メルカリ、DeNA、ABEJA──最先端の「AI活用企業」が求める人材像

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2019年7月18日 東京・六本木のメルカリ本社にて、自社サービスに積極的にAIを活用する“イケてる”テック企業の担当者たちが人材の獲得、育成について語るトークイベント「日本発のテックカンパニーが考える『AI人材』とは」が開催された。

パネルディスカッションでは、DeNA、ABEJA、メルカリのAI部門担当者が集結した。

日々の業務において「AI部門」はどのような位置づけにあるのか。人材確保のために各社がもっとも力を入れている部分は何か──。現場担当者ならではのリアルな声を聞いた。

メルカリ、DeNA、ABEJAの「AIエンジニアの組織体制」

今回の登壇者は株式会社メルカリ AI Engineering エンジニアリングディレクターの木村俊也氏、株式会社ディー・エヌ・エー AI本部 AIシステム部 部長の山田憲晋氏、株式会社ABEJA 取締役CPOの菊池佑太氏の3名だ。

まず各社組織におけるAIの具体的な活用領域、人材の配置スタンスが紹介された。

DeNA:全社横断の「AIシステム部」を設置

ソーシャルゲームからマンガアプリ、球団経営まで事業範囲が多岐にわたるDeNAでは、AIを事業の推進ツールとして活用している。

具体的にはソーシャルゲーム「逆転オセロニア」のプレイヤーサポートやゲームバランス調整、タクシー配車サービス「MOV」や交通事故削減サービス「DRIVE CHART」のビジネスロジック部分にAIが活用されている。

関連記事:DeNAが取り組むゲームAI ──「逆転オセロニア」のゲームバランス調整を裏側で支える技術

組織内でのAI人材配置について、同社の山田氏は次のように述べた。

――山田
「DeNAでは全社横断部署の『AIシステム部』を設置しており、アルゴリズム系とシステム系の2職種のエンジニアが業務を担当しています。

このほか『AI戦略推進室』というビジネス部隊がおり、AIを活用を前提とした新規事業を生み出しています。AIは『事業の推進ツール』という位置づけです」

ABEJA:AI人材は「部署化せず、全社的に配置」

AI活用に必要なサービスを一気通貫で提供するスタートアップとして頭角を現すABEJAでは、小売流通業向けの店舗解析サービス「ABEJA Insight for Retail」や、AI開発・運用に必要不可欠なプロセスを省力化するAIプラットフォーム「ABEJA Platform」など、事業者の課題解決を主軸とした製品群を開発・販売している。

菊池氏は同社の行動精神を「テクノプレナーシップ」と表現する。

――菊池
「顧客企業のさまざまな業務課題をAI技術で解決することが弊社のミッションです。

  • テクノロジー
  • リベラルアーツ
  • アントレプレナーシップ

3つの要素を人材として定義し、テクノロジーをシナジーとして使いながら顧客の課題に寄り添うことを主眼としています。AI人材は専門部署に分けず、AIの知見を持った人材を全社的に配置する体制をとっています」

メルカリ:要件定義と実装の2チーム体制

メルカリでは、自社の代表サービスであるフリマアプリにおいて、2017年から積極的になAI活用に取り組んできた。最近は社内業務の疑問にコンシェルジュ的に答えるAI社員「HISASHIくん」も運用されているという。

フリマアプリ「メルカリ」では出品時にアップロードされた商品写真を解析し、商品情報の自動入力補助や取引価格推定の機能を提供しているほか、規約違反商品の自動検出など、取引の安全化にもAIを積極的に活用している。

自社のAI人材配置について、同社の木村氏は次のように述べた。

――木村
「現在、AIチームは40名おり、2019年度中に60名程度まで増員する予定です。モデル作成や要件定義を担当する『MLエンジニア』と、モデルをサービスに実装する『SysML/ML-Ops』の2チームに分かれています。

メルカリの強みは、なんといっても自社が抱えるデータセットの多さです。メルカリを通じて数十億の商品が出品されており、出品画像や取引データをはじめ、膨大な学習を可能にしています」

