「AI導入で二極化が広がる」成功する企業と苦戦する企業の差は?

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AIのビジネス導入率は、米国で13.3%、ドイツで4.9%であるのに対し、日本は1.8%と大幅な遅れをとっているという(コンサルティング会社PwCの2018年資料より)。

同資料によれば日本は投資規模でも大きく差をつけられており、米国主要企業の2013年から2015年のAI関連投資が約6兆円であるのに対し、日本は約3千億円にとどまっている。

この状況を踏まえ、日本企業はどうAI活用に取り組むべきなのだろうか。2019年4月22日に開催されたグローバルAIサミット「AI/SUM(アイサム)」にて行われたセッション「大企業のAI適用戦略と人材」の様子をお伝えする。

登壇者

石井 大智
株式会社STANDARD 代表取締役 CEO

山田 大介
株式会社みずほフィナンシャルグループ 理事

石山 洸
株式会社エクサウィザーズ 代表取締役社長

佐々木 潔
ヤフー株式会社 執行役員 チーフデータオフィサー(CDO) 兼 テクノロジーグループ データ統括本部長


モデレーター

村山 恵一
日本経済新聞社 編集局コメンテーター

日本企業、AI活用の現状

――村山
「国ごとの比較調査では、日本は投資額も少なく、具体的な取り組みを考えている企業も少ないと言われています。日本企業のAI活用はどのくらいのレベルにあると考えますか?」
――佐々木
「活用を考える前に、まず人材不足が深刻です。AIを研究する学生は増えていますが、ビジネス課題とデータを繋げて考えられる人が少ないです」

石山 洸氏
――石山
「AI活用がうまくいっている会社とそうでない会社で、二極化がすでに進んでいます。差がついてしまうポイントは、AIで取り組む企業課題をはっきり設定できているかどうかです。課題が設定されていれば、しっかりと会社が投資して、事業をのばせます。

日本で他国より進んでいる例といえば、超高齢社会についての研究です。エクサウィザーズでも取り組みを進めています」

参考記事:【AI × 福祉】認知症ケア技法「ユマニチュード」をAI学習 ── テクノロジーは社会課題をどう解決する?

現在、経済産業省を中心に人材育成事業を進めるなど、国をあげてAI人材の育成が急ピッチで進んでいる。まずは人材育成から取り組もうとする企業も多そうだ。

参考記事:経産省が進める“課題解決型”の人材育成「AI Quest(エーアイ・クエスト)」、その全貌

まずAIでなにがしたいか明確にする

――村山
人材不足や二極化が進んでいる現状を踏まえ、今後、日本企業はどうAIと向き合うべきでしょうか?」

――佐々木
「AIはどうしてもお金がかかります。なので、まず小さく始めて、結果が出るかどうか見極めてから、大きな投資につなげるのがよいと思います。

AI技術の進歩は速いので、5年単位でプロジェクトを進めるのはよくありません。まずは3ヶ月くらいの短い期間で、スピード感をもって進めるのが大切です」

――石井
「STANDARDでは法人向け研修サービスを提供しており、多くの企業と取引をしています。そのなかでも、AIを自分ごととして捉えている企業は1-2割程度しかいないイメージです。

『AIを使わないと競争に乗り遅れる』みたいな強迫観念があり、その企業がAIで何をしたいか、明確でない場合が多いです。

大きな予算を使って、大きな失敗をするのは、AI推進をためらう一番の原因となります。事前にしっかりと目標設定を行い、大きな失敗だけは絶対に避けるべきです」

佐々木氏と石井氏が共通して主張したのは、AIプロジェクトを小さく始めるという点だ。

初めての試行でAI導入が成功するケースは、あまり多くない。まずは小さく始めて、トライアンドエラーを繰り返すことで、自社にあったAI導入の方法を見つけられそうだ。

AI時代の人材活用と組織のありかた

佐々木氏が冒頭で言及した通り、AIを活用するには人材の育成が欠かせない。しかし、大企業独自の企業風土がAIの浸透を遅らせているとの鋭い指摘もあった。

――山田
「AIを使いこなすには、組織風土が大事です。まず小さいことから始めて失敗を重ね、それを次のステップに生かせる風土を作る必要があります。

PDCAを回す必要がありますが、Pの割合が多くてはいけません。大企業はPPPPPPPPDDDCCCAAになりがちなのです。もっとDとAに重きを置くべきだと思います」

――石山
「CHRO(最高人事責任者)がもっと力を持つべきだと思います。『どの仕事をAIがやるのか、人間でやるのか』を判断しなければ組織計画は作れません。AI導入で組織がどう変わるのか、人事の観点からよく理解しなければいけません」

石井 大智氏
――石井
「企業自体がAIで解決すべき課題を明確にできていないため、組織づくりまで考えられていないことも多いです。

STANDARDではAI人材の採用支援を企業向けに行っています。しかし大企業にAI人材を紹介しても『総合職で一括採用するため配属先を保証できない』、『セキュリティー上データに触らせない』などの制約がつくケースもあります。

すると、優秀なAI人材は大企業へ行かず、AIでやりたいことが明確なベンチャー企業に就職してしまいます。これが、AIを活用できる企業とそうでない企業の二極化が進む一因だと思います」

組織づくりから変えるべきとの石山氏の主張に続き、AI活用がうまくいかない要因は大企業の採用スタンスにもある語ったと石井氏。

組織づくりを見直してAI時代に適応する体制を構築し、会社一丸となってAIに取り組む必要がありそうだ。

AI時代、日本企業のあるべき姿

――村山
「これからのAI時代、日本企業はどう変革していくべきでしょうか?」
――山田
「AIリテラシーを皆で上げていかなければいけません。

数年前までほとんど知られていなかった言葉が、あっという間に世間に広まった事例は過去にもあります。それと同じで、皆がAIのことを正しく理解している社会になるべきです」

――石井
「5月に元号が変わるのは、新しく何か始める良いきっかけです。日本企業はうまくいっていない事業をすっぱりやめ、地に足を付けた事業戦略を立てるべきではないでしょうか」