自分が誰かはゲノムに聞け。AWAKENSのゲノム版GoogleMaps『GENOMIC EXPLORER™』めちゃおもしろい

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最近『ゲノム』というワードが、AIと同じくらい注目されています。徐々にいろいろなメディアでも聞くようになってきてました。

でも、実際に何ができてどんな未来が待っているのか? ってのがあまりわからなくないですか?(まるでAIが盛り上がり始めたときと同じ流れですね)。

ってことで、日本発のゲノムスタートアップAWAKENSの高野さんに、いま流行ってるゲノムってなんなの?何ができるの?というのをズカズカ聞いてきました。AWAKENSは現在はサンフランシスコにオフィスを構え、資金調達も発表したばかりでノリに乗っているスタートアップです。

遠くない未来に、個々人が自らの全ゲノムデータを保有する時代がくる。そのときに、どういう生活が待っているのか?

ゲノムおもしれーーーーー! と感じる刺激的なインタビューになりました。

高野誠大
国際基督教大学大学院卒業後、社会にインパクトを生み出す起業家のコミュニティ型インキュベーションオフィスImpact HUB Tokyoの立上げに参画。その後、医療ベンチャーのエムスリーゲノムビジネスグループにてG-TACの立ち上げを経験。2017年、ゲノムの持つ可能性を一層広げるためにAWAKENS, Inc.を設立。


今回の撮影は、高野が立上げに参画していたImpact HUB Tokyo (AWAKENS日本支社も入居する起業家/スタートアップ向けのコミュニティ型シェアオフィス)で行いました。AWAKENSでも創業最初の半年間をStartup Residenceメンバーとしてサポートを受けていたそう。

ゲノムはエクセルデータだと考えればわかりやすい

――まず、そもそもゲノムって何? っていうところから伺わせてください。調べたんですがあまりわからなくって……

―高野
そうですよね、みなさんよくわからないと思います(笑)

ゲノムとは、いわば人間の設計データです。ゲノムからは病気のなりやすさ、薬の効きやすさ、不足しがちな栄養素、運動や体質、その人の思考性などの傾向の分析ができる可能性があるといわれています。

なんだか、わかったようなわかってないような……。DNAや遺伝子とゲノムの違いも理解できていなかったんですが、それらには厳密な違いがあるそう。

>> このあたり参照

つまりはゲノムを100%解析することができれば、その人についての「全て」がわかる可能性がある、といっても過言ではない、と。ただ、ここまで説明していただいても、まだピンときていない……

―高野
僕も最初はよくわからなかったので大丈夫です(笑)

これが一番しっくりくる説明だと個人的に思っているのが、ゲノムを「デジタルデータ」として捉える考え方です。、エクセルを思い浮かべると簡単です。

エクセルのA列の1行目から30億行目までA、T、G、C(からなる塩基配列)のテキストデータがずらっーと並んでいるとします。その横のB列には「この文字にはこんな意味があるよ」という解釈の表記がされている、というイメージですね。

なるほど。ちょっとずつ理解できてきた気もします。B列に書かれる情報としては、最初にあがっていたような、こういう薬が効きやすいとか、禿げやすいといった情報ですね。

このB列のデータベースについては、もちろん全ては解明されていないものの、研究によって少しずつ解明されているそう。〇〇個目のゲノムデータが△だったときには、その人にこういう傾向がある……という結果です。

理論上A列のデータは一回採ってしまえば、その人の人生で変わることはないそうなので、つまり自分のゲノムデータをもつということは「自分の取扱説明書」を得るようなもの。いやー、ワクワクします。

ゲノムデータ取得のコストはここ20年で3000万分の1に。だからこそゲノムは成長産業

――なんとなく概要は理解できました! ゲノムの話をよく聞くようになってきましたが、なんでいま盛り上がってきているんでしょうか?

