AIに関わる膨大な調査データを網羅した「AI Index」2019年版が公開

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スタンフォード大の研究者らが、AI関連の研究開発や経済、教育、各国の動向など多様なデータをまとめた「AI Index」の2019年版を発表している。

The AI Index 2019 annual report(外部サイト)





AI Indexとは?

AI Indexは毎年発行されている、以下9つのチャプターからなるレポートだ。

研究開発

ジャーナル、会議、特許の出版物の量や世界地域による引用の影響など、計量書誌学のデータ。主要なAIソフトウェアライブラリに付けられたGithubのスター数や、arXiv上のAI研究者の性別の多様性についても紹介している。

カンファレンス

AI関連のカンファレンスに関するさまざまなソースからデータの概要を示す。具体的には、イベントへの参加、会議のトピックの概要、および達成されたポリシーマイルストーンについて説明されている。

技術的パフォーマンス

計算能力の向上による、コンピュータービジョン(画像、ビデオ、画像+言語)、自然言語、潜在的な制限(Omniglot Challengeなど)、などのタスクの技術的な進歩を追う。

経済

仕事、投資、企業活動の3つのトピックを扱う。AI関連の仕事、求人、およびスキルのレベルに関連するグローバルおよびアメリカのデータや、世界、国、セクターごとのスタートアップ投資動向を分析する。最後のセクションには、業界でのAI機能の採用に関するデータや、各国のロボット導入状況の世界的な傾向なども含まれる。

教育

教育とAIの動向を調査する。具体的にはAI・機械学習関連の教育でのグローバルデータの分析と、AIのPhDを持つ人材の性別、多様性の傾向なども含んでいる。また、倫理をコンピューターサイエンスのカリキュラムに組み込む取り組みや、入門的なAI・機械学習コースにおける学部入学者の世界的な傾向なども調査している。

自律システム

自律型車両(AV)および自律型兵器(AW)のデータを分析している。AVをテストしている国と都市や、自律兵器の展開も紹介。

社会的認識

中央銀行、政府、企業などの機関のAIに対する認識についてカバー。中央銀行がAIについてどのような情報発信を行っているのか、アメリカ、カナダ、英国議会でのAIへの言及回数の調査、アメリカの業績発表で言及されたAI関連の用語、AI関連のフレーズのアメリカの検索データなどを調査している。

社会課題

AIと倫理に関するグローバルニュースや、サステナブルな開発のためのAIアプリケーションを検証。AIの倫理ガイドラインに着目し、倫理的な課題におけるデータを提示、AIの倫理的な使用に関するニュース報道も調査している。AIのユースケースをSDGsにもマップしている。

