広告業界の働き方がガラっと変わる? グラビアアイドル×AIコピーライター、コラボ企画の制作現場を取材

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電通が開発した、AIコピーライター『AICO』をご存知でしょうか?

電通のコピーライターが考えたコピーを学習したAIで、キーワードを入れると、自動でそのキーワードに基づく大量のコピーを提案してくれるというもの。実際にAICOが活用される事例も増えてきて、クリエイティブ業界の働き方も変わるのではないか……と言われています。

今回はなんと、“グラビアアイドルのDVDジャケットコピーを、AICOで考える”という企画のコピー制作現場を取材をさせていただくことに。

AICOが実際にどんなコピーを出してくれるのか、AIとコピーライターはどう付き合っていくべきなのかを取材してきました。

グラビアアイドルがAICOをつかってみた!

今回、コピーを制作するのは、グラビアアイドルのわちみなみさん。冒頭でもご説明しましたが、今回はわちさんのDVDジャケットコピーを、AICOで考えてみようという企画になります。

わちみなみさんプロフィール
1995年生まれ、福岡県出身。NEXTSTAR「プレミアム水着ガールズオーディション」グランプリ。
2017年5月にデビュー1年目にして講談社「ヤングマガジン」でグラビア登場後、現在は月に数本の雑誌巻頭表紙を飾っている。ニックネームはわちち。

AICOはwebブラウザから簡単操作で使えるシステムになっています。まずは試しで「汐留」というキーワードを入れてみることにしました。

すると、数秒で100個のコピーが表示されました。

  • NO MORE 汐留
  • ケチョンケチョンも知らない、照会先まで知っている。
  • 汐留、飲む。
  • 汐留が大きなもの人気ですね、夏。
  • 汐留はある。夢はどうだ。
  • 汐留は、ゼロ場へ。

ちょっと意味がわからないものもありますが、これをそのまま使うわけではなく、ここからweb画面上右部分の「ありかも」「なしかも」を選択していきます。(こちらは、AIの追加学習時のフィードバックにもつかわれるとのことです)

最終的な結果画面は、下記の通り。

「ありかも」で、選択していたコピーと、関連のありそうなキーワードマップが出力されます。なるほど、この結果をもとに人間がブレストをしてコピーを決めるというワークフローになるんですね。

使い方もわかったところで、今度は実際にDVDジャケットのコピーを制作します。
「わちみなみ」や、あだ名である「わちち」といったキーワードで挑戦していました。


▲ 電通の方々と一緒にコピーを選んでいる様子。なかにはクスッとくるものもあり、とても盛り上がりました。

AICOがつくったコピーのなかで、実際に候補に選ばれたものは下記の通り。

  • わちちなしで生きられるだろうか、無理だね。
  • わちち、やってみた
  • いざ、わちち
  • スゴイわちち、できました

まるで人間が考えたコピーだと思いませんか? ちょっと言われないと気づかないですね。


実際に使ってみてどうでした?

――わち
「こんなに簡単にコピーができるとは思わなかったです!
『そんな切り口から来るんだ』っていう、人間が思いつかないようなものもあって、すごく面白かったですね」

確かに、システムならではの、奇抜なコピーもいくつかありました。 ただ、そこから話題が広がったり、他のコピーの種になったりと、ブレストのツールとしても優秀な印象です。

――わち
「講談社VoCEのVOCEST!としてブログの連載をしているのですが、タイトルや見出しを考えるのに、いつも時間がかかるので、そこでAICOをつかってみたいです。

あとは、Instagramにアップする写真のタイトルにもつかえそう!『無題』が減りそうです(笑)」

筆者もタイトルにはいつも悩んでいるので、ライターとしてはすごく共感できるお話です……。
AI技術が普及して、SNSといった身近なところでも、使えるようになるのを期待してしまいました。

この場で制作したコピーは、実際にジャケットのコピーに使われるとのことです。


▲ 取材の後、公式Twitter上でジャケットコピーにふさわしいコピーの投票を実施されました。結果発表が楽しみです。

社内でAICOが活躍! AIは敵ではなく、人材教育スピードも上げてくれる強い味方だった。

20分もかからずに、コピーの作成・選定ができてしまったAICO。気になる、実際の活用シーンや働き方の変化についてはどうなのか、電通の方にもインタビューをしました。お話してくださったのは、

  • 株式会社電通 第2CRプランニング局 チーフ・コミュニケーション・デザイナー/クリエーティブ・テクノロジスト 大瀧 篤さん
  • 株式会社電通 第2CRプランニング局 コピーライター 江國 翔太さん

のお二人。よろしくお願いします。


─すごい短時間でコピーができあがりましたね。実際に社内でも使われているのでしょうか?

――大瀧
「そうですね。社員であれば、希望すればすでに全員つかえる状態になっています。

最近は『ありかも』『なしかも』のフィードバックだったり、学習データを増やしたりしたおかげで、かなり表現の幅が広がっています。
実際に、伊勢丹の新聞広告だったり、NPO法人のwebバナー広告でも活用していますよ」

実験段階ではなく、すでに事例も多くあるとは驚きです。現在はなんと、累計6,000件ものコピーを学習しているとのことです。

“働き方改革”の一貫としてもスタートしたというこのAICOプロジェクト、まだ全社員がつかっているわけではないものの、やはり大きな時間短縮になっているそうです。

定性的にみたときに、社内の空気・組織の在り方って、変わってきてるのでしょうか。

――大瀧
「はい。とくに面白いのは、人材教育の仕方・スピードが大きく変わったところですね。

これまで新入社員のコピーライターは、とにかく量を出す、という修行から入っていたのですが、AICOがいることでそうしたフローが一部で無くなってきています」

――江國
「じつは私は電通に入ってまだ間もないのですが、AICOのおかげで“選ぶ”ということを意識するようになってきました。つまり、いちはやくディレクターの目線を養えるようになったんです」

これまでのクリエイターのキャリアパスは、長年の修行を経てからディレクターになり、そこから“選ぶ”・“監督する”というスキルを養う、というのが一般的だったそうです。
ただ、AICOのおかげで修行期間をある意味スキップすることができ、ディレクターレベルの人材がはやくできあがる、というわけですね。

――江國
「業務の一部をAIに任せられるのであれば、人間にしかできないところに精一杯力をいれよう、というような空気が社内に生まれてきたり。大きな価値観の変化が起きていると思っています」

まさに、人間とAIの協業。次世代の働き方の規範になりそう

AICOを通して、“人間とAIの協業”の具体的な形が垣間みえた気がします。クリエイティブとAIは一見、対立しそうな領域ですが、アイディアの“タネ”の量をとにかく出す、という観点ではすでに業務を手助けするレベルまできているんですね。

現在は、他の部署からも「ぜひ使ってみたい」という引き合いがあり、着実に広まっているとのこと。さらにAICOに続き、MAIというキーワードプランナーAIも開発しているそうです。こちらも人間に対して、“タネ”を提供して手助けする立ち位置とのことです。

AIと協業するといった新しい働き方は、意外とクリエイティブの分野から広がるのかもしれません。今後の動きにも要注目です。