―高野
ゲノムデータの取得のコストが大きく下がったこともひとつの要因ですね。15年前には1人あたりの全ゲノムデータを採取するのに、3000億円ぐらいかかっていたのですが、現在同じことが、10万円でできるレベルまでなってきているんですね。

さらに5年後までには1万円までに下がってくる見込みとなっています。

そんなに下がってきてるんですね……!

確かにこのぐらい金額が下がってきて、なおかつそのデータを持つことで自分にプラスとなるのであれば、一人ひとりが自分の全ゲノムデータを持っている世界も、そう遠くないうちに来るような気がします。僕も欲しい。

―高野
ゲノムって、90年代のインターネットのようなもんだと思うんですよね。PC、スマホといった関連デバイスがみるみる私生活に浸透してきましたが、ゲノムもまさに同じ道をたどるだろうと思います。

ゲノムを使ったサービスは、海外ではもうすでにいくつか出ているそう。現時点で代表的なものは医師を通じて病気予防に活用したり、ゲノムからわかる体質傾向に合わせた食事やフィットネスサービスなど。その他にも、スタートアップを中心に実験的なサービスも増えてきていて、例えば自分のゲノムをサービス側に提供することで、自分が好みに合わせたワインを購入できたり、自分の肌にあった化粧品を探し出せたり、自分の思考傾向に合わせたパーソナル学習方法を提案したり・・・といった感じ。なんという未来感。。。

まさに、究極のパーソナライズです。

ただ、まだまだ玉石混交な状態で、信頼性の高いサービスをちゃんと選べる環境をつくっていくこと、そしてユーザー自身がより高いリテラシーを持つことが重要なんだとか。

自分のゲノムから自分が何者か探しに行く『GENOMIC EXPLORER™』

――だいぶここまで長くなっちゃいましたが、ゲノムを使って御社が何をやられているのか教えてください。

―高野
さきほどお話させていただいた通り、みんなが自分自身のゲノムデータを持つ世界は遅かれ早かれくると思ってます。いままでの単純な遺伝子検査っていうものではなく、自分の100%の設計図データをもって生きるという世界がくるはずです。

現在でもゲノムデータを解析してくれる企業やサービスは、日本国内でも700社程あるらしいのですが、実際見ている情報は価格の問題や情報源の不足により、全ゲノムの0.03%程度とまだまだ少ないそう。

また、今の遺伝子検査は、どの企業で受けるかによって、結果が違うという問題があるんだとか。各社によって別々の限られた範囲で、別々のソースから解釈を加えようとすると差異が生じてしまう……それって困りますね。で、ユーザーにはそこが見えていない。

―高野
なので、従来のいわゆる遺伝子検査で送られてくるレポートで自分がどういう人間であるかを知るのではなく、自分のゲノムから、自分で自分の理解をするためにゲノムデータベースを探索する。そんなサービスを作っています。

何を信じるかは自分次第。自分で信頼したデータを受け入れる

といって見せてくれたのは『GENOMIC EXPLORER™』というサービス。コンセプトとしてはGoogle mapのゲノム版、とのことですが、ゲノムそのものから自分で自分の情報や傾向を発見していく、イメージとしてはサイエンス教育ツールのようなものになっています。

ユーザーが直感的にゲノムデータを理解できるようにゲノムデータをビジュアライゼーション。さらに、世界中のさまざまな論文データを集めて整理して、より透明性の高い分析ツールを提供しているんだとか。

ビジュアライゼーションの画面としてはこんな感じで、自分のゲノムデータがバーーーーーーっとはいってる一部に、Google mapのピンみたいなものが立っています。

そのピン一つひとつをクリックすると、世界中に散らばる論文情報を読み込み、そこにはどんな情報が書き込まれているのかを返します。なるほど、こうやって自分にどういった特徴がありそうかを自分から探しにいける。そんなサービスなんですね。こりゃ、面白い。

