくら強化しても売上の改善は見込めません。原因の特定が不十分だと、どんなに優れたAIを開発しても課題の解決にはつながりづらいです。

 

b. 効果を測定でき、客観的に理解できるか?

    • AIを用いる用いないに問わず、

ある施策を実行した先、その施策の目標を数値で設定し、結果を定量化して評価し、施策を改善するPDCAサイクルを回せることは非常に重要です。

    コンビニの例でいえば、価格変更に関してはそのまま定量的に効果を測定できますが、従業員の態度改善など数値で判断しづらい要素は、結果をどう定量化するかにひと工夫必要です。


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c. そもそも解決できるのか?

    • 売上を下げている原因が、

プロジェクトの権限や影響力の範囲内で解決できる問題なのか

    という点も大きな判断基準です。例としては、マクロレベルの景気変動や、昨今様々な経済活動の阻害要因となっている新型コロナウイルスなどの外部要因、または行政による規制などは、そもそも一組織で解決できる問題ではないと言えるでしょう。

 

<ii> そのうち機械学習で解決できる課題はどれか?
<i>のフェーズでリストアップされた解くべき課題を、さらに機械学習で解決可能なものに絞っていきます。AIができることは、第二節で「識別・予測・実行」の主に3領域があることを紹介しました。

課題解決の手法を考える際、機械学習以外のツールで解決できないか、という視点を持つことも重要です。業務自動化ツールであるRPA(Robotics Process Automation)やVBA(Visual Basic for Applications)の方が安価に解決できる、もしくは解決に適している場合も考えられます。

 

<iii> ROIが成立するか?
組織として解決したい課題の抽出、さらにその中からAIで応用できる課題を絞り込んだ上で、ROI(Return on Investment、投資に対するリターン)を検討します

どの程度のROI、そして投資回収までの期間の長さを許容するかは、解く課題や事業領域、または事業担当者の裁量によって変動します。また、期待成果や投資・費用については、この次のフェーズである「PoCフェーズ」等で得られたテスト結果を元に、順次修正していくこともあります。

誰がAIを開発するのか

AI開発に必要な人材

AI開発のプロジェクトチームでは、「ビジネス×データサイエンス×エンジニアリング」の3領域の知識とスキルを持ったメンバーが協力できる体制が整っていることが非常に重要です。


出典:一般社団法人データサイエンティスト協会

上図は日本データサイエンティスト協会が定めた、データサイエンティストの定義図です。この3領域はそのままAI開発に必要とされるスキルとも言えます。下図は、Yahoo!JapanのCSOである安宅建人氏が経済産業省向けに作成した資料「シン・ニホン」からの抜粋です。この資料では、AI開発において必要な人材がより細分化され触りやすくまとめられています。


出典:経済産業省資料「シン・ニホン」

外部パートナーとの連携という選択肢
AI開発の上で、外部パートナーと連携するという選択肢も存在します。データ分析を専門とするコンサルティング会社から、SIerがひとつのサービスとしてデータ分析を支援している場合もあります。あまた存在するパートナー候補から、どの企業を開発パートナーとするかの基準の例として、以下が考えられます。

・AI開発プロジェクト支援の実績
・パートナー企業側の担当者(経験・マインドセットの両面で)
・ビジネス・データサイエンス・エンジニアリング各領域のカバー度
・前例の少ない機械学習プロジェクトに、挑戦しやり抜く気概

パートナー候補企業が多くの成功実績を持っているからといって、その企業の担当者が実績豊富とは限りません。また、前例の少ないテーマに取り組むことの多いAI開発においては、難題に取り組むことを恐れないマインドセットを持っているかどうかも、非常に重要な視点となるでしょう。

 

