【Microsoft×電通】使えるAIを作るためには「仮説」と「現場の声」が不可欠

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2018年12月13日、レッジはDMM.comとAI TALK NIGHT 2018を共催しました。本稿では、1つ目のトークセッション「これってAIでできますか?」の内容をお届けします。

  • AIで業務はどう改善できる?
  • AIはキャッチコピーを作れる?
  • AIを使った予測はどこまでできる?

などの疑問に、AIのスペシャリストが回答していきました。





AI TALK NIGHT
「これってAIでできますか?」をテーマに、AIを導入しようとしている企業が持つ、

  • 「やることは決まっている」けれど「できるかわからない」
  • 「できるらしい」けれど「どこに気を付けるべきかわからない」
  • 「できるらしい」けれど「なにが最適であるのかわからない」

などの悩みを、AIのスペシャリストに直接ぶつけられるトークイベントです。AI TALK NIGHTは、株式会社レッジのイベントスペースにて、定期開催しています。

畠山 大有
日本マイクロソフト株式会社 プリンシパルソフトウェアデベロップメントエンジニア


児玉拓也
株式会社電通 AI MIRAI 統括


中村 健太
株式会社レッジ CMO


橋本 和樹(モデレーター)
株式会社レッジ 代表取締役社長

ビジネスにAIを持ち込むための極意

――橋本
「最近、来店するお客様の満足度測定を画像解析でできますか? というお話をいただくことが多いのですが、可能でしょうか?」
――中村
顔画像の解析だけで満足度を測定することは現実的ではないです。空気感や背景情報などを組み合わせ、『何をもって満足度とするのか』の仮説を立てることが重要です」
――児玉
マーケティングの観点からすると、満足度とは、

  • 客単価なのか
  • 来店頻度なのか
  • お客様の気持ちなのか

などを具体的に特定することで、初めて測定できます。

電通では、店頭で撮影された映像から、棚の前にお客さんがどのくらい立っていたか、商品をどれくらい眺めていたかを解析することで、お客様の満足度や体験の可視化に取り組んでいます」

満足度を知るために「どのデータを集める必要があるか」という仮説、設計が最初のステップとして必要です。

――橋本
「AIを活用した営業業績向上の事例は何かありますか?」

――畠山
「業績向上では、老舗料理屋『ゑびや』の成功事例があります。ゑびやでは、お客様に炊きたてのご飯を提供するために、自動で来客者数を予測するAIを導入しました。炊きたてのご飯を提供することで、お客様の満足度が向上するという仮説を立て、それを達成するツールとしてAIを活用しています。

具体的には、伊勢神宮の参道に設置されたカメラで通行人数を測定し、店舗の来客者数の予測を行いました。」

ゑびやの事例では「炊きたてのご飯をお客様に提供することが、業績向上に繋がる」という仮説が立てられ、それを実現するために「来客者数を予測するAI」を導入しています。

トークセッションでは、「仮説は不可欠」と何度も言われていました。具体的に業績向上のために必要となるデータがはっきりしているからこそ、どの部分に、どのようにAIを適用するかが明確になります。

AIにキャッチコピーは作れるか

続いて、文章や画像を自動で作成する「生成系AI」の話題に移りました。「キャッチコピー」というワードから、広告業会最大手、電通の児玉さんのお話が気になるところです。

――橋本
「最近は、GANのような生成系のAIが話題になっていますが、記事コンテンツの生成や広告キャッチコピーの生成AIは開発していますか?」

――児玉
「電通は、AIによるキャッチコピーの生成に、2年以上前から取り組んでいます。電通社内には、『AICO』と呼ばれるAIコピーライターが存在します。その実力は『5秒で100案』と言われています。キャッチコピーの制作現場では、コピーライターがキャッチコピーを大量に書き散らし、ベテランのコピーライターがその中から良いものを厳選する方法が取られます。現在、『書き散らす』という箇所をAICOに任せています」

AICOは、キーワードを入力した後に、「ポジティブ」「短く」などの切り口を選択すると、その条件に沿ったキャッチコピーをいくつも画面に生成してくれるツールです。

――中村
「過去に、中部経済新聞70周年記念に合わせて、新聞記事を自動生成するAIを開発しました。AIに記事を書かせる際に、過去の新聞記事を大量に学習させることで、中部経済新聞独自の書き口を模倣させました。」

予測系AIの設計には現場の声が不可欠

――橋本
予測系のAIについて、過去の事例があれば教えてください」

――畠山
「我々は、Xboxの課金サービス利用者の解約を事前に予測するAIを開発しました。ゲームのオンラインサービスはデータが取りやすく、解約のタイミングでアクションがあります。それを学習することで、解約可能性の高いユーザーを前もって予測可能となりました。ユーザーの解約前に割引やポイント還元の提案を行うことで、解約者数の減少に繋げました」
――児玉
「電通では、テレビの視聴率予測のAIを開発しました。現在は、ベテラン社員の予測精度を上回る精度を、AIが叩き出しています」
――橋本
AIによる予測の難しい点はなんでしょうか?また、設計におけるポイントは何かありますか?」

――児玉
「視聴率の予測は、ただデータを入れるだけでは精度は出ません。ベテランのテレビ担当者にヒアリングし

  • このタレントが数字持っている
  • この番組は曜日と関係なく跳ねる

といった情報を活用し、現場の声を元に特徴設計することで良い精度が出ます。」

また、児玉さんは「過去のデータから未来を予測することはAIの得意分野」と述べていました。その言葉通り「予測系AI」はすでにビジネスで活用され、場合によってはベテラン社員の実力を上回るほどの能力を発揮しています。

ポイントは、現場の声を元にした特徴設計です。ただ、存在するデータをそのままAIに学習させるだけではなく、ベテラン社員の意見を元に、AIに何を学習させるのかを決めることがAIの設計において重要です。

人がAIを設計し、誰もがAIを使う時代に

トークセッションでは、業績向上、文章生成、予測の3つについて数々の事例を含めて語られました。その根本には、AIが、

  • 取りづらいデータを取得できる
  • 多種多様なデータを元にした予測ができる
  • 既存のデータを活用し新たなものを生み出すことができる

という背景が存在します。

一方で、AIは魔法のツールではありません。

  • AIでどのようなデータを収集すべきか
  • AIで何に対しての予測結果が必要か
  • AIの学習の際に何を特徴とすべきか

など、ビジネス活用する過程においては、人間が具体的に設計、判断することが必須。今後、AIが普及していく一方で、AIが仕事を奪うではなく、現場で働く人々がAIを目的達成のツールとして使う、という未来がより現実的だと思います。