業務効率化に伴い、飲食店などでは混雑状況が改善されてきている中、病院は年中混み合っています。
5分程度の診察を受けるために、患者の待ち時間は平均して30分から1時間。予約をしていない場合には、1時間以上かかることも少なくありません。
そんな課題を解決しようと奮闘しているのが、ロンドンに拠点を置くデジタルヘルスのスタートアップBabylon Healthです。スマートフォンでどこでも簡単に医療診断を受けられるAI搭載型のアプリを開発しています。
このアプリの導入は、医療現場をどう変えるのでしょうか。
チャットするだけで、AIが自動で医療診断
安価な医療サービスを世界中に届け、人々の健康を守ることビジョンに掲げる、Babylon Health。
Babylon Healthは、利用者がAI搭載型チャットボットに症状を伝えると、症状を即座に分析し、適切な医療診断をしてくれるスマートフォン向けアプリを提供しています。
診断結果により、在宅勤務の医師とのビデオ面談の推奨、医療機関での診察予約までしてくれます。
すでにイギリスでは、国民保険サービス(NHS)の支援の下、25万人以上に利用され、世界全体では、アイルランド、ルワンダを中心に、アプリのダウンロード数はなんと100万回以上に上っています。
“AIドクター”の導入により医師不足を解消
OECDの推定では、世界中で500万人以上も医師が不足していると言われ、深刻な医師不足が叫ばれています。日本では、人口1000人あたりの医師は2.4人で、医師一人あたり400人以上もの患者を抱えていることになります。
医師不足に伴い、患者が病院の混雑、診察までの待ち時間に不満を覚える一方で、医師にとっても、長時間労働を強いられ心身に重い負担を背負うことになる現状は、決して良いとはいえません。
そこで注目されるのが、AIドクターです。
AIが人間の医師に代わり診察を行うことで、以下のように患者と医師、双方にとって大きなメリットが期待できます。
- AIによる医療診断が導入されることで診断コストが大幅に下がる
- 診断がどこでも受けられることで、病院に通う頻度が少なくなり、待ち時間や混雑も解消される
医師目線のメリット
- スマホを通してのビデオによる医療診断により、在宅勤務も可能になり、負担を軽減することができる
- 診断が容易なケースの症状については、バビロンが対応してくれるため、不必要な診断機会を減らすことができ、人間にしか出来ない、より高度な治療に専念できる
Babylon Healthが考える、医師とAIが共存する未来
一方で、AIドクターといっても、医療診断が実際どれほど信頼できるかは、不安です。
ですが、MRCGPテストにおいて、過去五年間での人間の医師の平均スコアが72%だったのに対し、2018年、Babylon Healthが開発したAIは、初試験で81%のスコアを獲得しました。
研修中の一般開業医が受けるテスト、この試験に合格すれば、独立開業するうえで十分に高いレベルの能力と臨床技能があると認められる
試験で高いスコアを獲得しているからといって、実際の医療現場において、AIが医師にとって代わる、とまでは言えませんが、AIに継続して学習させることで、診断の正確性は今後著しく向上していくでしょう。
このようなAIによる医療診断アプリの進化を目の当たりにし、AIが医師の仕事を将来的に奪ってしまうのではと、懸念する声も出ています。
しかし、尿検査、血液検査など、患者に直接対応する医療措置はアプリでは不可能。すべての医療判断をAIに任せることはできません。AIの医療現場での活用は、医師との協調を目指すものであり、人間にしかできないような、より高度な治療に専念できるよう手助けします。
Babylonの創立者兼CEOであるAli Parsa氏は、以下のように述べます。
「最先端の人工知能技術と医療の進歩により、全世界の人々が十分な医療サービスを享受し、健康的に暮らせる未来が近づいている」
現状、規制により、AIは医療アドバイスを行うことしかできません。しかし近い将来、医療現場でのAI活用が認められ、世界中の人々の健康がAIによって守られる日もそう遠くないのかもしれません。