(2) PoCフェーズ:構想したAIは実現できるのか

アプローチする課題の特定と実行計画・体制の構築が完了し、プロジェクト始動の承認を獲得するまでが構想フェーズです。次のPoC(Proof of concept)フェーズでは、AIのモックアップ(仮モデル)を構築し、構想テーマが技術的に実現可能かどうかを検証します。また、AIのモデル・システムに加えて、AIの機械学習に用いるデータの質も評価します。

PoCフェーズで検証すべき点は、主に以下の3点です。

<i> データと機械学習モデル
・機械学習に必要なデータの質と量は満たされているか?
・構想フェーズで設定したレベルの精度や性能は出るのか?
<ii> オペレーション
・モデルの出力に誤りがあった場合に対応できるのか?
・モデルの学習・推論スピードは業務上問題ないのか?
<iii> ROIとスケジュール
・構想フェーズで設定したスケジュール・ROIは現実的なものだったか?

PoCフェーズ内のステップとアジャイルな進行

PoCフェーズ内では、主に3つのプロセスが存在します。

<i> データアセスメント
<ii> モックアップモデル構築
<iii> 検証項目評価

各フェーズはステップが順番に進むウォーターフォール式に進むというよりは、それぞれのフェーズを往復しながら全体の完成度を高めていく「アジャイル」式に進めていきます

 

(3) 実装フェーズ:開発したAIを実装できるか

PoCフェーズで検証・構築したモックアップモデルを最終化し、本番環境で求められる精度・実行速度に対応したAI「システム」を完成させ、実務で稼働させるフェーズが実装フェーズです。

<実装フェーズ内の流れ>
要件定義&機械学習モデル最終化⇒設計⇒開発⇒テスト

上記の通り、大まかな流れは通常のシステム開発と同様です。

AIシステムに限らず、システム開発の失敗理由として最も多いともいわれるのが「要件定義の甘さ」とも言われています。また、設計・開発段階においては、大量のデータを取り込みながらも、ある程度の処理スピードの維持できるシステムの設計・開発が難所です。

 

(4) 運用フェーズ:いかに開発したAIを有効に活用できるか

実装フェーズまでを経て本稼働したAIシステムを、実際に実務で使用していくのが「運用フェーズ」です。運用フェーズのポイントは主に、

<i> システムを安定して稼働させるための保守・点検
<ii> 構想フェーズでの目標設定を踏まえたKPIモニタリング
<iii> AIの機械学習モデルのチューニング

の3つが挙げられます。<i>は通常のシステムでも同様に必要ですが、<ii>と<iii>はAIシステムならではのものです。以下では<ii>と<iii>を解説します。

KPIモニタリングと機械学習モデルのチューニング

実際にAIシステムを実務で使用する運用フェーズにおいて、構想フェーズで設定した達成目標をどれほど達成出来ているかを確認する為に行うのが、KPIモニタリングです。
KPIは、目標値と実際の値に乖離があった際に、原因がどこにあり、改善策を検討できるような形で設定します。
KPI設定のやり方としては、

a. ビジネス成果のKPI
b. 機械学習モデルの精度のKPI
c. システム運用のKPI

の3つの側面に着目するのがよいでしょう。


Ledge.ai編集部作成

ビジネスにおけるAI開発は、まだまだ前例も少ない上に、機械学習モデルとシステムを組んで実際に動かしてみないと分からない部分も多いのが実情です。だからこそ、AIシステムの稼働後に、KPI達成度の分析を通じて、適宜機械学習モデルをチューニングしていくことが重要です。

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一方でAIのビジネス活用の歴史はまだまだ浅いのも事実です。やり方やその重要性は分かっていても、実際に自社での開発にまではなかなか踏み切れない企業が多いのは自然な現象だと言えます。

Ledge.aiを運営する株式会社レッジは、日本最大のAI活用事例プラットフォーム「e.g」の運用に加え、AI開発のコンサルティングも行っています。少しでもAI開発に興味のある方、もしくはAI開発における課題を感じている方は、是非お気軽に下記のリンクからお問い合わせください。