Azure Bot Service、LINE に対応。マイクロソフトが語る AI の競争を勝ち抜く術

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2019年初頭、マイクロソフトが提供するAzure Bot ServiceのチャットボットアプリのチャネルにLINEが追加された。Cortana、Microsoft Teams、Skype、Slack、Facebook Messanger などに続くチャネル対応となる。

それを記念して、2019年4月9日、開発ツール不要で作れるお手軽LINEボット体験セミナー+ハンズオンが日本マイクロソフト本社で開催された。





本稿では、日本マイクロソフト シニアプロダクトマネージャー 横井羽衣子氏による「ビジネスを変革するAI ~アジアと日本はどう違う!?最新調査結果から見える『次の一手』」の講演内容と、LINEボット体験セミナーの様子をお届けする。

『AIを戦略として考慮してない』『AIが成熟するのを持っている』企業は67%

冒頭、横井氏は会場にある質問をした。

――横井
「67%という数字、何を示しているかわかるでしょうか?」

67%とは、マイクロソフトと IDC Asia/Pacific による共同調査から抜粋した数字だ。


出典:Future Ready Business: AI によるビジネスの可能性について)

――横井
「日本国内における、『AIを戦略として考慮していない』『AIが成熟するのを持っている』企業が67%だということを示しています。

残りの33%は、AIをビジネス戦略に取り入れ検証を開始した企業、AIを戦略のコア部分として導入している企業です」

――横井
「では、AIの導入を妨げているのものは何か?

  • スキルがない
  • ツールがない
  • 組織文化

こういったことが上位に挙げられます

――横井
学習プログラムの欠如や、組織のサイロ化などが原因となっています。AIやデータ活用など、新しいことに取り組んでいてイケている!と言える会社って結構少ないと思うんですよね」

――横井
「仮に『全社でAIに取り組もう!』となっても、やっぱりデータ周りでつまずくことが多いです。データを溜めていると思っていても、フタを開けてみたら形式がバラバラだったり、そもそもそのデータが正しいかわからなかったり」

国内のAI活用では、まだまだ課題が多いという点を再認識した上で、横井氏は海外との比較を示した。

アジアで一番AIが普及しているのはインドネシア

――横井
「アジア地域で、一番AIが普及している国はどこだと思いますか? 中国?台湾?日本?」

横井氏はまたしても興味深い質問を投げかけた。セミナー参加者で正解した者はいなかった。

――横井
「これ、正解はインドネシアなんです。たしかに国家主導で進めている点では中国のほうが強かったりするんですが、インドネシアは民間のサービスが結構立ち上がっていたりだとか。

そういった点で、インドネシアはビジネスとして能動的で活発です」

横井氏は続けて、そういったアジア諸国と比較したときの、日本の違いに触れた。

――横井
「アジア諸国と日本の決定的な違いは何か?それはお金のかけ方ですね。日本は非常にAI領域へ投資しています。ただ、逆にロジカルの部分が弱かったり」

投資はしているが、正しく効率的にお金が使えていないのが日本だという。

――横井
「企業がAI導入や活用に踏み切っても、

  • データサイエンティストなどの人材はいる?
  • サイバー攻撃への対応は?
  • プライバシーの問題は?

など、さまざまなハードルがあります。

我々は、そういったハードルに対して何ができるのか?を常に考えています」

「AIが仕事を奪う」などのネガティブな意見もあるが、横井氏は「AIで仕事が変わっていく」と言う。

――横井
「テクノロジーが進化したことで、馬車の御者はどうなったか? 車の運転手さんになったんですね。

新しい技術に対して、自分が今持っているインサイトをもとにシフトできるかが大事です。テクノロジーの進化に適応していく。

それが競争を勝ち抜く術だと思っています」

プロジェクト成功の鍵はプロダクト開発の速度

では具体的に、AIを使ってマイクロソフトはどのような価値を生み出してきたのか。ハードルを乗り越えるためのどのような技術、プラットフォームを構築してきたのか。

それがわかる事例が2つ紹介された。

――横井
「株式会社JTBと株式会社ナビタイムジャパン、そして日本マイクロソフト3社共同で、訪日外国人旅行者向け観光支援アプリケーション『JAPAN Trip Navigator』を開発しました。

Microsoft Azureを基盤にすることで、既存の学習済みAIとBot Framework対話インターフェースを活用し、ほぼノンコーディングで構築しています」

JAPAN Trip Navigatorは、

  • 行きたい場所
  • 性別
  • 趣味
  • 子連れ

などの属性から、予定表を作成してくれる。

――横井
「おもしろいのは、アプリのなかにはボットがいて、ユーザーのさまざまな質問に答えてくれます。

  • お金を引き落としたい
  • やっぱり〇〇に行きたい

といった質問をすると、目的地へのマップや移動経路を教えてくれます。画像データ等についてはJTBのデータベースから、移動経路等についてはナビタイムのデータベースから取得します。最終的にボットの発言としてアウトプットしています。

