監視カメラとAIで警備員の「目」を増やす。ALSOKが語る、AIにしか生み出せない価値とは

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誰もが一度は耳にしたことがある、綜合警備保障株式会社(以下ALSOK)。実は、かなり積極的にAIを活用しています。しかも、単なる効率化ではなく、事業価値を向上させる素晴らしいAI活用の仕方をしていました。

2018年1月には三菱地所株式会社、株式会社PKSHA Technologyと共同で、カメラ映像をAIで解析し、困っている人を検知する実証実験などもおこなっているALSOK。






実証実験の様子。道に迷い辺りを見渡している、体調が悪くしゃがみこんでいる人などを検知する。

今回は、レッジが主催した「THE AI 2018」にもご登壇いただいた干場さんに、「警備におけるAIの活用」をテーマにお話を伺いました。

干場 久仁雄
ALSOK / 営業総括部 次長。
2010年にALSOKに入社し、ユーザー企業の立場から情報通信技術の利活用を推進中。オープンイノベーション、スタートアップ支援も担当する。

監視カメラの映像をディープラーニングで解析し、異常を察知

――ALSOKでは、具体的にどういった技術を使われているのでしょうか?

――干場
「映像をディープラーニングで解析し、助けを求めている人や不審者を検出。メールで警備員に送るということをしています。」

つまりは、警備員の「目」が増えたようなもの。近くにいる警備員がすぐに駆けつけられる体制を整えれば、かなり安心ですね。ディープラーニングを利用するようになったきっかけとは何でしょうか?

――干場
「じつは昔からALSOKは画像認識の研究は進めていました。シンプルな検出はできていたのですが、ここ2〜3年でディープラーニングの研究が進み、精度としても頑健な検出ができるようになってきたことがきっかけですね。」

たしかに画像認識の研究はかなり盛り上がっていますよね。さらに、大量にデータを保有していたという点も、投資に踏み切れた理由のひとつだといいます。

――干場
「ALSOKは警備会社なので、映像データを預けてもらえる数少ない会社だったといえます。もともと監視カメラがクラウド型だったので、クラウド上に大量にデータを集約していました。何らかの事件や異常が起きたときのデータ。これを教師データとして活用しない手はありませんでした。」

ひとえに大量のデータといっても、正常な状態・異常な状態の両方が映像データで残っているのは相当貴重です。さらに、画像認識を長くやってきたということもあり、かなりのアドバンテージがあったわけですね。

ただの効率化ではない。AIが「警備」の価値を向上させる

――AIをサービスに組み込む上で意識したことはありますか?

――干場
「弊社のAI活用は、単なる工数削減ではありません。

ALSOKが提供している価値は、監視カメラではなく、『総合的な警備』です。警備の価値とは、何か起きたときに現場にいち早く駆けつけられるかどうか

つまり、スピードと正確さが重要になってくるのですが、人間だと疲れてしまうので、ずっとカメラ映像を集中して監視し続けるというのは不可能です。一方AIだと、疲れを知らないですし、瞬時に『異常かもしれない』ということをアラートしてくれます。」

なるほど……。AIを使うことで事業が提供する価値を向上させる。単なる効率化ではなく、必然性のあるAI活用ですね。

さらに意識した点としては、必ず人間が介在する、ということだそう。AIの検出結果にも、やはり間違えるものはあるので、すべてAI任せにはしないようにしているそうです。

これからAI活用したい企業へのアドバイス。個人情報への配慮や期待値調整など

――施設内カメラのデータをAIに解析させるという取り組みは、今後進みそうですよね。個人情報についての取り扱いについて気をつけるべきことはありますでしょうか?

――干場
「カメラ画像の活用に関しても、総務省・経済産業省主催のIoT推進コンソーシアムが出している『カメラ画像利活用ガイドブック』などで、ある程度の指針は整備されてきています。」

干場さんによると、個人情報の取り扱いについては、以下の取り組みを進めることで、地道に理解を得ることが重要だそう。

  • データを利用する目的を明らかにする。
  • カメラ画像を利用することを事前に周知させる。
  • 問い合わせ窓口を設置する。

カメラ映像をビジネスに使用する企業にとって、個人情報管理は重要な課題。社会からの理解を得るために、個人情報利用の透明性を担保することが重要なんですね。大変参考になりました。さすがは長年警備をおこなってきたALSOKです。

――現場からの反応や、期待値調整に関してはいかがでしたでしょうか?

――干場
「期待値調整は一番大事なポイントですよね。最初は『本当に使えるのか?』という疑いの声がありました。

社内でうまく浸透したキーワードは『人間が分からないことは、AIにも分からない。』というもの。あくまで形式知化されたことを代替できるものでしかない、ということを周知しました。」

いろんなAIプロジェクトをみていても、期待値調整に困っているところは多い印象。どうしても「AIはなんでもできる」というイメージがされがち。さらにトップダウンが多いので、現場との期待値コミュニケーションは重要ですよね。

――干場
「また、これからは発注者側もリテラシーを持たないといけないと思います。
時間をかければできあがる従来のシステム開発とは違うものなので、AIの特殊性についても理解しないといけません。AIの要である教師データを提供するのは私たち発注者側ですし、開発ベンダーとの密な連携も必須です。」

普通のシステム開発とちがうので、発注側と開発側に情報格差があるのは事実。とはいえ、ディープラーニングは多くの可能性をもっているので、「AIベンダーに任せたけど、精度が出なかったのでAIはもう諦める」で終わってしまうのはもったいないですよね。ALSOKではデータ集めや精査なども、自社で一部おこなったとのことでした。

ALSOKに見たAI活用の王道は、多方面の地道な努力

ALSOKがおこなっているのは、単なる効率化ではなく、事業価値の向上につなげるAI活用でした。その裏には地道なAIを浸透させる努力や、長年の画像認識への取り組み・個人情報管理の問題と向き合ってきた軌跡がありました。

2020年に向けた動きにも目が離せません。干場さん、ありがとうございました。