11月26日から11月30日まで開催されている「AWS re:Invent 2018」。発表された機械学習系のアップデートをまとめました。
機械学習の経験がなくとも予測が可能に。「Amazon Forecast」
Amazon Forecast は、Amazonで使用されるのと同じAI技術を用いた、時系列データによる予測をAPI経由で利用できるサービス。
機械学習の経験がなくとも、時系列データによる予測が可能になります。
患者の記録から重要なインサイトを見つけ出す「Amazon Comprehend Medical」
Amazon Comprehend Medical は機械学習を用いて、患者の記録から重要なインサイトを迅速に見つけ出すクラウドソフトウェア。HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)という、アメリカで発効された医療情報の電子化の推進、及び関係するプライバシー保護やセキュリティ確保について定めた法律に適合しているほか、初期費用不要ですべてのデベロッパーが高度な医療テキスト分析が可能になるとのこと。
OCRを次のステージへ進める「Amazon Textract」
Amazon Textract は、スキャンしたドキュメントからテキストとデータを自動的に検出、抽出するサービス。通常のOCRは文書を読み取るだけですが、Amazon Textractその文字列がどんな意味を持つのかまで分析。
テーブルに格納されたフォームや情報のフィールドの内容も識別します。これまで人間がおこなっていた、文字を抽出した後にこれは何の情報なのかを判断し整理するプロセスを自動化できるため、紙文書からのデータ入力作業がさらに楽になります。
Amazonのレコメンデーションを自社サービスでも。「Amazon Personalize」
Amazon Forcast同様、Amazonで使用されるのと同じAI技術をAPI経由で利用できるサービス。デベロッパーはユーザー個人ごとに、適切なタイミングに適切なメッセージでパーソナライズが可能になります。
Amazonは何百万人もの顧客に対して製品レコメンデーションを提供しており、Amazon=パーソナライズの呼び声も高いですが、その技術を使えるようになるインパクトは大きいです。
Amazon独自の機械学習チップ「AWS Inferentia」
機械学習チップと言うとNVIDIAが思い浮かびますが、Amazonも今回独自の機械学習要推論チップを発表。それがAWS Inferentiaです。
- 高スループット
- 低レイテンシ
- 安定したパフォーマンス
を発揮する非常にコスト効果の高いプロセッサだとAWS CEOのAndy Jassy氏はいいますが、果たしてどのように差別化していくかは気になります。
モデルを各ハードウェアに最適化する「Amazon Sagemaker Neo」
Amazon Sagemaker Neoは、SageMakerの新機能で、AIモデルを各社ハードウェアアーキテクチャ向けに最適化するコンパイラです。
現在はARM、Intel、NVIDIAに対応し、今後はCadence、Qualcomm、Xilinx向けもサポートするとのこと。エッジコンピューティングもカバーするアップデートです。
強化学習を効率的にする「Amazon SageMaker RL」
Amazon SageMaker RLは、SageMaker上で、強化学習の学習〜デプロイをより効率的におこなうための環境。さまざまな実験やシミュレーションをおこなうためのライブラリなどがセットアップされているとのこと。
ラベル付きデータ作成をより簡単にする「Amazon SageMaker Ground Truth」
トレーニングデータセットを構築できる、Amazon SageMakerの新機能。対応しているデータセットとしては下記。
- テキスト分類
- 画像分類 (画像を特定のクラスに分類する)
- 物体検出 (画像内の物体の位置をバウンディングボックスとともに取得)
- セマンティック・セグメンテーション (ピクセル精度で画像内の物体の位置を取得)
- ユーザ定義のカスタムタスク
また、必要に応じてアクティブラーニングを使用し、インプットデータのラベル付けを自動化も可能。その場合はAmazon SageMakerの学習・推論のコストがかかりますが、人手で全データセットをラベル付けするのに比べて、コストを最大70%削減できるとのこと。
自動運転ミニカー「AWS DeepRacer」
AWS DeepRacer は1/18スケールのレースカー。強化学習を手軽に導入できるように設計された自動運転車です。デベロッパーが手軽に強化学習モデルを学ぶことを目的として開発されました。
強化学習は、トライアンドエラーを繰り返し、試行錯誤を通じて精度の高いモデルを獲得する手法。後述するAWS RoboMaker上の3Dレーシングシミュレーター内でモデルを訓練。そこで作成したモデルをDeepRacerにダウンロードし、現実世界で試すことができます。
また、「DeepRacer League」という自動運転のレースも主催することも発表されています。2019年初めから始まるリーグの優勝者は、来年のAWS re:Inventへ招待されるとのこと。
ロボット開発をより簡単に。「AWS RoboMaker」
AWS RoboMakerはロボティクスアプリケーションの開発、テスト、およびデプロイを容易にするサービス。
- インテリジェントなロボティクスアプリケーションをより使いやすくするためのツール
- 迅速かつ容易なテストのためのフルマネージド型のシミュレーションサービス
- ライフサイクル管理のためのデプロイメントサービス
などを含みます。ロボティクス開発環境で生じる各ステップの作業を取り除くことができ、ロボットアプリケーション開発に集中できるといいます。
AmazonのAI研修を無償提供「Machine Learning University」
Amazonのエンジニアやデータサイエンティスト育成に使われるコースMachine Learning Universityも発表。こちらはLedge.aiでも取り上げました。
無料開放されるコースは実に45時間以上、合計30以上に上ります。