国家戦略とAIの活気

各国が発行したAIに関する戦略文書を調査している。

レポート内で注目のデータ

この記事でレポートを詳細に読み解くことはしないが、リリース文で紹介されている、レポートのなかで注目すべきデータを紹介する。

  • 1998年から2018年の間に査読済みのAI論文の量は300%以上増加し、査読済みのすべてのジャーナル出版物の3%、および発表された会議論文の9%を占めている。
  • 中国は現在、2006年にアメリカで通過した同数のヨーロッパのAIジャーナルと会議論文を毎年発行している。アメリカのFWCI(Field Weighted Citation Impact…一文献あたりの被引用数を同出版年、同分野、同文献タイプの文献の世界平均で割ったもの)は中国の出版物よりも約50%高くなっている。
  • 国際会議への出席者は大幅に増え続けている。2019年には、NeurIPSの参加者は13,500人を数え、2018年に比べて41%、2012年に比べて800%以上増加。AAAIやCVPRなどの会議でも年間参加者は約30%増加している。
  • WiMLワークショップの参加者は2014年の8倍、AI4ALLの同窓生は2015年の20倍。これらの増加は、AI分野の女性や少数グループを包摂するための継続的な努力を反映している。
  • 1年半で、クラウドインフラで大規模な画像分類システムを学習させるのに必要な時間が、2017年10月の約3時間から2019年7月の約88秒に短縮された。また、そのようなシステムを学習させるコストも同様に下がった。
  • SuperGLUEおよびSQuAD2.0ベンチマークで捕捉されたように、いくつかの自然言語処理(NLP)分類タスクの進歩は非常に急速だった。AI2 Reasoning Challengeなどの推論を必要とする一部のNLPタスク、またはOmniglot Challengeなどの人間レベルの概念学習タスクでは、パフォーマンスは低いままだった。
  • アメリカでは、AI関連の仕事の割合は2012年の0.3%から2019年の総仕事の0.8%に増加した。AIの労働需要は特にハイテクサービスと製造部門で増加している。
  • AIスタートアップへの投資は世界的に着実な上昇を続けている。2010年に集められた合計13億ドルから、2018年には404億ドルを超えた(2019年11月4日現在は374億ドル)。
  • 自律走行車(AV)は昨年、世界全体の投資で77億ドル(全体の9.9%)で最大のシェアを獲得。続いて薬物、がん、セラピー(47億ドル、6.1%)、顔認識(47億ドル、6.0% )、ビデオコンテンツ(36億ドル、4.5%)、および不正検出と金融(31億ドル、3.9%)。
  • 少なくとも1つの機能、または事業単位でAIを活用していると回答した大企業は、2018年の47%から2019年には58%に増加した。
  • AIは、大学院レベルでは急速に北米のコンピューターサイエンス博士課程の学生の間でもっとも人気のある専門分野となり、2番目に人気のある専門分野(セキュリティ / 情報保証)の2倍以上の学生がいる。2018年に卒業したコンピューターサイエンスの博士号を持つ人材の21%以上がAI・機械学習に特化している。
  • ジェンダーラインに沿ったAI関連の教育者の多様化は大きな進展を見せておらず、2018年の新規採用者において、女性の割合は20%未満だった。同様に、アメリカでは2010年以降、女性のAI関連の博士過程取得者の割合はほぼ一定だ。
  • 世界中の議会の記録、委員会の報告書、および立法記録において、AI関連の法律が大幅に増加している。
  • 公平性、解釈可能性、説明可能性は、59のAIと倫理の原則に関する文書の中で、もっとも頻繁に言及されている倫理的課題だ。

より簡単にレポートを読み解くためのツールも公開

2019年版の本レポートの情報量は、2018年版の3倍にものぼるという。すべてのデータに目を通すのは至難の業のため、よりレポートを簡単に読み解ける各種ツールも公開された。

各国のAI動向を比較できる「Global AI Vibrancy Tool」

Global AI Vibrancy Tool(外部サイト)」は、3つのディメンション(研究開発、経済、包括)にグループ化された34のメトリクスで比較でき、28か国を対象としている。各国がどれだけAIの活動を行っているかを可視化できるほか、特定の国と各国平均の比較なども可能だ。

サイトより編集部キャプチャ

ArXiv上のAI論文検索エンジン「ArXiv Monitor」

ArXiv Monitor(外部サイト)」は、arXivで公開されている論文の検索エンジンだ。著者やArXivのカテゴリー、データセットなどの項目で論文を絞り込める。

サイトより編集部キャプチャ

ダッシュボード機能では、Metricsからプルダウンでデータセットを選択することで、そのデータセットが利用された論文の出版時期、ArXivのカテゴリー、論文を出している組織、著者などのデータを参照できる。

ImageNetを選択した例。サイトより編集部キャプチャ

Datasets機能では、プルダウンでデータセットを選択することで、データセットごとの総論文出版数、すべての論文における割合、データセット利用の初出時期などのデータを見ることができる。

MNISTを選択した例。サイトより編集部キャプチャ

世界のAI動向を理解する助けに

2018年の3倍と、とてつもない情報量だが、なんとなく眺めているだけでも示唆に富むデータが多い。

もともと政策立案者や研究者、ジャーナリストや経営幹部などに向け、AIに関わる包括的なデータを提供するために立ち上がったプロジェクトだ。メディアはもとより、研究者が論文にデータを引用する際や、企業内で参照するデータとしても有用だろう。レポートに使用されているすべての生データは、Googleドライブ(外部サイト)で公開されている。グラフィックスフォルダには、すべてのグラフ・チャートで高解像度の画像も用意されている。

AI関連の仕事に携わる人なら、一度は目を通してみるといいかもしれない。

Source:
Introducing the AI Index 2019 Report
The 2019 AI Index report