企業はAIといかに向き合うべきか?「AI TALK NIGHT vol.4」Microsoft × アロバ × レッジぶっちゃけトーク

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8月27日にレッジは日本マイクロソフト社にご協力いただき、AI TALK NIGHT vol.4を『マイクロソフトと考えるAIのビジネス活用ロードマップ』と題して開催しました。

AI TALK NIGHT
AIを導入しようとしている企業が持つ、

・「やることは決まっている」けれど「できるかわからない」
・「できるらしい」けれど「どこに気を付けるべきかわからない」
・「できるらしい」けれど「なにが最適であるのかわからない」

などの悩みを、AIのスペシャリストであるゲストに直接ぶつけられるトークイベント。レッジ主催で定期開催しています。

これまでのイベントレポートは下記から。

キカガク吉崎氏を招いた「AI TALK NIGHT vol.1 “これってAIでできますか?”」イベントレポート
「AI TALK NIGHT vol.2」イベントレポート ── 電通が語ったAIプロジェクトの秘訣は“小さな成功の積み重ね”
「結局、AIはやったかやらなかったかが全て」ソニー小林氏が語ったAI TALK NIGHT vol.3 イベントレポート

本記事では、盛り上がったトークセッションの様子をお届けします。登壇したのは以下の4名。果たしてどんなトークが繰り広げられたのでしょうか……?

(左)横井 羽衣子 氏 
日本マイクロソフト株式会社 Azure AI シニアプロダクトマネージャー
文学部哲学科卒元 SE。2001年Windowsのソースコード見たさにマイクロソフトに転職。デベロッパーエリア中心にカーネルからクラウドまで一通り経験後、マーケティングに転身。IT知識がない人も含め、誰もがAIを使いこなせる世界をめざしている。
(右)内藤 秀治郎 氏
株式会社アロバ 代表取締役社長
青山学院大学卒業後、米国ボストン大学に進学。帰国後アクセンチュアに入社。その後、2004年にシンプロメンテ株式会社の専務取締役、2007年に代表取締役社長に就任。2013年、同社を東証マザーズに上場したのちの2016年に退任。2017年当社代表取締役社長に就任し現在に至る。

(左)飯野 希
株式会社レッジ 事業統括
2016年3月に株式会社ビットエーへ入社。AI特化型メディア「BITAデジマラボ(現Ledge.ai)」を立ち上げ、編集長に就任。後にメディアを軸としたAIコンサル事業の立ち上げを行う。2017年10月に、BITAデジマラボの部隊を株式会社レッジとして子会社化。今はレッジの執行役員として、日々奮闘中。
(右)中村 健太
株式会社レッジ CMO
webコンサルとして数多くの実績を持つ株式会社レッジのCMO。2014年より一般社団法人日本ディレクション協会の会長を務める。主な著書に「webディレクターの教科書」「webディレクション最新常識」など多数。レッジではAIコンサルティング事業のプロデューサー、企画プロデュースのマネジャーとして大小数々のAIプロジェクトを成功に導いている。

技術と向き合うには課題を明確にすること

――飯野
「はじめのトピックは『企業として技術にどう向き合うべきか』ということなのですが、この点横井さんいかがでしょうか?」
――横井
「はじめからふわっとして答えにくいですね(笑)私は、技術は現実の模倣であると思っています。料理でたとえると、調理器具って鍋だったり、包丁だったり、ピーラーだったり、作る料理によっていろいろありますよね。技術に向き合うのも大事ですが、その前に “誰にどんな形のものを食べてほしいのか” を考えることに尽きると思います。」
――内藤
「僕はそもそも技術に向き合う、というのがちょっと違うと思っていて。あくまでビジネスの課題に向き合って、その解決手段として技術があると思うんですよね。極端な話、ITを使わなくてもハッピーになれるならいいんです。技術を活かそう、という視点で入ると絶対にスタックしてしまうんですよね。」

AIを使おうという企業も、よくよく話を聞いてみると、実はエクセルで済んでしまう、という “AIじゃなくてもいい” 案件は良く聞きます。AIは目的ではなく手段だということは再認識する必要があります。

