「ミクロの計測を基にした科学的なアプローチ」DMM.comとSansanが描くテック企業への転身ロードマップ

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2018年12月、DMM.comとレッジは『AI TALK NIGHT 2018』を共同開催しました。

さまざまな業界のAIスペシャリストを迎えて開催してきたAI TALK NIGHTですが、今回は2018年を締めくくるにふさわしい豪華なゲストにお越しいただきました。





AI TALK NIGHT
成長著しいAIソリューションを、どのようにして自社の業務やサービスに活かせるのか? AI TALK NIGHTは、AI導入を検討する企業が持つ悩みを、AIのスペシャリストをゲストに直接ぶつけられるトークイベントです。

これまでのレポートは下記から。
キカガク吉崎氏を招いた「AI TALK NIGHT vol.1 “これってAIでできますか?”」イベントレポート


「AI TALK NIGHT vol.2」イベントレポート ── 電通が語ったAIプロジェクトの秘訣は“小さな成功の積み重ね”


「結局、AIはやったかやらなかったかが全て」ソニー小林氏が語ったAI TALK NIGHT vol.3 イベントレポート


企業はAIといかに向き合うべきか?「AI TALK NIGHT vol.4」Microsoft × アロバ × レッジぶっちゃけトーク

本記事では、AI TALK NIGHT 2018の締めくくりに行われた、合同会社DMM.com CTO 松本 勇気氏とSansan株式会社 テクニカル・エヴァンジェリスト 大隅 智春氏によるトークセッションの様子をお伝えします。

社内でAIエンジニアを抱える両社のAI活用

――さまざまな分野・業態でのAI活用事例がメディアに取り上げられている昨今、両社ではどのようなAI活用が進んでいるのでしょうか?

――松本
「DMM.com社内にはAI部という組織があり、様々な事業部の課題をヒアリングし、機械学習的アプローチが有効な解決手段だと思われる課題があれば、それに対してソリューションを提供する形を取っています」

――松本
「たとえば、不正決済の自動判定機械学習ディープラーニングといった技術は相性がいいため、AI部が中心となって不正検知システムの開発に取り組んでいます。

具体的には、ユーザーの行動から異常な行動をどう検知していくかに焦点を当て、機械学習で一斉に検知できる仕組み作りを目指しています」

――大隅
「Sansanにおける、わかりやすいAI活用先は名刺のデータ化です。人の目で見れば、名刺上のどの項目が何を示しているのか判断できて当然ですが、郵便番号電話番号の見分けなどは機械からすると難問です。

つまり、名刺の内容を文字起こしできても、機械はその文字列がなんなのか理解していないということです」

――大隅
「そのため、創業当初のSansanは名刺のデータ化を手作業で行っていました。ITだなんて間違っても言えないような泥臭いやり方です。

ですが、今ではその作業がディープラーニング技術で代替され、名刺にある記載内容の分類を自動化させることに成功しました。今では、99.9%の名刺を正確にデータ化可能です」

『大企業 vs ベンチャー』それぞれのR&D

――AI活用に積極的な両社ですが、R&Dにも力を入れていらっしゃるようです。R&Dを事業へどう接合させているのでしょうか?

――松本
「R&Dには

  • 新しいシーズを生み出す攻めのR&D
  • 既存事業の収益を1.1倍、1.2倍にする事業改善的R&D
  • 自社データからの価値創造を目指し、大学などの研究機関と共同で行うR&D
  • 最先端アルゴリズムとビジネスの接合性を検証するR&D

など、様々な形があると考えています。DMM.comはとにかくリソースが潤沢なので、幅広い分野の技術を網羅しつつ、事業とR&Dのポートフォリオを構築し、投資していくことを意識しています」

――そうはいっても、どの辺の技術に投資していくべきかの見極めは難しいですよね。

――松本
「どの技術が事業に活用できるか見極めた上で、投資することは本当に難しいです。

また、PoC貧乏なんて言葉があるように、面白かったという感想だけで、次のステップに進まず、投資・開発が打ち切りになってしまうパターンもあります。このパターンはPoCを委託する側のリテラシーの低さから起きます。

技術を細かく解説できる必要はありませんが、最低限何ができるのか理解しておく必要はあるということです。『R&Dしている風』になってしまっては何も生まれません」

――最終決定は委託する側にありますからね。SansanはどのようにR&Dに取り組んでいるのでしょうか?

――大隅
「Sansanは、2013年からR&Dに注力しています。

DMM.comと違い、SansanのR&Dは基本的に事業部からのニーズに応えるためのR&Dです。もちろん、シーズを生み出すことにも取り組んでいますが、少数のR&Dに注力する必要があります。

今、Sansanが力を入れているR&Dは、ビジネスで一番信頼できる個人情報である名刺を起点として、社内の人脈を解析し、可視化すること。社内の人脈を可視化することで、例えばある会社とプロジェクトを共同で立ち上げるとなったとき、相手方のキーマンは誰で、社内の誰と繋がっているのか、そしてそのキーマンははどのようなことに興味があるのか、などのように掘り下げることが可能になります」

――数年前まで手作業で名刺のデータ化を行っていた企業とは思えませんね。

――大隅
「その通りです。少し前までIT系とは言い難かった会社に、今では、トップクラスの機械学習の専門家が集まってきています。実際、日本人では5人しかいないKaggleグランドマスターのうち、2人がSansanに在籍しているんです。彼らのような専門家を擁することで、解析精度の高いディープラーニングモデルを作り込めています。

また、R&Dで開発された試作品はSansan Labsで試用可能となっており、試用ユーザーからのフィードバックをもとに、機能をアップデートし、製品に新しく載せていく流れを構築しました」

テクノロジーとビジネスの垣根はもう消え去り始めている

――最後に、ビジネスサイドは、このテクノロジーの波にどう向き合い、行動していけばいいのでしょうか?

――松本
「そもそも、ビジネスサイドやエンジニアサイドといった分け方自体が無くなっていくと思います。

DMM.comはテックカンパニーを目指していますが、それはつまり、『事業に対してエンジニア、ビジネスの区別なくデータと技術を使って改善に取り組める環境』の構築を目指しているということです。現代の事業活動では、ユーザーの行動が逐一計測可能。ソフトウェア領域に関していえば、ユーザーが何をどこで、どういったUI上から利用したのかも計測できます。

要するに、究極のミクロを基にして1年後の事業予測を作ることも可能なわけです。さらに、予測と結果が乖離していた場合、理由を明確にし、モデルをブラッシュアップし、PDCAを回すという科学的アプローチが当たり前のようにできます。

今の時代、Excelではデータ量の差で置き去りにされてしまいます。そのため、SQLを書ける程度の技術力を身に付けるのは必須だと思います」

――大隅
「私たちは、必ずしも社員全員がテクノロジーを深く理解している必要はないと考えています。

Sansanでは、独自の取り組みとして、データサイエンティストとフロントに立つビジネスマンを仲介するデータアナリストの育成を進めています。ビジネスのフロントと開発への橋渡しが円滑に行われ、フロントの意見が開発に反映されていく環境を作り上げることで、事業全体の成長につなげるためです。

しかし、テクノロジーとビジネスの架け橋となれる若い人材が相当増えているため、置いていかれないよう、ある程度の技術的な知識はつけておいてもいいと思います