人工知能は人間の舌を攻略できるか? チョコレート開発からレシピ提案まで「AI × 味覚」サービスを一挙紹介

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衣食住という言葉があるように、人間の生活の基本といえる「食」。ビジネスとしてのスケールも大きく、農家やシェフ、商品開発者、マーケターなどさまざまな業種の人が関わっています。

それらのどの業種においても、「味覚」を扱うことは欠かせません。しかし、味は人によっても好き嫌いがあり言語化も難しく、一筋縄ではいきません。

本記事では、そんな味覚の分野にAIを導入することで何ができるのか、現在どのような取り組みがおこなわれているのかをまとめました。詳しく見ていきましょう。

味覚の定量評価からマーケティング支援まで。味覚の分野でAIができること

味覚の分野へのAIの活用のされ方は、主に以下の4つに分けられます。

  • 味覚を数値として表現
  • 食材の相互作用を加味し、食べ合わせやレシピを提案
  • 色や形から食材の状態、味を予測
  • 嗜好やトレンドの分析・予測によるマーケティング支援

言語化するのが難しい味覚をAIで数値化することで客観的に味を伝えたり、食材の総合作用を分析し、意外性のある食材の組み合わせを見つけたり、AIを用いるメリットは多々あります。

今回は味覚の分野にAIを用いている取り組みをいくつか紹介します。

味覚センサーレオ ―― 味覚センサーで味を数値データとして出力

出典:AISSY

味覚センサーレオは、測定した電気信号を機械学習で分析することで、味を定量的な数値データとして出力します。

以下のチャートのように、甘み・旨味・塩味・酸味・苦味の5つの項目で表現されます。

出典:AISSY

また、味の相互作用を加味したデータ解析をもとに、食べ合わせを考案することも可能。

実際に味覚センサーレオは、十勝スマートチーズやキリンの生茶といった商品のマーケティングに活用されています。商品を科学的に分析し、競合商品との差別化を測ったり、商品の良さ・特徴のアピールなどに使われています。

味は人によって好き嫌いもあり、従来では評価が難しかったですが、数値として定量的に扱うことで、マーケターはより科学的に分析ができ、消費者も商品の購買材料として活用できます。

AIソムリエ ―― 嗜好の分析によるお酒のパーソナルレコメンデーション

AIソムリエ(SENSYソムリエ)は、人の感性を理解するパーソナル人工知能「SENSY」を開発する企業株式会社SENSYによって開発されました。

評価レビューからユーザーの好みを分析し、オススメのワインを提案。食べあわせる料理に合うワインを提案することも可能です。

三菱食品と共同開発がおこなわれ、百貨店やスーパーを中心に導入される予定だそう。試験導入した店舗では10日間で8,1本/1000人から11.7本/1000人へと実績は上昇。大きな成果を残しています。

ほかにも、わたしワインというAIが自分のワインの好みを教えてくれるワイン通販サイトもあるように、種類や産地が多く選ぶのが難しいとワイン選びと、AIによるパーソナライズの相性は良さそうです。

「おいしさの見える化」技術 ―― 野菜や果物の画像から味を予測

出典:マクタアメニティ

マクタアニメティは、農業の視点から味覚分野にAIを導入している会社。『おいしさの見える化』技術の構築を掲げ、野菜など農産物の画像を解析し「おいしさ」を計測します。

スマートフォンやタブレットのカメラで撮影可能。5種類のチャートとともに短いメッセージが提示されます。

設備や機材を購入する必要がなく、食材を加工する必要もないため、コストを抑えておいしさを計測できるといいます。食材の品質管理の負担を減らします。

あの頃はCHOCOLATE ―― 時代のムードを反映したチョコレートの開発

出典:NEC

NECの取り組みはほかの会社と一味違い、「あの頃はCHOCOLATE」の開発です。

AIを使い、チョコレートで時代のムードを再現するこのプロジェクトでは、新聞記事から読みとった時代のムードを味覚指標で表現します。

技術面ではNEC the WISEを用いおり、新聞に出てきた頻出単語を味覚に変換します。下の画像は単語を味に変換している表。「若い」がフルーティ、不安が苦味など単語のイメージに近しい味へと変換しているようです。

このチャートをもとに、チョコレートメーカーのダンデライオン・チョコレートが5種類のチョコレートを制作。

これまで開発されたのは、

  • 人類初の月面着陸味(1969年)
  • オイルショックの混迷味(1974年)
  • 魅惑のバブル絶頂味(1987年)
  • 絶望のバブル崩壊味(1991年)
  • イノベーションの夜明け味(2017年)

といったラインナップ。どのような味がするのか、気になりますね……!

