AIが人手不足に与えるインパクト ── AIさくらさん開発元に東京駅での実証実験の裏側を聞く

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JR東日本が、12月7日より「案内AIみんなで育てようプロジェクト」と題し、AIが駅構内・周辺を案内する実証実験を行っています。

案内業務を行うAIには、デジタルサイネージ、スマホアプリ、ロボットといったさまざまな形態があり、音声認識機能の搭載により利用者の問いかけに答えます。

実施箇所は、東京駅、浜松町駅、品川駅、新宿駅、池袋駅、上野駅の合計6駅24カ所。参加企業はメーカーなど18社、JR東日本グループ15社の合計33社で、各社のさまざまな案内AIが、駅構内に設置されています。

数ある案内AIの中でも、ひときわ目を引くのが「AIさくらさん」。株式会社ティファナ・ドットコムが開発するAI接客・窓口システムです。

東京駅での実証試験の様子がこちら。

東京駅以外にもイオンモールやセブンアンドアイHDが運営するプライムツリー赤池、渋谷109にあるSBYなど、多くの導入実績があります。具体的な活用事例はAIさくらさんのデモムービーでも紹介されています。

今回は、開発元であるweb制作会社ティファナ・ドットコム AI戦略室の横山 洋太氏に、東京駅で実施中の実証実験の背景や、そもそもAIさくらさんはどのようなサービスなのか? 話を聞きました。

東京駅での実証実験の背景は人手不足

――東京駅でAIさくらさんを拝見しました。そもそも、実証実験はどのような経緯で始まったのでしょうか。

――横山
「背景にあるのは受付や案内業務における人手不足です。外国人観光客の案内業務に駅員の工数がかなりの割合で割かれており、2020年のオリンピックに向けてこれから更に増えると予測されています」

そもそも鉄道は労働集約型産業。人がいないと成り立たないビジネスです。ただでさえ多い業務量に加えて、増え続ける観光客の対応に、多くの工数が割かれていました。

――横山
「そこで、デジタルサイネージやスマホアプリ、ロボットなどで案内ができないかということで、それらのサービスを提供する企業が集められました。来る2020年に向け、駅の標準サービスとして確立させておく必要があるため、この時期に実証実験が始まったというわけです」

冒頭では東京駅でのAIさくらさんの様子を紹介しましたが、評判は上々だといいます。

――横山
「実証実験に参加中の各社のサービスの中でも、AIさくらさんの一般の人からの受け入れやすさは一番だと自負しています。近年、流行中のゆるキャラではなく、あくまで人の代わりになるようなサービスを目指して開発しました。SNSでの反応も良いです」

問い合わせ対応の苦労を解消するAIさくらさん

――AIさくらさんにはどのような機能が含まれるのでしょうか?

――横山
「対応しているのは以下の業務です。

  • 社内ヘルプデスク対応
  • 会社の生き字引(ノウハウ蓄積)
  • 社外からの問い合わせ対応
  • web接客、集客
  • 受付対応(コンシェルジュ)
  • インバウンド接客(日・英・中・韓国語での接客)

これまでは人が対応していた、問い合わせ対応、接客、受付業務などをすべて肩代わりできるサービスになっています。最近ではインバウンド接客のニーズも多いので、外国語にも対応しています」

AIさくらさんの活用例 出典:ティファナ・ドット・コム

AIさくらさんのユースケースとして、社内の問い合わせ対応の例を見てみましょう。

社内の問い合わせは主に総務部門に寄せられます。しかし、ネットにつながらない、書類の場所、経費精算はどうすれば? などの大小さまざまな問い合わせにすべて対応していては、総務部門は疲弊してしまいます。

かといって、社内イントラのQAページに情報を載せても、そこに情報があることすら知らずに問い合わせが来る……。AIさくらさんはそんな苦労を解消します。

――横山
『自分じゃなくていいのでは?』と感じる業務をやってくれるだけでも、精神的に助かりますよね。実際、どうでもいいような問い合わせ対応を長く続けていると、『自分はなんのために働いているんだ?』と感じる人も多いです。AIさくらさんに業務を一部でも任せることで、働き方改革に貢献できればと思っています」

「親しみやすさ」が長期間使ってもらうカギ

――AIさくらさんの導入で、成果が出た事例を教えてください。

――横山
「採用ページでAIさくらさんを活用いただき、コンバージョン率が上がった事例があります。

調べたところ、ユーザーには問い合わせをする前に疑問を自分で調べたいというニーズがありました。QAページで疑問を解消できなくても、問い合わせ前にAIさくらさんに聞くことで、自力で疑問を解消できる助けになります

志望者からすると、残業はあるか? 有給消化率はどうか? などの質問は、担当者に直接聞問い合わせにくい質問です。企業もサイトには載せない場合が多い。そんな聞きづらい質問をAIさくらさんに聞けるだけでも、「面接してみようかな」という気になるんだとか。

AIさくらさんに限らず、チャットボットにとって、ユーザーが慣れて使いこなせるようになるかどうかは大きな課題です。AIさくらさんは親しみやすい人間のキャラクターなので、いつでも質問・相談できる相手として認識されやすいのかもしれません。

――横山氏
「キャラクターデザインの際、親しみやすさにはかなり気を配りました。

AIが受け入れられるには、ユーザーに長期的に使ってもらわないといけません。使い続けることでAIさくらさんは適切な答えを学習し、ユーザーも使い方に慣れていきます。

導入が短期間だと準備に時間がかかるだけで、効果を十分に得られないまま終わってしまう。長期を見据えた導入で、AIだけでなくユーザー側も学び、慣れる必要があります」

介護・メンタルヘルスに展開し「実社会で使えるAI」を目指す

――今後、AIさくらさんで目指したい展望を教えてください。

――横山氏
「AIさくらさんが心拍・体温を測り、緊急時には連絡するなど、介護業界での見守りサービスを考えています。

さらに、企業で働く人の生活をより良くするため、メンタルヘルスケア機能を持たせることもすでに取り組んでいます。業務の効率化だけでなく社会貢献も行う、実社会の中で使えるAIを目指します」

介護やメンタルヘルスなど、今まさに社会問題となっている領域にAIさくらさんが切り込む。AIさくらさんならユーザーに安心感を与えることができ、24時間対応も可能です。介護・医療現場の人手不足の解消や、働く人のメンタルヘルスの改善につながる可能性があります。

東京駅での実証実験は3月15日まで。興味のある方はぜひ実物のAIさくらさんに会いに行ってみてください。