【三菱重工×ダイキン】製造業でAI人材が育つ組織風土の作り方

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GDPの2割弱を占め、基幹産業として日本を支える製造業。ノウハウが蓄積された製造の現場や確立された業務フローのなかに、AIを取り入れる動きが広がっている。

本稿では、2019年4月22日に開催されたグローバルAIサミット「AI/SUM(アイサム)」にて行われたセッション「製造業でのAI人材の育成」の様子をお伝えする。

AI導入の土台となる人材育成の観点で、三菱重工業株式会社ダイキン工業株式会社では、どのような取り組みがされているのだろうか。

登壇者
川口 賢太郎
三菱重工業株式会社 インダストリー&社会基盤ドメイン 事業戦略部 デジタライゼーション推進グループ 主席チーム統括

小倉 孝訓
ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター・主任技師


モデレーター
石川 聡彦
株式会社アイデミー 代表取締役社長

メーカーがAI人材を内製化する理由


石川 聡彦氏
――石川
「そもそも、なぜ製造業の会社がAI人材の育成を社内で行う必要があるのでしょうか?」
――小倉
データをどう活かすかが、AIを活用するには非常に重要だからです。自社の人材であれば、業務フローなどのドメイン知識を持っています。そのため、膨大にある社内の未活用データに気づき、活用方法を考えられるのです」
――石川
「会社の規模が大きいほど、AI導入効果が大きい課題を抽出するのは難しいと感じています。これを効率的に実施する方法はありますか?」

小倉 孝訓氏
――小倉
現場の業務改善は、現場の人材で行うのが理想です。そこで、人材育成をPBL(Problem Based Learning:問題解決型学習)で行いました。

管理職から新入社員まで、幅広く人材を育成し、現場の人材で課題解決ができるよう取り組みを進めています」

――川口
「AIをやりたいと手の上がった事業部門から、効果が上がりやすそうな課題をいくつかピックアップして取り組みました。

10年20年かかりそうな研究分野よりも、中期計画と同じスパンの3年間で結果が出そうなところから優先的に進めています」

同じ製造業でも、課題へのアプローチ方法は各社で異なるようだ。ダイキン工業が現場から浮かび上がる課題に取り組んでいるのに対し、三菱重工ではトップダウン的に課題を選定している。

AIで解決する課題は「トップダウンで決めるのか」「現場からボトムアップで上げるのか」各企業に合ったプロジェクトの進め方がありそうだ。

実運用を視野に入れたプランニングを

――石川
「実際には、どのようなプロセスやサービスにAIを取り入れていますか?」

川口 賢太郎氏
――川口
「混雑状況に応じて間引き運転に切り替えるといった、ゆりかもめの自動運行を検証したことがあります。乗車人数を推定する実証実験は終了しており、現在は公共サービスとして信頼性や実績を積んでいく段階にあります。

技術的なハードルというよりも、時刻表の変更にどう対応するかなど、社会整備的なハードルがあり、議論が必要です」

――小倉
故障などの問い合わせ対応チャットボットから、工場の検品出荷量予測まで行っています。ただし、技術的にこれらのことを実現できたとしても、AIが失敗した場合の対処方法は人間が考えなければなりません。そのためには説明可能なAIを作る必要があります。

人が介在しながらAIを育てていく心構えも不可欠です。新人が失敗するように、AIも失敗します

――石川
「アイデミーでは多くの製造業の顧客をサポートしていますが、実運用まで至らないケースもみられます。

PoCを多く進めるのは大事ですが、『精度が上がったらどうビジネスにつなげるか』事前にプランニングするのが実運用まで繋げるためのポイントです」

※講演スライドをもとに編集部で作成

――石川
「機械学習のプロジェクトには、精度とビジネスインパクトに質的転換点があります。無人化に成功する前の精度でも、ダブルチェックや省力化は実現できるのです。

AIを活用した新製品を作るにしても、まずは無料オプションからはじめ、精度が上がれば新製品としてリリースするなど、段階的な発売が計画できます。

精度が上がったらどう実用化するかまで、PoCの実施前に仮説立てするのを推奨しています」

PoCばかり進めて、実運用に結びつかない「PoC貧乏」に陥っている企業も、多いのではないだろうか。製造業に限らず、どの業種でも実運用化を見越した事前の計画立案が必要そうだ。

失敗を失敗と思うな

――石川
「AIプロジェクトを進めるなかで、失敗したこともあると思います。AI人材の育成における『しくじり先生』を教えてください」
――川口
どんどん『しくじり先生』を作っていくべきだと考えています。

失敗したと思わず、あらかじめ決めた期間で出た結果を踏まえ、次のステップへ進むだけです」

――小倉
「失敗も糧です。研究開発部門が現場で役立つだろうと作ったシステムが、現場で受け入れられず頓挫したこともあります。現場を意識した開発が必要だと痛感しました」
――石川
「なぜ現場との意識のズレが生じてしまったのでしょう?」
――小倉
現場を巻き込んでいると思い込んだのが原因です。研究開発部門がプロジェクトを進めると、どうしてもプロダクトオーナーが研究者になってしまいます。それだと実際に使う人の要望を汲み取り切れません。現場で本当にそのプロダクトを必要としている人が、プロダクトオーナーとしてプロジェクトを回す必要があると思います」