“研究開発のみ”はアウト。AIをビジネスに繋げられる人材求む

事業におけるAIの位置づけや人材配置について、各社間のスタンスの違いは明確になった。続いて話題は、各社が求めるAI人材像に移った。

DeNA:あくまでサービスに貢献できる人

――山田
『研究だけやりたい』という人材は取らないスタンスです。あくまで『AIをいかにサービスへ応用するか』を第一に考えています。

ただ、まったく研究を行わないというわけではなく、専門性を大事にしてチームを組んでいます。全メンバーに対し、好きな国際学会へ業務として参加できる制度を設けたり、業務時間を使用して『Kaggle』(機械学習やデータ分析の技術を競い合う世界的なエンジニアコミュニティ)への参加も認めているほか、社内外の勉強会も積極的に行っています」

ABEJA:領域にこだわらず、顧客の課題を解決できる人

――菊池
「我々が求めているのは、お客さんの要望を自分で理解し、テクノロジーを駆使してソリューションを届けられる人材です。

あくまで技術は手段でしかなく、お客様に価値を届けて解決することで効果が生まれるという考えが前提です。リサーチャーがテクノロジー研究のみに没頭するあまり、お客様への価値提供から離れてしまうことは避けたいと考えています。

ABEJAでは『テクノプレナーシップ』の考えに基づき、広い視野でAIの人材を定義しています。タテの区切りではなく、いかに専門以外の領域にも携わって顧客の課題に価値を提供できるかを重視しています。

現状は社員数も少ないので、特定の部署を設けてしまうと有機的な動きがしづらくなってしまう。そのため、ある程度個人の裁量で横断的に対応できるようにしています」

メルカリ:業務をジャッジできる「プロダクトマネージャー」

――木村
「エンジニアやリサーチャーは比較的スムーズに採用できていますが、ビジネスとしてAIを使ってどうユーザーのニーズを満たすかを描けるPM(プロダクトマネージャー)が必要だとと感じています。

すべての課題にAIが有効というわけではなく、むしろAIを使用しないほうが有効なケースも存在します。『そもそもAIを使うべきか否か』からジャッジできる人材を欲しています。

メルカリでは日本人・外国人の垣根を設けず採用しています。また、新卒採用については初期段階でオンボーディング(新人教育)に力を入れ、技術者として世界レベルで通用する人材の育成に取り組んでいます」

各社ともに「研究開発のみに取り組む」という人材像へは否定的な見方を示し、ビジネス的な観点を持つ人材を欲している点が印象に残った。3社ともに「技術とビジネスは両輪」というスタンスのようだ。

AI活用企業として各社が目指す方向性

パネルディスカッションの締めくくり、各社が「AI活用企業として」の展望を語った。

DeNA:「研究所」にはせず、ビジネスとの両輪を築く

――山田
「DeNAでは『刺激を受けて成長できる環境づくり』を強く意識しています。先端の技術に触れる機会を設け、つねにディスカッションが生まれることが重要。『うちにいるといろんな刺激が得られる、優秀な人がいる』と思える環境づくりを心がけています。

しかしAIエンジニアを囲って『研究所』状態となり、他部署との間に壁ができることは避けたい。あくまで事業部と一体になりつつ、ビジネス的な要求にも呑まれすぎないよう、制度を設けて守っていきます。

理想は、組織として見出したビジネスにAIエンジニアが『専門家として関わる』というスタンス。自分たちの強みを研鑽し、ビジネスの専門家と両輪でサービスを生み出していきたいです」

ABEJA:大手パートナーとの連携を強みに

――菊池
「現在ABEJAではグローバル人材の採用を強化しているほか、社外向けブログを通じたテクニカル情報の提供やワークショップを実施しています。

私たちはGoogleから日本で初めて出資された企業であり、NVIDIAからアジアで初めて投資を受けた企業という自負があります。大きなプレーヤーと共同で動ける環境を強みにして、連携を見据えた企業体系でありたいと考えています」

メルカリ:AIの力で売買を簡単に

――木村
「技術トレンドは変動が激しく、ほんの1年で主流の技術が入れ替わります。常に最新トレンドをキャッチアップし、組織に還元していきたい。企業間の『ヨコ連携』にも取り組んでいきたいです。

メルカリが目指す、『お客様に簡単な売買プラットフォームを提供する』というミッションを通じ、日本でモデルケースになるようなAI活用の会社になれればと思います」

「技術はあくまでビジネスの実現手段」というスタンスゆえか、技術情報の交換についてはフラットな姿勢を見せた3社。

AIエンジニアとしてのキャリアプランを考えるうえで、今回のパネルディスカッションは大きな示唆となりそうだ。