awoo Japanによるオードリー・タン台湾デジタル担当大臣インタビューの裏側 彼女の思考のメカニズムと文化的背景

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インタビューに応えるオードリー・タン台湾デジタル担当大臣とインタビュアーのawoo Japan CEO 林思吾

台湾発のAIテックスタートアップ、awoo Japan(アウージャパン)が今夏、日本本格進出を果たした。awoo Japanの国内初のホワイトペーパーには、天才と称され、初のトランスジェンダー閣僚でもあるオードリー・タン台湾デジタル担当大臣が登場している。インタビューの端々に、彼女の市民ファーストな政治スタンスが色濃く反映されていてとても興味深い。同社のVPoBD 執行役員である吉澤和之氏による寄稿第2回は、インタビューで語られた彼女の言葉をもとに、その裏に隠された台湾の経済・文化的背景を深掘りしていく。

“ユーザーファースト”を貫く政治スタンス

ユーザーの目線を中心に様々な意思決定を行う「ユーザーファースト」の発想は、いまやマーケティングの世界では当たり前になっている。一方、政治の世界ではなかなかその思考プロセスは浸透していない、というのが大半の読者のイメージだろう。しかしそのイメージを覆す人物が台湾に現れた。それが、初のトランスジェンダー閣僚である、オードリー・タン台湾デジタル担当大臣だ。彼女は「開かれた台湾政府」を掲げ、政府自ら積極的に情報を公開する姿勢を打ち出し、国民が意見を出しやすい環境整備に尽力している。彼女が「Radical Transparency(徹底的な透明性)」という原則を重視するのもその理念に添うものだ。awoo Japanでの単独 インタビューにおいても次のように語った。

“時々政府は、国民が何を望んでいるかを認識できていないので、皆さんの意見を集めて改善するという方法は正しいプロセスだ”(単独インタビューより抜粋)

透明性を重視することで双方向に意見が染みわたり、オープンガバメントはしっかりと機能することができる。タン氏が目指す世界は、そうした市民ドリブンな政治の形態である。この新しい政治の形は、台湾政府自身も積極的だ。例えば、彼女も運営に携わるPDIS(Public Digital Innovation Space)は、各省庁からイノベーション担当が任命され(Participation Officer)、社会起業家などとともにあらゆるプロジェクトを実行する横串組織であり、オープンガバメントを象徴している。また、情報の透明化を推進するために作られたシビックハッカーのコミュニティ「g0v」(gov-zero・零時政府)も作られ、台湾の人々はあらゆる面で政府の情報に直接アプローチができる体制を整備した。事実、Open Knowledge International(OKI)という団体が世界の政府のオープンデータを評価した“Global Open Data Index(GODI)”によれば、2017年、台湾は1位を獲得している。ユーザーファーストの概念を政治に浸透させようとする、台湾政府の気概が感じられる。

「おせっかい」の台湾人気質がもたらしたコロナ抑制

新型コロナウイルスの感染拡大を早々と抑えた台湾。その手腕とプロセスには世界中から賞賛の声が届いた。その成功の要因のひとつに、オードリー・タン大臣による「マスクマップ開発」がある。台湾政府がマスクを買い上げ、本人確認のもと販売するというものだが、わずか3日でこのシステムが開発されたのも注目すべき点だろう。実はこのシステム開発には、台湾の一般市民による力が寄与している。前述したように、政府はシビックハッカーというコミュニティを大事にしている。タン大臣も彼らとともに開発する道を選び、その結果、有益なシステムをリリースすることができた。

タン大臣による見事な手腕が発揮されたプロジェクトではあるが、一方でシビックハッカーという存在にも着目すべきだろう。なぜ彼らが政府のプロジェクトに積極的に関与するかというと、実はそこには、台湾の人々の「おせっかい」な気質が隠されている。タン氏によれば、

“未来の世代を犠牲にする人々、不利な立場にある人々を犠牲にする人々、台湾ではそうした人たちのマーケットは存在しません。加えて、台湾人の「おせっかい」な性格、多くのことについて個人の意見を表明したがる姿勢。このブレーンストーミングを通したエネルギーは台湾の発展をより良い方向に促進することができるのではないでしょうか”(単独インタビューより抜粋)

と語る。つまり、そうした文化的性格が、市民運動などを数多く巻き起こす原動力になり、国民と政治の距離を近くしているのだろう。実際、マスクマップ開発の時も多くのシビックハッカーが活躍した。加えて台湾の人々は「新しいもの好き」という性格も持ち合わせているらしい。自ら生み出すサービスにやりがいと誇りを持って取り組むことができるのは、そうした台湾の人々の性格がもたらしたものなのかもしれない。