――内藤
「弊社のサービス『アロバビューコーロ』は、解析にMicrosoft AzureのCognitive Servicesの中のFace APIEmotion APIを使っています。これらは画像解析のAPIなのですが、そもそも当社は、映像を扱うのが主な事業だったので、画像分野はあまり扱っていなかったんです。

でもなんとかこの技術を使ってみたい。そこでウチのCTOが、『じゃあ映像から画像を抜き出せばいいんじゃないか』と言い出して。」


株式会社アロバ 代表取締役社長 内藤 秀治郎 氏

そこで映像から画像を抜き出す部分を当社で開発し、上手くこれらAPIと組み合わせてサービスを創り出したそうです。技術で何をどうするかではなく、ビジネスで何をしたいのか、ビジネスドリブンで結果を出せた好例ですね。

――飯野
「AIで何かやれ、と言われるケースも多々ありそうですが、この点、中村はどうでしょうか?」
――中村
「そうですね。レッジでは半分くらいの案件が、 “AIで何かしなきゃ” 的なニーズがあって来る案件が多いです。

そこで重要なのは“課題は大きめに取る”ことだと思います。小さな課題を解決しよう、だと取れるデータや使えるツールも限られてきますが、大きく取ればその分、組み合わせを考える余地が生まれます。

小さく取ってすべてを自分たちでやろうとすると、技術の巨大化、高度化の罠にはまる気がしますね。」

一発で結果を出そうとするのはPoCではない

AI TALK NIGHTでは、セッション中の質疑応答も積極的に受け付けます。ここではPoCについての質問がありました。

――質問者
「現在だとAIの実証実験は多いが、実業務に応用できていないケースが多いと思っています。どんな原因があると思われますか?」
――中村
「確かに、精度的にいいところまで行くけど、そのままだとコストカットにならないし、事業に還元されない状況は多いですよね。」
――内藤
「PoCっていつの間にかすごいハードルが高くなることが多いんです。正直、最初からそんな求められても、という気はしますが……。上層部が求めていた結果が出なかったという理由でストップする案件は多いですね。

一発で結果を出そうとするのはPoCではありません。いきなり高い精度を求めると絶対に失敗します。現時点では人間以上の精度は出ないと割り切って思っておいたほうがいいです。」

――飯野
「期待値調整なども重要な観点だと思うんですが、どう認識合わせしていますか? 行き過ぎると弱々しく見られてしまうというのもあるんですが……。」
――内藤
「弊社では100%の精度を求めているなら、その時点でお断りしています。どこまで許容するかという話で。たとえばカメラであれば、背が高い人のうしろに背が低い人がいたらどう考えても撮れませんよね。その場合は撮れるような動線を作るなど、AI以外の工夫をしないといけません。」
――飯野
「社内でもそういうケースはありますよね。上司に対して100%は出ないです、と伝える場面などはあると思います。横井さんは実運用に乗らない理由は何だと考えられていますか?」

日本マイクロソフト株式会社 Azure AI シニアプロダクトマネージャー 横井 羽衣子 氏
――横井
社内で技術に対する評価が低いんじゃないでしょうか。課題分解ができないため、完成形が漠然としてしまう。故に高い期待値を持ってしまい、初期コストが思ったよりかかるね、となってしまう。なんで高いと思うのか、すり合わせがきちんとできていないからだと思います。

以前、弊社のイベントde:codeにゑびやさんがいらっしゃったときに、ウェイトレスさんに『予測が外れたらどうするの?』と聞いてみたんです。そしたら、入店率に当てを付けたいだけなので、むしろ外れたときになぜ外れたのか、異常値を検証するほうが重要と仰っていました。そこが分かれば改善できるので。求めすぎないことが重要ですね。」

――飯野
「精度は求めない。そもそも100%じゃないとほんとにダメなんだっけ?ということを考えるのが重要なんですね。ありがとうございます。」

導入の際の抵抗勢力の話は聞く?聞かない?

