IoTはデバイスビジネスではない。IoTの専門家が語る「and factory beer bash#1」イベントレポート

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弊社CMO 中村が登壇したIoTイベント「and factory beer bash#1」が6月5日に開催されました。ホステルとスマートハウスをかけ合わせた事業を展開する、and factory主催のイベントです。

IoT、ホットな話題ですよね。スマートスピーカーやスマートハウスなどのIoT関連用語をよく耳にします。

しかし、

  • 家電がネットに繋がって、具体的にどう便利になるのか?
  • センサーで事足りるのでは?
  • IoTってビジネスになるのか?

といった疑問もあります。そこらへんの疑問をたっぷり聞けたイベントになりました。登壇者は下記の3名。

dotstudio株式会社 代表取締役 のびすけ氏
日本最大規模のIoTコミュニティ「IoTLT」や、JavaScript RoboticsコミュニティNodeBotsの主催、IoTバックエンドサービス Milkcocoaのエバンジェリストとしても活動中。

and factory株式会社 代表取締役社長 小原 崇幹氏
2011年株式会社docksを創業し、取締役に就任。その後、2014年and factory株式会社を設立し代表取締役社長に就任。

株式会社レッジ CMO 中村 健太
株式会社レッジのCMO。一般社団法人日本ディレクション協会の会長も務め、主な著書に「webディレクターの教科書」「webディレクション最新常識」など多数。

小学生がアプリ開発する時代、大人がプログラミングを諦めるのはナンセンス

最初に、エンジニアの教育事業をおこなっているのびすけさんがモノづくりのおもしろさや開発の壁について語りました。

――のびすけ
「IoTという言葉が流行っていて、モノづくりに興味をもっている人は多いんです。しかし、実際に開発を始めると難く感じ、挫折して離れていってしまう。それがすごくもったいないと思っていて。小学生がアプリ開発をしている時代に大人がプログラミングを諦めるなんてナンセンスですよね。」

「作ってみたい!」までは行かなくても「IoTおもしろそう」という段階の人には、IoTLTに参加してもらってモノづくりのモチベーションを高めてもらいたい、と話していました。

IoTLT
12名程度の登壇者が、自ら作ったプロダクトを発表するIoTの勉強会。

・長期間旅行にいっている間の自動水やり機
・急に来客が来ることになったときに外から操作できる「自動ファブリーズ」

といったユニークな発表もあるよう。IoTLTのイベントレポートページからはIoTへの熱気が伝わってきます。

――のびすけ
「将来的に、ほぼすべての人がモノづくりを楽しめるようになってほしいと思っています。みんながモノづくりをできるようになったら、自分が作りたいと思ったものをもっと楽しんで作れる状態にしたいです。」

「IoT」というと難しく聞こえてしまいがちですが「モノづくり」というとおもしろそうです。まずは、技術的な難しさを考えずに、モノづくりを楽しむ気持ちで取り組みたいですね。

「モノづくりおもしろそう!」「何かを作ってみたい!」と思っている方はIoTLT参加を検討してもいいかもしれません。

&AND HOSTELで作りたいのはシームレスな体験

&AND HOSTEL(アンドホステル)事業を行なっている小原さんのセッションでは、IoTによって解決したいことや実現したい体験についてお話を聞けました。

――小原
「我々が最初にIoTに取り組んだのはホステル事業で、&AND HOSTELという名前で福岡に1号店を作りました。

&AND HOSTELでは、受付でアンドロイド端末を受け取って、それが部屋の鍵になったり、室内の空調やテレビ、目覚まし、ドアなど、その端末ひとつですべてが管理できるようになっています。」

&AND HOSTELは、人の動きを予測し、モノを繋げることで、鍵を開けたら電気が自動的に点くなど、人が手を動かさなくてよい便利なものになっているよう。

――小原
「宿泊施設は宿帳を手書きで管理していたり、テクノロジーが全然介入していませんでした。そこに介入し、朝起きる時間を登録しておけば勝手に目覚ましが鳴って、テレビが自動的に点いて、エアコンが自動的に動作するという風に、宿泊体験をよりシームレスにしたいんです。」

宿泊施設を利用する場合、その土地に合わせた温度でエアコン設定などをする必要があり、これって結構面倒だったりします。IoTのネットワークが広まれば、どこの宿に泊まっても好きな室温情報などを一元管理でき、一番居心地の良い空間をどこでも作ることができるようになる……!