過去にはロッテがAIによるトレンド分析によって「トッポ カラマンシー味」を開発していたり、AIによる目新しいお菓子の開発は、ひとつのマーケティングにもなっています。

Gastrograph ―― 味覚の嗜好やトレンドを分析

Gastrographは、Analytical Flavor Systemsが開発した食品・飲食産業に特化したAIプラットフォーム。

食べ物・飲み物の味を24の指標(5段階)で評価するアプリで情報を収集し、味の嗜好と年齢やバックグラウンドなどとの関係性を導きます。

提供しているサービスは、その地域に適当な商品を発見するInnovation ManagementDeep Market insightです。

Innovation Management

  • 消費者に合わせた新しい味の新商品開発
  • 自社の商品のカニバリゼーションとまだ未開拓なホワイトスペースの発見
  • マーケットの変化にあわせた商品の適応

Deep Market Insights

  • 流行し始める好みの予測
  • ターゲット層の把握
  • 味を分析し、相互作用を検証

マーケティングでは変動していく消費者の嗜好に合わせた商品を提供する必要があります。しかし、これまでは消費者の「味覚」まで把握することは困難でした。そうした困難をAIが解決してくれるかもしれません。

Foodpairing ―― 新たな食材の組み合わせを考案

Foodpairingは食べ物の組み合わせを提案することで飲食産業とシェフを支援するサービスです。

材料を選択すると、数秒でその材料を組み合わせた味を推定。科学的分析から、最適な材料の組み合わせを考案します。

ひとつの活用事例として、FNC(コロンビアコーヒー生産者連合会)と共にコロンビア各地のコーヒーとそれに合う食べ物の組み合わせを分析。バリスタやシェフ、ソムリエのマリアージュの支援をしています。

出典:FNC コロンビアコーヒー生産者連合会

レストランなどでは、食べ合わせを提案することで飲み物とともに食べ物を勧めることができ、来店者により良い体験を届けることができそうですね。

Plant Jammer ―― アプリを使って、選択された食材からレシピを考案

Plant Jammerは、食材同士の組み合わせから最適なレシピを考案するアプリ。

食材を甘味や酸味、塩味など10以上もの味と食感で表現し、300万件のレシピデータを学習させたニューラルネットワークを用いることでレシピを考案します。

ユーザーは、まず使う材料を選択。その後、調味料を指定するとレシピを作成してくれます。

出典:Plant Jammer

食材が余ってしまうのはよくあること。このアプリを使えば冷蔵庫の余った食材からレシピを自動作成できるので、家庭の食料ロスの改善に役立てられます。

HALLA ―― 材料と食べる人からレシピを考案

HALLAは、AIを使って食料雑貨店やレストラン、フードデリバリーでのレコメンデーションを支援している企業です。

食べ物の味を分析するために使用している学習データは、以下の通り。

  • 食材データ2万以上
  • レシピデータ17.5万以上
  • 料理データ2000万以上

これらを考慮し、味、見栄え、栄養などの属性の分類マップを構築。一部データサイエンスでけでなく心理学の知識も応用しているといいます。

すでにレコメンドエンジンとしてオレゴン州にある食料雑貨店Green Zebraで導入されています。また、レコメンデーションによる料理の選択からデリバリーまでおこなえるアプリも提供。

スーパーで食料品を選ぶときやデリバリーで料理を頼むとき、結局同じものを注文してしまう……ということもあります。精度の高いレコメンデーションがあれば、自分の好みに合う料理を選ぶことができ、生活の幅も広がるかもしれません。

Spoonshot ―― 嗜好やトレンドの分析によるマーケター支援

Spoonshotは、食品科学と機会学習を用いて、味のトレンドを予測しています。

新たな食べ合わせの提案でマーケター・製品開発者を支援、パーソナライズによってロイヤリティ向上を支援します。たとえば、社内食堂では同じものばかり食べがち。そんな従業員に対して、料理とそれに合う飲み物・お菓子をレコメンドするといったものです。

その結果、注文は24%、来店数は17%増加し、注文される商品の数も6%増加。レコメンドが従業員に受け入れられていることを示しているでしょう。

パーソナライズレコメンデーションの興味深い事例です。

AIが食品業界に革命を起こす?

画像認識、音声認識など、人間の視覚や聴覚にあたるAI技術は今までもかなり耳にしてきたと思いますが、味覚についてもAIを導入している企業は増えています。

特にマーケティング分野では食べ物の味の把握や消費者の嗜好の予測でAIは有効に活用できます。19兆円を超える業界規模と言われる食品業界に本格的に味覚分野でのAIが導入されるとなると、大幅なビジネスの改革が起きるかもしれません。

今後、味覚の分野へAIを導入する企業はさらに増えていくでしょう。果たしてAIは人間の味覚を攻略できるのか、これからの発展に期待です。