タン大臣は、そうした人々のモチベーションを、台湾という国の原動力へと昇華させようとしているのだろう。彼女が標榜する「ソーシャル・イノベーション」は、まさにそうした一般市民の政治参加によってもたらされているのだ。

タン大臣がみる台湾スタートアップの日本進出

インタビューでは、awoo Japanに寄せる期待についても語られた。台湾政府はawoo Japanのようなスタートアップ企業への投資に積極的であり、特に人工知能分野への投資は、外資ハイテク企業誘致の施策と連動し、大幅な投資を行なっている。オードリー・タン台湾デジタル担当大臣は、こうした動きのなか、台湾国内の企業がグローバルへ進出する動きについてどうみているのか。彼女の口からは、「信頼関係」という言葉が開口一番語られた。

“スタートアップに限らず、ビジネスを成功させるには信頼関係が重要です。信頼関係を築くには、距離的な問題と、言語の問題が当然大きな壁となります。通常、それをクリアするためには長い時間をかける必要がありますが、スタートアップは時間との戦いです。関係を築くために長い時間を費やす事ができません。しかし現在は、AIと機械翻訳が高精度に発達したおかげで、言葉の壁が大幅に軽減されました。以前日本でワークショップを開いた時も、UDトークを使用して翻訳を即座に直接投影することができました。英語を話すと、視聴者は日本語で直接情報を受け取ることができます。たまに間違った翻訳が出ることがありますが、スタッフが時間内に翻訳コンテンツを微調整できますし、言語コミュニケーションの問題はまったくなくなりました”(単独インタビューより抜粋)

つまり、信頼関係を築くことが何よりも重要であり、そこに対しては距離と言語の問題が残されているが、もうすでにその障壁はIT技術の進化によってクリアされている、ということだ。

台湾はいま、本気で「人工知能大国」を目指している。グーグルやフェイスブック、アマゾンなどの巨大IT企業がいま台湾への投資を拡大しているが、この流れはいま本格化しており、おそらく近い将来、彼らが掲げる「アジア・シリコンバレー計画」も軌道に乗ることだろう。

参照リンク:
https://note.com/blkswn_tokyo/n/ne3513163c79b
https://easy.mri.co.jp/20200324.html
https://note.com/htakagi/n/n71247a95ac47
https://www.worksight.jp/issues/1405.html

タン大臣とのインタビューを全部読めるホワイトペーパーを公開中

さて、我々awoo Japanは台湾政府のIT顧問も経験しているCEOの林思吾氏が2015年に創業したMarTechカンパニーだ。現在は人工知能ベースのまったく新しいマーケティングプラットフォーム「nununi」(ヌヌニ)を開発し提供している。

awooが開発した「nununi」は、小売業Eコマースを対象としたマーケティングプラットフォームだ。これは、小売業Eコマースが抱える売上拡大・カスタマーエンゲージメント向上・運用効率化といったあらゆる課題を一気に解決することができる人工知能技術だ。nununiを使えば、消費者の買い物体験はより豊かになり、「偶発的消費」を誘発させられる。具体的な仕組みについては、サービスサイトを見ていただきたい。

我々は「偶発的消費」という言葉を掲げている。人は予想もしないものと出会いたいというマインドを持つ生き物だ。だから見知らぬ国に旅をして違う世界を見たいと思う。思わぬ発見、というのは「自分が認識している趣味や嗜好性の範囲外」に存在する。その発見をすることがすなわち偶発性であり、昨今AIなどで主流とされる「パーソナライゼーション」の行き着く先には存在しないのだ。

ネットフリックスやアマゾン、グーグルなども「偶発性」の研究に多額の資金を注入していると噂されている。偶発的消費をEコマースに取り入れることができれば、デジタル上での買い物体験はより質の高いものになっていくはずである。

いま、awoo Japanではホワイトペーパーを配布している。ホワイトペーパーでは天才と呼ばれる台湾デジタル担当大臣オードリー・タン氏を始め、脳科学者茂木健一郎と弊社吉澤による対談、マーケティング業界のトップランナーによるインタビューなどを見られる。

必要事項さえ記入すれば無料でダウンロードできるので、awoo Japan初のホワイトペーパーをまずは手に取ってもらいたい。