青森県庁では人工知能が会議録作成を手伝う 導入の決め手は「業務改善の実感しやすさ」

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画像出典:Pixabay

株式会社イグアスは2020年1月、同社が販売するクラウド型AI会議録作成支援ソリューション「AI Minutes for Enterprise」(以下、AIM)が青森県庁に2019年11月から試験導入されていると発表した。

AI会議録のAIMでは、IBM WatsonのSpeech to Textの機能により自然言語を処理し、マイクを通じて話者の言葉をリアルタイムにテキスト化できる。さらに、編集クライアントによって、文字起こしされた原稿を複数人で編集可能なのも特徴。これらの機能を使えば、会議録の作成に費やしていた時間を大幅に削減可能だ。


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今回、青森県庁の行政経営管理課課長・宇野武氏、行政改革推進グループグループマネージャー・副参事 八木靖弘氏のふたりに、青森県庁がAI会議録を試験導入した理由から、実際に使ってみた感想などを聞いた。
※両氏の役職などについては取材を実施した2020年3月当時のもの。また、取材はオンラインビデオ会議ツールを利用している。

1時間の会議でも会議録の作成には5,6時間かかっていた

青森県庁でも民間企業と同様に、単純かつ時間のかかる業務の改善策を考えていた。そこで、改善対象のひとつとして挙がったのが「会議録の作成業務」だ。

これまで、青森県庁では職員……つまりは人間が会議録を作成していた。しかし、会議録作成業務は単純作業にもかかわらず、長い時間を要する。青森県庁では、1時間の会議なら、その会議録を作るのに5,6時間はかかっていたそうだ。

これを踏まえて目を付けたのは、今回試験導入に至ったAI会議録なのである。

AI会議録を使えば、単純作業に費やしていた時間を有効活用できる。つまり、人にしかできないサービスや事業に注力できる、といった付加価値ももたらせると考えたのだ。

画像は青森県の公式サイトより

試しに使ったら、すぐにAI会議録の使い勝手の良さを実感した

青森県庁ではICTを業務改革に導入しているが、今回試験導入したAIMのような製品の導入は初めてだった。そのため、どのような流れで導入し、どのように使えばいいかサポートしてくれる存在が必要だった。

青森県には、株式会社吉田システムというITベンダーがあったため、AIMを販売する株式会社イグアスとともにサポートしてくれた。本件取材時も青森県庁のふたりは「環境に恵まれた」と言うほど、導入の流れから実装までサポートしてくれたそうだ。

そして何より導入前に「お試しできた」というのもAIM試験導入に至る大きなポイントだったという。そもそも、どれくらい言葉を認識するのか実際に使わないとわからない、カギを握るのはここだった。

青森県庁の担当者が実際にAIMを試してみたところ、リアルタイムで文字に変換され、しかもその認識精度が非常に高いことを目の当たりにした。くわえて「学習の容易さ」から今後の使い勝手の良さも実感した。

青森県庁での会議では、医療などをはじめ、専門用語を使うことが多い。そのため、専門用語をAI会議録に認識させるには単語の学習が必要だった。

AI会議録や議事録の製品自体はいくつかの企業が取り扱っているが、なかには単語をひとつひとつ登録しなければ学習できない製品もある。これでは学習させることに時間と費用を費やしてしまう。その反面、AIMは文書テキストをコピー&ペーストするだけで簡単に学習させることができるのだ。

文書をそのまま使えるので、専門用語を使った過去の議事録や会議録などの資料を読み込ませるだけで学習作業が可能だ。青森県庁では、事前に過去の会議録などのデータから学習させている。

9割程度の認識精度 「会議録」以外での活用も検討

文字を起こすAIであれば、音声の認識精度も問われる。青森県庁で使ったところ、あくまでも感覚値ではあるが、9割程度は認識できているそうだ。

AIMを使った青森県庁での会議録作成は、次のようになっている。
1、会議中にAIMがリアルタイムに文字起こしをする
2、会議後に会議録の作成担当者がAIMによる文字起こしした原稿を編集する
3、編集作業が終われば会議録のフォーマットに落とし込んで完成となる

編集にかかる時間は会議の内容や会議録によって異なるが、従来の会議録の作成業務にくらべて、AIMを活用することで作業時間は半分程度になったとのことだ。

会議録の作成業務を大幅に短縮でき、なおかつ会議録というわかりやすい領域での業務効率化を実現したため、現在では、AIMの導入に向けた予算も確保するに至った。

また、取材では「会議録の作成以外での使い道も検討している」と話してくれた。

たとえば、県民を対象としたセミナーでは、講演時にAIMを使ってリアルタイムで文字起こし中のテキストをスクリーンに投影することで、参加者の理解度を深めることに貢献できそうだと考えている。

さらには、リアルタイムでの文字起こしする機能を活用すれば、ろう学校での先生の話を、耳が不自由な生徒へのサポートとしても利用できると言う。

AIMには音声を単純に文字起こしするだけでなく、翻訳機能も備わっている。そのため、青森県庁では海外の方との対応にもAIMを使うことも想定している。青森県には観光客をはじめ海外の人も多く来県するため、文字起こしだけでなく翻訳機能もあることは、新たな使い道につながる可能性を秘めているそうだ。

AIMでの同時翻訳イメージ

これからは県庁として活用事例を増やしていく段階

青森県庁が考えるAIMの使い道は、先に記載したように会議録の作成業務以外にもさまざまある。もちろん、使い方次第では多くの業務などに対応できると思うが、青森県庁としては「AI会議録の精度をさらに高めていきたい」としている。

実際、会議録作成においてAIMが担うのは文字起こしをする場面だ。文字起こしした原稿が会議録として完成しているわけではない。さらには認識精度も100%には届いていない。しかし、後者に関しては、使い続けることでAIM自体が専門用語を幅広く学習するため、精度の向上は期待できる。

青森県庁としても、AIMのように業務効率化を簡単に実感でき、多くの業務で使えそうなICT先進技術は今後も取り入れていく方針だ。

とはいえ、使用感や具体的な活用シーン、どういう人が使えるか、メンテナンスはどうすればいいのか、運用ルールをどうするか、など越えるべきハードルは少なくない。そういった課題を明確にする意味でも、青森県庁にとってAIMは“わかりやすいAI”だったのだ。

今後は青森県庁全体にAIMによる会議録作成を浸透させ、県庁としての活用事例を増やしていく。そしてゆくゆくは、AIをはじめとするICTの庁内への横展開を考えている。

青森県庁として活用事例を増やすことで、多くの自治体や企業に対して好影響を与えられそうだ。

AIに任せられる業務はAIを使い、人間は人間にしかできないサービスに注力できる体制を作る。青森県庁でのAI活用から、AIと人間の協力による新たな働き方が具体的に見えてきた。