2023年5月8日、日本芸能従事者協会は、AI技術の進歩により芸術・芸能の担い手が職を失う可能性が高まることを懸念し、権利を守るための法整備が必要であると訴える会見を開催した。
同協会の代表理事を務める俳優の森崎めぐみ氏は「文化芸術分野に携わる人たちの活動や権利を保護できるルール作りが必要だ」と述べ、国に対して、AIを使ったコンテンツ生成などの際には、肖像や声、演技に関する権利なども法律で明文化したうえで、特別に権利を保護することや、どのようなデータをもとにして生成したのかを開示する義務、クリエイターへの対価の支払い義務などを求める要望書を提出したことを明らかにした。
佐藤大和弁護士は、実際に演じなくても、その肖像や声を使って「自動的に映画、ドラマ、歌唱、アニメなども生成される可能性」について触れた。実演家の肖像や声、動きなどに関する権利を法律で明文化し、特別な保護を与えるとともに、AIが生成に使ったデータについてクリエイターらに適切な対価を還元するための法整備が必要だと主張した。
会見ではさらに、映画や音楽、美術など文化芸術の各分野からの意見が紹介された。「数時間ですべての音域、声色をスキャンされて、おおよその表現や演技もできるように合成される(声優)」「自分の作品が知らない間にAIに取り込まれ、再利用されていくことに憤りを感じる。アーティストの著作権が侵害される無法地帯を作ってしまうと危惧している(美術家)」などの懸念の声が挙げられた。また、オンラインで会見に出席したスタントマンの佐藤憲氏は「危険だからといってAIばかり使われることになると、技術も廃れ、継承もできなくなってしまう」と訴えた。
音楽業界でも、AI生成楽曲と著作権に関する議論が活発化しており、日本音楽著作権協会(JASRAC)では3月にオンラインでAI生成楽曲と著作権についてのシンポジウムが開催されている。