収入が16倍に? AIの学習データラベル付け作業がウガンダ難民を救うかもしれない

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国連の難民保護機関UNHCRによると、世界の難民の数は2017年の時点で6850万人に上り、今この瞬間も、紛争によって元いた国を追われる人は増え続けています。

中でも「世界でもっとも難民受け入れに寛容な国」といわれているウガンダでは、近年の難民・難民申請者が140万人を超え(2018年3月時点)、さらなる受け入れ体制の整備が必要となっています。

そんな中、難民がAIの学習データのラベル付け作業をおこない、生活を立て直す取り組みがウガンダでおこなわれています。

ウガンダ難民が単純労働によって得られる1日当たりの平均収入1.25ドルの16倍の収入を得ることができるそう。どういうことなのか見ていきましょう。

スマホアプリで学習データのラベル付け。難民の収入が16倍に

難民の数は増え続けている。出典:UNHCR

家族や友人と離ればなれになった難民が再開できるよう支援する非営利団体「REFUNITE」。この非営利団体が開発したのが、学習データをラベル付けすることでお金を稼ぐことができるアプリ「LevelApp」です。

LevelAppを使うことで、スマートフォンで誰でも簡単に学習データのラベル付け作業ができるといいます。

現在、LevelAppは5,000人のウガンダ難民を対象に試験導入されており「LevelAppを通じて難民は一日に20ドルを手に入れることができる」とREFUNITEの共同議長、クリス・ミッケーセンは語っています。

つまり、収入を平均1.25ドルの16倍に増やせることに。新たに得た収入を家畜の購入や、医療、教育へあてることが可能になります。

また、単純労働ではなくデジタルスキルで安定した収入を得ることで、援助への依存を減らし、「援助に頼る必要がなくなった」という尊厳の回復にもつながります。難民の生活の立て直しに良い影響を及ぼすでしょう。

現在、試験導入の対象者は5,000人ですが、2年以内に最大2万5,000人のウガンダ難民へ支援を拡大する考えとREFUNITEは発表しています。

AI開発における学習データのラベル付けの重要性

AI開発において、学習データのラベル付けは「アノテーション」と呼ばれ、とても重要な作業。

AIを学習させるためには正解とラベルの付いたデータで学習させる必要があります(教師あり学習の場合)。たとえば、学習データが画像であれば、一つひとつの画像に対して「これは犬」「これは猫」などの正解ラベルを付与していきます。

手作業で精密さを必要とし、かつ大量のデータを学習させる必要があるため、ラベル付けには膨大な工数がかかります。企業が内製でAI開発に取り組もうとするとラベル付け作業は必須となり、人員が足りないケースも。

一方で、ラベル付けにはAIに関する特別な知識は必要なく、誰にでもアクセス可能な仕事とも言えます。

AI開発サイドとしては工数のかかるラベル付け作業を難民に任せることができ、難民にとっても現在よりも高い賃金で働くことができる。一方的ではない、Win-Winの支援策と言えるでしょう。

AI開発と難民支援は両立するか?

日本では、ABEJAがアノテーション単体でサービスを提供していたり、トランスコスモスがアノテーションセンターをベトナムに開設するなどして人員を確保していたりしています。

一方で、そうしたアノテーションサービスはラベルの質の担保に大きな労力を割いているのも事実。現時点では、このスキームでどのようにラベルの質を担保するのか不明です。

しかし、このスキームが広まれば、企業のAI開発を加速させ、難民の自立支援も両立する大きな可能性を秘めており、今後のREFUNITEの動向にも注目です。