画像のイメージです。カリフォルニア州オークランド市の実験によると、ベーシックインカムは精神面にも良い影響を与えるという(Unsplashより)
アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルス市のエリック・ガルセッティ市長は10月末、同市の3200以上の世帯に1年間毎月1000ドル(約11万4000円)を無条件で支給するベーシックインカム・プログラムの申請を受け付け開始したと発表した。すでに現地時間11月7日に募集を締め切った。
近年、世界各国でベーシックインカムに熱いまなざしが向けられている。AI(人工知能)の進歩はもちろん、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大にともなう不景気や失業率の悪化、少子高齢化や格差拡大などの社会的背景による影響も大きい。
今回、ロサンゼルスで実施するベーシックインカム・プログラムに応募するには「ロサンゼルス市に居住していること」「18歳以上であること」「扶養している子どもが1人以上いるか、妊娠していること」「所得が連邦貧困レベル以下であること」「新型コロナウイルス感染症の影響で経済的・医療的な困難を経験していること」という条件を満たす必要がある。
ガルセッティ市長が2021〜2022年度の予算で、ロサンゼルスの家族向け地域投資局(CIFD)が運営する2400万ドル(約27億4360万円)のベーシックインカム保証事業を提案した。市議会の複数の議員が追加で投資し、3200世帯以上のために総額3800万ドル(43億4410万円)を財源として当てる。
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月5万4000円のベーシックインカム実験「働かない人が増える」「タバコや酒に使われる」は誤り、米カリフォルニア州
近年、アメリカでは国内において市レベルで初の「ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)」の導入実験を実施したことで知られる、カリフォルニア州ストックトンのマイケル・タブス元市長が立ち上げた「SEED(Stockton Economic Empowerment Demonstration、ストックトン・エコノミック・エンパワーメント・デモンストレーション」を中心に、ベーシックインカム実現に向けた動きが活性化している。
カリフォルニア州のストックトン市では2021年3月、毎月500ドル(約5万4000円)のベーシックインカム実験において、「ベーシックインカムを導入したら、働かない人が増えるだけだ!」「支給額はタバコや酒に使われるだけだ!」といった批判を覆す結果が明らかになった。
同実験では、実験を始めた2019年2月と、実験を終えた2020年2月を比較し、支給を受けていないグループはフルタイム雇用が5%しか変化しなかったが、支給を受けたグループは12%も増加した。受給者たちによる毎月の支出は「食品」が最多で、タバコや酒類に使われる割合は1%未満だったこともわかった。
カリフォルニア州ではオークランド市は2021年3月24日、人種による貧富の差を減らすため、有色人種の低所得世帯を対象に毎月500ドル(約5万4000円)を支給するベーシックインカムの実験を開始すると発表した。2021年夏までに開始し、支給は1年半継続する予定という。
アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコ市では2021年5月21日から、130人のアーティスト(芸術家)を対象にベーシックインカム(最低所得保障)のパイロットプログラムにおいて、ついに月1000ドル(約10万5000円)の支給を開始したと見られる。
アメリカのイリノイ州シカゴ市議会は2021年10月末、低所得者5000人を対象に1年間にわたり、月500ドル(約5万7000円)を支給するベーシックインカム(最低所得保障)の試験導入を可決した。対象者は年収が3万5000ドル(約400万円)以下の人で、無作為に選ぶ。
今回、カリフォルニア州ロサンゼルス市で実施するベーシックインカムは毎月1000ドル(約11万4000円)と他のプログラムと比べ、支給金額が高いことが特徴である。今後の動向に注目したい。