レッジは2018年12月13日(木)に、トークイベント「AI TALK NIGHT 2018」を開催しました。
成長著しいAIソリューションは、どのようにして自社の業務やサービスに活かせるのか?AI TALK NIGHTは、AI導入を検討する企業が持つ悩みを、AIのスペシャリストに直接ぶつけられるトークイベントです。業界を先駆けるゲストをお招きし、最先端の情報に触れる機会を提供します。
第3セッションでは、「AI導入成功のための勘所」をテーマに、ALSOKの干場氏と西川コミュニケーションズ株式会社の伊藤氏をお招きし、レッジ執行役員の飯野がモデレーターをする形でパネルディスカッションをおこないました。
ALSOK 営業総括部次長
沖電気工業、日本ルーセントテクノロジー(現:ノキア)、インターネット総合研究所、ウィルコム(現ソフトバンク)にて通信シス テムの開発、サービス企画、事業開発に従事。 2010年にALSOKに入社し、ユーザー企業の立場からICT の利活用を推進中。オープンイノベーション、 スタートアップ支援も担当。
伊藤 明裕
西川コミュニケーションズ株式会社 AI事業開発室次長
名古屋工業大学工学部卒業後、証券、製造、ソフトハウス、webベンチャー等にてシステム開発・運用に従事。2005年西川コミュニケーションズに入社、ICT全般のマネジメントを担当。業務支援システムの自社開発、社内インフラ整備、クラウド化推進等に加えて、中核事業での個人情報取扱増加に合わせIPA情報セキュリティスペシャリスト取得。2017年、AI事業開発室発足に伴い異動。社内教育、業務へのAI適用実績作り、またJDLA賛助会員としてネットワーキング中心に活動中。初回G検定/E資格合格。
実際にAIをビジネスに導入する事業会社のお二人から、社内にどうAIを展開させていくべきか、実践に近いお話を聞くことができました。
仕事がなくなる危機感からAI導入を決めた
AIを提供する側ではなく、事業会社である2社。そもそもAIに取り組もうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
「ALSOKでは2015年くらいから、トップからも声があり、取り組みが始まりました。まずは研究室内の数人でAIの研究が始まりました」
「弊社は老舗印刷会社ですが、割と新しいもの好きな会社なので、あまりAI自体に抵抗はありませんでした。2018年2月の会議でAI中心のビジネスモデルに切り替えることをトップが宣言し、AI事業開発室ができました」
2社ともトップの一言で本格的にAI導入をスタートさせたのですね。
トップダウンはAI導入のきっかけとして多いもの。しかし、現場から理解が得られず頓挫することもあり、どのようにして社員からAIに対する理解を得たのかは気になります。
「監視カメラの役割がAIでかなり変わるのを、多くの社員は予見していましたので、納得感と危機感を持って進められました」
2018年12月には、防犯カメラの映像をAIで解析し、万引き犯の逮捕に至ったとニュースになりました。AIを活用することで監視カメラの役割が着実に広がっています。
過去の干場氏への取材時には、AI導入時に重要となる、個人情報の取り扱いや期待値調整の仕方についても語ってもらいました。「人間が分からないことは、AIにも分からない」というキーワードを社内に浸透させるなど、AIはあくまで形式知化されたことを代替できるものでしかない、と周知したといいます。
「私自身、機械学習の経験もなかったので、まずは勉強から始めました。社内勉強会を開いて、AIに抵抗感を持たれないように啓蒙活動をしています。勉強会といっても、他の社員より数ヶ月前に学び始めただけですが(笑)」
まず会社全体に「AIは面白そうだ、勉強したい」という意識を持たせたのですね。
ITパスポートの取得とG検定の合格に向けて奮闘されたお話を以前、伊藤氏に取材しています。社内勉強会から始めるのは、どの会社でもすぐに取り入れられそうです。
自分たちでやって初めて難しさがわかった
社内でAI開発をするか、外部パートナーと共同で開発するのかの判断は、AI導入を進める上で多く議論されるポイントです。ここでは2社がどのように進めているのかも語られました。
「外部パートナーと一緒にやるにしても、社内の人間がAIを理解していないと、なかなか話が進まないこともあります。なので、まずは基礎知識を身につけようと、G検定を受けました。
知識が身につくと、AIで解決できそうな課題が社内で多く見つかりました。品質保証の会議中に、自社印刷工場の検査業務にAIが導入できるのではないかと提案があり、現在自社で品質検査AIを開発しています。
まだ実証実験の段階なので自社で完結していますが、自社でやってみて初めて難しさがわかりました。自分たちに知識がないと、課題も発見できないし、ベンダーさんの話にもピンとこなかったりしますからね」
いざAIを導入しようと見積もりを取っても、
- 見積もりの内訳がわからず、納得感がない
- 外部パートナーの意見に従って進めたが、精度が出ずにPoC(実証実験)がずっと続いている
といったケースも多いのではないでしょうか? 必要最低限のAIに関する知識を持っておくことで、「共通言語」で社内や外部パートナーとの議論を進めることができます。
「弊社も初めは自社でやっていました。監視カメラのデータはたくさんあったのですが、社内の研究所でデータ学習をさせても、なかなか成果が出ませんでした。
やはりAI開発に慣れた人がやらないとだめだと判断し、ノウハウのある外部パートナーと共同で取り組みました。そうしたら2~3ヶ月で成果が出て、一気に取り組みが進んだのです」
外部パートナーに頼んで劇的に開発が進むというパターン。やはり餅は餅屋ということでしょうか。外部パートナーと組むとしても、しっかりと議論をするためには発注者側にもAIリテラシーが必要です。
AIを話せる仲間を集めに自ら奔走
次々と新しいことに取り組む2社。社内で新しい取り組みを始める上で重要なポイントも聞くことができました。
「新しいことを始めるには、まず一緒にやってくれる仲間を社内に見つけることが大切です。社内を探してみると、実はAIをやってみたかったという人が必ずいます。
新しいことを始めるのに保守的な人たちもいると思いますが、それはそれで尊重すべきです」
「同感です。やはりやりたい人じゃないとうまくいかないので、やりたい人にやってもらうのが一番です。自分ごととして捉えてもらうのが大事ですね」
社内の人をいかに巻き込んでいくか、という話が頻繁に出てきました。会社を動かしているのはやはり「人」。新しいことを始める熱意のある仲間を社内に増やすことがカギとなりそうです。
「弊社では新しいことを始める際に社内公募を実施し、自ら手を上げてやってもらっています。そのための教育コストは惜しまずに出しています」
勉強会やG検定、社内公募など、AIに取り組む仲間を見つけるために、すぐに取り組めそうな例をお聞きすることができました。
最低限のAIリテラシーを身に付け、新しいことを一緒にはじめる仲間を見つけることが、”AI導入成功のための勘所”となるのではないでしょうか?