ある行動をきっかけに、デバイスが勝手に動いて求めている環境を作り上げてくれる時代。待ち遠しいですね。

IoTはデバイスビジネスではなくデータビジネス

ここから、3人のトークセッションに移ります。IoTビジネスの本質について深掘りされていました。

――中村
「モノづくりやIoTを楽しそうと思って、作る人が増えていくのはとても素晴らしいと思います。ただ、デバイスの色が強すぎて作って終わりの印象があるのですが、正直なところIoTは商売になるんでしょうか?」

――小原
「デバイス販売だけでIoT事業として成立するかというと、正直そういった会社は多くありません。成立している企業はIoTのプラットフォームで情報を一元管理し、いろいろなデバイスをコネクトする技術をOEM販売などしていたりします。」
――のびすけ
「中国などでは、デバイスやハードウェアがタダ同然で売られていて、これからはデバイスでの売上で儲けることはできなくなります。

IoTをビジネスの観点で見ると、本質はデバイスビジネスではないでしょう。」

IoTビジネスは、日本ではまだデバイスを売っている段階ですが、海外ではすでにデバイスを通したデータビジネスが始まっている状態とのこと。実際に中国ではMobikeのシェアサイクルの普及が進み、そうしたデバイスから大量にデータを取得しています。

――小原
「IoTのデータ活用はヘルスケア領域に親和性が高いです。今の家電は医療の電器になり、これからは『家電がなくなり、医電になる』と言われています。たとえば、洗濯機が毎日の洗濯物に付着している毛髪や皮脂などをバイオ分析し、健康状態がわかるようになったり。

日本でも、尿酸値を測れるようなトイレを作っているメーカーもあり、アウトレットモールなどの施設で利用されています。」

生活データを集めることができれば、行動が楽になるだけでなく、健康管理にも活かされる。&AND HOSTELでも、デバイス自体で稼ごうとするのではなく、

・デバイス同士を組み合わせることで何ができるか
・解決したい問題に対して、どのデバイスを組み合わせるか

といったことを常に考えて運営しているんだとか。IoTは、モノがネットに繋がることによって起こりうる価値を2次3次波及させて、どう活用するかが肝要なんですね。リアルデータの活用方法って、こうして改めて考えると無限に思えます……!

IoT領域でのエンジニアリングに差はない

IoT業界で活躍する人材についても話題に上がっていました。

――中村
「IoT業界に求められる人材はやっぱりエンジニアが多いんでしょうか?」

――のびすけ
「IoTLTには主婦の方などもいるんですが、そういったプログラミングに携わってこなかった人たちの方が鋭い感覚を持っています。

技術面の教育は前提ですが、そういった方たちがストレートに『なんでこれはこんな風にならないの?』『こういう風にしたいからやってみたい!』っていう人に『じゃあ一緒にやってみようよ!』というと、すごく化けそうだと思っています。」

――小原
「IoT業界ができたばかりなので、エンジニアリング力にまだまだ差はありません。IoTの有識者会議などの場でも、だいたい『まだまだIoTは可能性あるね!』『いろんなことができるね!』という話で終わるんです。

だから、とにかく打席に立つ回数を増やすことが大事で、何度も打席に立って失敗を繰り返すことで、結果が出るんだと思います。」

たとえば、清掃員がデバイスを揺らしてしまい、現地では操作できたものが帰ってきたら操作できない。このような場合、技術に精通していても原因が分からないケースがあるとか。

IoTのリアルとつながるからこその問題もあり、だからこそエンジニアリングに精通しているかどうかが強みとなりえないのは、業界としての大きな可能性でもありますね。

――のびすけ
「エンジニアリング力は、正攻法のチュートリアルをやれることだけでなく、正攻法で失敗したときに何が起きているのか、どうすれば解決するのかなどの勘所をつかめること。そうなるには「何度も打席に立ち、失敗から何かを学ぶこと」だと思います。」

有識者から見ても、IoTの全容は見えておらず、みんなに差がない状況とのことでした。確固たる手法がないからこそ、ビジネス人材、エンジニア人材、共にトライし続けることが大切なんですね。

3人の話から見えたIoTビジネスの可能性と本質

中国などの事例を見ても、海外ではすでにリアルとバーチャルの融合が起こっていることを感じますが、一方で、日本ではまだプレイヤーが少ないブルーオーシャンでもあります。

IoTLTなどのイベントに参加することで、一度打席に立ってみることから始めてもいいのかも知れません。

未開拓の領域では、いかに早く行動を起こすかが重要。まだまだ盛り上がるIoT領域、引き続き要注目です。