ピンからだけでなく、項目から自分の傾向について検索することもできるようになっています。特に、自分でエビデンスレベルや人種タイプでフィルターリングしながら解析結果を吟味することができます。自分のゲノムからわかる、自分のスポーツの傾向や性格の特性を探したい! というニーズも確かにありそうですもんね。
また、現時点ではあくまでゲノムのことをユーザーの人に理解してもらうことを目的にしているため、医療分野の項目は意図的に開示しないようにしているとのこと。今後は医療分野のパートナーと一緒に、医師を介した情報提供ができる仕組みも構築予定だとか。

今までの遺伝子検査サービスのように、一方的なレポーティングだけじゃなく、自分から情報にアクセスでき、それを信頼するかしないかも自分で決められる。なんとも画期的なサービスですよね。

ここのデータベースの大きさと、それぞれの根拠についての信頼度を出しているところがAWAKENSの強みのひとつなんだそう。Ph.D.保有者を含む10名超のデータベースチームの体制でしっかりと査読を行い、評価をつけています。また、スタートアップでありながら、そこのデータベースを作るところへの投資も惜しみなく行っているとのこと。なんだか、ワクワクする話ばかりですね。

自分のゲノムを持ち歩く時代で、どうやって生きていくか

―高野
ゲノムは決定論ではありません。多くの傾向は環境的な要因との結びつきで決まります。その統計的な傾向の情報を、どのように理解し、どのように活用するか。ユーザー、サービス事業者、それぞれが十分な理解と責任を持つことが不可欠です。

まだ未知の領域だからこそ、私達が重視しているのはユーザーのオーナーシップです。ユーザーを中心に考え、ユーザー自身が適切な情報とサービスを選び取ることができるエコシステムが必要と考えています。自分のゲノムの中から、知りたい情報を選ぶ、身の回りのサービスに活用するものを選ぶ、知りたくないものは誰も知らなくてすむように管理する。選択肢を広げつつも、選択しないという権利も互いが尊重していくことが重要です。

ゲノムって生まれたときから自分が持っている特性みたいなもので、なんだか不思議ですよね。生まれたときからある程度の向き不向きは設計されていて、しかもそれに抗うことはできないなんて、なんともネガティブにも受け取れてしまいます。

ただ、自分にどういった強みがあるのか、どういうところに気をつけて生きて行くべきなのかを知ることで、もっと人生の価値を高めて行くことも容易になるのかもしれません。

AIの進化もそうですが、ゲノムサービスの進化の方も、非常に楽しみです。

10年後20年後、どんな時代になっているのか。どんなサービスが出ていて、人間とどういう関わり方をしているのか。気になることだらけです。

高野さん、お忙しいところありがとうございました。


ゲノムデータを活用するための基本APIサービス『GENOME LINK™』も開発中

AWAKENSではサービス事業者に向け、サービス開発用ソフトウェアの開発も行っているそう。ゲノムデータを活用するための基本API、その名も『GENOME LINK™』。
ゲノムサービスは作りたいけど

  • ゲノムの解釈情報のデータベースを作るのに費用がかかる
  • セキュリティとかどうしたらいいんだろう
  • そもそもオペレーションもゼロからつくるの

そういったニーズが確実に出てくることを予期して、ゲノムのデータベース、セキュリティシステム、さらにゲノムデータを取得するためのオペレーションを内包したソフトウェアサービスをAWAKENSが提供。ゲノム部門、研究開発チームがなくてもゲノムを主としたサービスが作れるように、数千万円かかる初期開発の投資費用を数十万のソフトウェアサービスにスイッチさせる、そんなサービスになるそう。ユーザー目線ではPyPalのような手軽さで、自身のゲノムをサービスに投げれる、そんな仕組みを作っているそうです。
ここの話もめちゃくちゃ面白かったのですが、文章量の関係で割愛……。興味ある人は直接聞いてみてください。

>> GENOMIC EXPLORER™ (英語)
>> GENOME LINK