――飯野
「実際に導入する際に、既存のオペレーションにAIを組み込む際に、部署内などで抵抗勢力が生まれたりすると思うんですが、それに対してどのように対処されていますか?」
――内藤
「抵抗勢力は必ず出てきますが、私はあまりまともには話聞かないですね。」
――飯野
「かっこいいですね(笑)」
――内藤
「どこの部署が抵抗勢力かでまったく違ってくると思うんです。大抵はただ新しいことをやりたくないだけ。一昔前の投資に比べたら全然少ないので、取り組んでみてダメだったらやめればいい。それが言えなかったら絶対進みませんよ。

抵抗勢力の中にも、よく聞けば課題感を感じている人がいます。そういう人を巻き込むことを “エージェントを見つける” と言ったりするんですが、それですね。ちょっとした小さな成功事例を『俺らすごいことやってるんだぜ!』って盛り上げること。アウトプットが明確であれば、そういう働きかけにもチャレンジすればいいと思います。」


株式会社レッジCMO 中村 健太
――中村
「この話の順番、しんどいですね(笑) 経験から言うと、ちゃんと上長の承認を取ったにも関わらず、抵抗勢力が出てきてドカーンとなったケースはあります(笑) そのときは、担当、中村とエンジニアだけの小さいタスクフォースを作って、弊社のメディアで記事を書いたりもして、中の人間を盛り上げました。

抵抗する人たちは、導入すると “目に見えないタスクが増えるような気がしている” んだと思います。『あれとかこれとかどうすんの?』と想像するのが辛いんです。

なので対処法としては、ありとあらゆるタスクを洗い出してしまうこと。僕がやったのは、先方が契約しているIT会社と電話して交渉して、先方のAPIの仕様を全部聞いて、このツールでこういうデータが足りないならこういうタスクが出てきて、これくらいの予算でこれくらいの工数でいける、とすべてを洗い出しました。

抵抗勢力が何を恐れるのかを考えると、推進する側の仕事も見えてくると思います。」

3つのフェーズを循環させるのがAI導入の秘訣


株式会社レッジ 事業統括 飯野 希
――飯野
「AI導入する際の課題として、予算感がわからない、みたいな話もあると思います。こちらは内藤さんどうですか?」
――内藤
「アロバビューコーロはお安く導入できます(笑) というのは置いておいて、予算云々の前に導入時に大事な3つのフェーズがあって、この3つをサイクルのようにぐるぐる回していく感じだと思っていて。

  • 取れていないデータを取るフェーズ
  • 取ったデータを見える化するフェーズ
  • 可視化されたデータをどう使うのか考えてアクションするフェーズ

    特に3が重要で、順番はあまり関係なく、3が明確で1、2をやる、みたいなケースは全然OKだと思います。

    ゑびやさんのケースはまさにそれで、最初は店舗の前を通る人すべての属性を取りたいというご要望だったんです。しかし、プライバシーの問題などもあるので難しかった。そこでそうお伝えしたところ、じゃあ人数が分かればいいと。そこで人数カウントをアロバビューコーロ以外のカメラで行い、店舗に入ってきた時点でコーロで属性を取るスタイルにしたんです。取りたいデータが何なのか、ゑびやさんは明確なので、あれもこれもやらないで済みました。

    あと、経営者と現場で見たいデータは違うということも考慮すべき点です。経営者が見たいデータは現場のトレンドであることが多く、現場の人はどのくらいお客さんが来るかというデータからシフトや在庫、発注を把握したい場合が多い。なんとなくデータを取る、というのはやめたほうがいいです。まずはデータを取る、でもいいんですが、誰が何に使うのかはできるだけ明確にしておいたほうがいい。予算感はこれで変わってきますから。」

  • ――中村
    「予算感の話でいうと、AIのモデルを買うためのお金と思ってしまうのは、ありがちですがよくないですね。購入する費用と考えるとそれは高く見えるでしょう。ですが事業への投資だと考えれば決して高くはない。

    『とりあえず買っておけばいい』よりは、ほかの投資よりも回収効率が高いのでは?どうなんだろう?って観点も必要になる気はしますね。」

    技術ではなくビジネスに向き合う、AIを何に使うのか決める、AIに求めすぎないなど、いろいろと示唆に富んだトークセッションとなりました。

    次回のAI TALK NIGHTの詳細はLedge.aiにて追って紹介します。楽しみにお待ち下さい!