アリババクラウドが主催するブロックチェーンゲームハッカソン「#asobiHack_Tokyo」の受賞作品が2023年5月17日に発表され、授賞式が行われた。
#asobiHack_Tokyoは、アリババクラウドが3月にオープンしたブロックチェーンラボのリソースを用いて開催されたブロックチェーンゲームのハッカソンだ。賞金総額は350万円で、最終優勝チームには200万円の賞金が贈られるほか、アリババクラウドとの共同マーケティングの機会が設けられる。
アリババクラウドは、Web3.0分野におけるクラウド製品・ソリューションの提供を通じ、Web2.0からWeb3.0へ移行する顧客企業を支援していきたいとしている。
ハッカソン参加者は、ブロックチェーンを活用した面白いゲームとサステナブルなコンテンツの提供を実現する、新たなビジネスモデル創出に取り組んだ。
最優秀賞「Climbers」
最優秀賞に輝いたのは、多人数バトルロイヤルレースゲーム「Climbers」のプロジェクトを発表した、株式会社プラチナエッグのチームClimbersだ。
ゲーム内容は、多人数で遊べるシンプルなバトルロイヤルレースだ。操作は移動とジャンプのみで、誰でも簡単に操作できる。全3ラウンドで、他の人より早くゴールすれば勝利となる。
注目なのは経済設計で、無課金ユーザーからは広告で収益を集め、課金ユーザーからの売上を積み立てることで、高額な賞金でユーザーを引きつける。取材したプラチナエッグ代表の竹村也哉氏は、「当たり前のことを当たり前にやっただけ」と話す。
「ブロックチェーンゲームでは、これまでも技術的には持続可能なモデルを作ることは可能だったはずですが、持続しないモデルのほうがユーザーに好まれやすく、作る側、ユーザー側双方の問題で持続してこなかったのだと思います。我々は長年ブロックチェーンゲーム開発の実績があり、ブロックチェーンゲームの課題である持続可能性の面でも、すでに2年以上継続するモデルを作れています」
優秀賞「チーム強制入場」
優秀賞に輝いたのは、チーム「強制入場」だ。チーム名は、ブロックチェーン上においてトランザクションが自動で行われることにちなんだものだという。
強制入場のゲームは、トランザクションに着目したストラテジーゲームで、ゲーム名は「Block Creators village」だ。他のブロックチェーンプロダクトと連携し、それぞれで発生したトランザクションがゲーム内の施設となり、プレイヤーのビレッジが成長していく。
チーム強制入場のXクリエーション株式会社の田中幸一郎氏、株式会社CAICA DIGITALの吉永友紀氏はこう話す。
左:田中氏 右:吉永氏
「現状のGameFiはブロックチェーンの真価を発揮できていません。聞こえは悪いですが村社会のようで、それぞれのプロダクト内でユーザーが囲われており、ミクロで見れば良いですが、より真価を発揮するのは、それぞれがつながった時です。さまざまなブロックチェーンプロダクトが連携される我々のゲームを通じてトランザクションが発生すれば、個別のゲームに滞留している人たちが他のゲームに流れ、流動性が高まる。それによる市場の活性化、ひいては市場へ貢献することを目指して企画しました」
「評価されたポイントは、トランザクションに着目したことかと思っています。メタバースなどではゲーミフィケーションという形でありますが、それをゲームに落とし込み、ユーティリティ性を他プロダクト連携で実現しています。何より、ゲームデベロッパーとしての技術力も確かだと自負しているので、それとWeb3技術の組み合わせを評価いただいたのだと思います」
特別賞「C4D」
特別賞は「C4D」が受賞した。プレイヤーは「自律分散型国家」の実現を目指し、最初に課せられたミッションである、ブロックチェーンを活用した5vs5のFPSゲームを行い、金貨を稼ぐ。そのため、5人1組のチームを結成しての協力プレイが鍵となる。プレイヤーはFPSで稼ぐもよし、ソースコードが公開されているためゲーム開発に携わって稼ぐことも可能だ。ゲーム名は「CYBERDIVER」。
既存のブロックチェーンゲームは、後発プレイヤーになるほど分け合うトークンが少ない(≒乗り遅れると損をする)という傾斜によりplay to earnの構造を実現してきたが、それだとマイナスサムゲームになるため持続性がない。
開発者の杉田翔栄氏は、プロダクトのポイントをこう話す。
「トークン価格の時間変化に依存しない、ゼロサムゲームとしてデザインしています。また、現状のブロックチェーンゲームは初期投資を特定の暗号通貨を買ってプレイすることが多いですが、初期費用は1ドル2ドルに抑え、ゲーム内で勝つと暗号資産を稼ぐことができ、参加のハードルを低くしています」
審査員特別賞「Golifehackers」
審査員特別賞は「Golifehackers」。チーム3人のうち2人がプロ棋士というチームだ。
ゲーム名は「いごんちゅ★バトル」。プレイヤーは囲碁AIを育てて戦わせることができ、育てた囲碁AIをNFT化して取引できる。キャラクターの育成を楽しみつつ、AIによるオートバトルで囲碁を学べる。
プロ棋士である大橋拓文氏(左)と、芝野龍之介氏(真ん中)はこうコメントした。
「ポイントは、プレイヤーが囲碁をプレイしないところです。あくまで育てたAIを対戦させるので、育成そのものに棋力は関係ありません。なのでライト層向けですね。囲碁のオートバトル+NFTでキャラの取引という、発想を評価いただいたのだと思います」
「現代人がゲームをプレイするうえでは、囲碁のようなプレイ時間が長いゲームは難しいのではと思ったのが企画のきっかけです。1試合1分、長くて5分くらいが限界だと思い、AI同氏でやらせてみると1分でした。もちろんAI同士の対戦もウマ娘のように観戦可能なので、見て学ぶこともできます」