それ以外に、観光スポットのレコメンドなどもしてくれます」

3社は、たったの4日間で本アプリの試作版を開発し、3ヶ月で製品をリリースした。

――横井
ローソンLINE公式アカウントの『あきこちゃん』はご存知でしょうか? そのなかでしりとり機能があるのですが、じつは『りんな』の機能が使われています。

注目したいのが、数万人のLINEユーザーのうち7割があきこちゃんと雑談をしている点です。さらに3割は10回以上、そのうち15%は30回以上も会話を続けているそうです。驚異的ですよね」

しりとり機能では、返信がある度に商品をレコメンドする。つまり、10回会話を続けたユーザーには10回商品がレコメンドされるのだ。ユーザーがアテンションを持って商品を見てくれるLINE内でのレコメンドの効果は相当期待できる

最後に横井氏は、どうしたらプロジェクトが進むのか、成功へのヒントを残した。

――横井
「これまで多くのお客様と話してきましたが、プロジェクトが成功するかしないかに、企業の規模は関係ありません。

アイデアを出して、それをいかに早くやって、小さい失敗を繰り返しながら素早く成功することの繰り返しができるかなのです」

プログラム経験がなくても Bot や AI を使いこなせる刺激的な時代

次のセッションは株式会社オルターブース デザインアーキテクト 松本 典子氏。コーディングをおこなわず、LINE ボイス メッセージを用いて、Azure Logic Apps 経由で Google カレンダー登録を行う例を紹介した。


株式会社オルターブース デザインアーキテクト 松本 典子氏


当日のマテリアルはこちら : https://www.slideshare.net/noriji822/line-azure-logic-apps

Azure Logic Apps の特徴として、開発環境を導入していない環境においても、ブラウザから視覚的にワークフローをくみ上げるだけで「できてしまう」ということ、ここに様々なサービスと連携するコネクタを介することで従来ではプログラミングが必要であったアプリケーションが簡単にできてしまうという。

プログラミング経験がなくてもある程度のアプリケーションは自分で作ることができる」という事実に、会場でも驚きの声が上がっていた。

良く組み合わされるサービスの説明と、丁寧なハンズオンで最初のハードルを超える

最後のセッションでは、ハンズオンの前に最近急激に普及したチャットボットについてと、良く組み合わされるサービスなどについて総括し、ハンズオンに入った。


日本マイクロソフト株式会社 クラウド&ソリューション事業本部 テクニカルエバンジェリスト 大森 彩子氏

これまでの導入事例などを踏まえ整理された典型的な利用シナリオのパターン。日本でも導入が進み始めているという。大森氏のデモでは、SWATCH社の webサイトを例にして、自然な会話でおすすめの製品を進めるボットが紹介された。


Azure Bot Service の例。左側が Bot、右側がユーザー。自然な会話からキーワードを抽出し、おすすめを表示している。詳細な説明の確認だけでなく、予約ページなどに遷移させることもできる。
注:同社の好意でデータを提供いただいたサンプルに基づくテスト サイトであり、実際の公式サイトではございません

筆者は実際に、日本マイクロソフト株式会社 品川本社で行われたハンズオンに参加させてもらった。率直にハンズオンの感想を述べると、「わかりやすく」「カジュアル」という2点だろう。

こちらの資料の一部を見てもわかるが、基本は初心者向け、わかる人はもう一歩先を学習できる内容になっている。


Azure Bot Service Handson 20190409 from Ayako Omori

ハンズオン参加者が質問できるスタッフも複数人おり、わからないことはすぐに尋ねられる体制が敷かれていた。ハンズオンは、Azure の各種設定から、スライドを使いながら丁寧に進んでいった。

最後に、ハンズオンの実際の風景を写真でお届けする。興味がある方は次回のハンズオンにぜひ参加してみてはどうだろうか。

参加者は、配布された資料をみながらボットを作っていく。わからないことがあればすぐにスタッフに質問できる。また、プログラムが書ける人、書けない人向けに松本氏のセッションでも紹介されていたコーディングレスも含め、 2 パターンのチャットボット作成手順が用意されていた。

当日のコンテンツは公開されており、誰でも試すことができる。ぜひ、後述の参考情報からためしてみてはどうだろうか。

参考情報

>> Azure Bot Service Handson 20190409

>> 祝LINEチャンネル追加!Azure Bot Service で翻訳チャットボット作成 (1)Azure Bot ServiceからLINE接続編

>> 祝LINEチャンネル追加!Azure Bot Serviceで翻訳チャットボット作成 (2)Cognitive ServicesTranslator Text API編

>> 祝LINEチャンネル追加!Azure Bot Service × QnAMakerでFAQ (一問一答) チャットボット作成

QnA Makerコネクタで「LINE版お問合せチャットボット」を1行もコードを書かずに作れた話(Logic Apps × LINE Messaging API)
>> http://zuvuyalink.net/nrjlog/archives/4106
>> https://www.slideshare.net/noriji822/line-azure-logic-apps