元Google台湾トップと国立清華大学 准教授が語る「5G時代にAIで実現されるキラーアプリケーションとは」

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5Gの社会実装が進み始め、多くの企業が5G活用のキラーアプリケーションを模索している。キラーアプリケーションとは、新たに誕生した仕組みを爆発的に普及させるほどの魅力を持ったソフトウェアのことを指す。つまり、多くの企業が5Gの利点を最大限に生かす魅力的なソフトウェアのシードを模索している状況にあるということだ。

5Gは、従来の通信規格である4Gと比べ、大容量の通信が高速で可能な上、データ通信に遅延が少なく、多数のデバイスに同時接続できるという利点を持っている。だが、現時点では、日本における5Gの活用に関する先行事例はそれほど多くない。

そこで、5Gの社会実装により生まれる可能性について、台湾を代表するテックベンチャーであるAppierのChief AI Scientist ミン・スン氏と元Google台湾のトップを務め、現在Appierの取締役など、スタートアップの応援者として活躍するリー・フェン・チェン氏へとインタビューを実施した。

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通信規格の進化により今の社会が作られた

チェン氏がまず語ったのは、通信規格の進化とともに私たちの生活がどのように変わったかということだ。

「私がGoogleを台湾に持ち込んだばかりのときの通信規格は3Gでした。3Gという通信規格は、インターネットにアクセスできるという状態を当たり前の状態へと変えるだけの力がありました。3Gが社会実装されてから20年ほどで世界の全人口の半数がインターネットにアクセスできるようになり、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアがキラーアプリケーションとしての立ち位置を確立しました」

インターネット回線は網羅的に敷かれたことにより、インターネットユーザーが爆発的に増加したことで、ユーザー同士が交流するコミュニティへのニーズが高まっていった。その結果、多くのユーザーを抱えるソーシャルメディアは21世紀初頭における一大産業として大きく発展したということだ。

「3Gのあと、4Gが普及していくわけですが、このタイミングでキラーアプリケーションとして台頭したのが動画のストリーミングサービスです。動画という膨大な情報量を持つデータの性質上、ある程度高速なインターネット規格が必要になるため、3G回線では動画ストリーミングサービスをストレスなく楽しませることは難しかったわけですが、4Gの普及により、シームレスなストリーミング環境が整ったのです」

TikTokやYouTubeといったサービスが爆発的に普及した背景には、4G回線を介し、モバイルデバイスでどこからでもサービスを楽しむことができるようになったという変化があるという。

COVID-19により、発展するキラーアプリケーション

では、5Gの時代にキラーアプリケーションになりうるサービスは何なのだろうか。

チェン氏によると、COVID-19の影響により急速に広がっている非接触経済がひとつの鍵だという。

「COVID-19への感染拡大により、人やモノへの接触を減らすという意識が大きくなっています。事実、消費活動や教育、ビジネスコミュニケーションなどがオンラインで進められるようになりました。現状は据え置き型のPCなどを中心に利用者が増えていますが、これらの仕組みが5Gの社会実装によりモバイルデバイスへと移行していくことで、キラーアプリケーションへと変貌を遂げるのではないかと考えています。特に、ビジネスコミュニケーションはPCで実施するケースが多いものの、リモートワークが当たり前の社会では、仕事場をWi-Fiがある場所を前提条件に選ぶのではなく、自分の好きな場所で仕事をすることになってもおかしくありません。5Gが社会実装されれば、通信速度や回線同時接続上限が爆発的に向上するため、場所を選ぶ自由が現実になると思います」

非接触経済を構成する仕組みには、遠隔診療や、フードデリバリー、電子支払いなど、ほかにも多くの現在進行系で成長を続けている仕組みが含まれている。リーフェンチェン氏は、これらの仕組みが5Gの恩恵でよりシームレスなかたちへと変貌するのではないかという。

5G×AIが生み出すキラーアプリケーション

5G時代のキラーアプリケーションがCOVID-19とともに発展を続ける非接触経済の中から生まれるのではないかという意見がある一方で、ミン・スン氏は5Gという土台の上に、AIが実装されることで生まれる経験経済に可能性があるのではないかと語る。

「経験経済とは、商品やサービスが持つ機能的価値や利点だけを提供するのではなく、ユーザーの完成や情緒に語りかける経験を提供する事により生まれる付加価値を追求すべきという経済概念です。インターネットの普及により、私たちはオンライン上で様々な経験ができるようになりました。そして、サービスを提供する企業はユーザーがどのようなサービスをオンライン上で利用し、どれほどの頻度でどれくらいの時間体験しているかというデータが取得し分析することで、体験の質の向上につなげてきました。

今後、5Gが社会実装されることにより、ユーザーの位置情報やデバイス情報は、経験を分析するための判断材料としてより重要視されるようになってくるでしょう」

新たなユーザーデータが分析対象となることにより、企業はより大きな経験的価値を生み出すための事業を改善していくようになる、とミン・スン氏は続ける。

「そのため、ユーザーが特定の体験を得たい場所(風景)さえもオンライン上で再現することで、より経験の価値を向上させる動きが起きうると考えています。

従来のオンラインテキストメディアでも同等の情報量を発信しているにも関わらず、コンピュータビジョン技術を用いて構築されたVR空間上で実施される仮想の展示会へとユーザーは向かうのです。

COVID-19への感染が拡大し続けているため、不要不急の外出を避けている人は多いはずです。外出したくてもできない人たちが増えている中、観光地を仮想空間上に再現するニーズは高まっています。5Gの社会実装とAI活用がうまくハマれば、現実空間を高精度で仮想空間にクローンすることも夢ではありません」

ミン・スン氏は、経験が最も大きな価値を持っている観光がオンラインで実施できるようになれば、5G時代のキラーアプリケーションとなりえると語った。

5G時代にイノベーションを生み出すために

今回のインタビューでは、上記のほかに、自動運転機能やスマートフォンのAIアシスタント機能、ライブストリーミングやクラウドゲーミングがキラーアプリケーションの最先鋒として挙げられた。

だが、5Gの社会実装自体はまだ、一部の国、地域でしか進んでいないため、可能性の種はどんな業界にもあるはずだと両氏はいう。

「今まで、キラーアプリケーションと認識されるに至ったサービスは、新鮮なアイデアを持ったスタートアップから生まれました。ですが、既存の企業からキラーアプリケーションが生まれないというわけではないはずです。重要なのは、新たな変化にどう適応しなから、イノベーションのシードを育て上げるかを考え続けることです。今まで持っている固定観念を崩しながら、嗜好を続けることが、5G時代にビジネスを成長させるためには必要なのではないでしょうか」

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