「がん」を瞬時に判定するAI登場、正答率は病理専門医に迫るほど

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ついに「がん」の病理診断もAIに任せる時代が到来しそうだ。

広島大学の有廣光司教授、加藤慶ならびにメドメイン株式会社の飯塚統、Fahdi Kanavati、Michael Rambeau、常木雅之(責任著者)による「胃・大腸における上皮性腫瘍の病理組織学的分類を可能にするAIモデルの開発」に関する論文がNature Publishing Group刊行の「Scientific Reports」より出版されたことが2月3日に明らかになった。





【論文タイトル】
(原文)Deep learning models for histopathological classification of gastric and colonic epithelial tumors(和訳:胃・大腸における上皮性腫瘍の病理組織学的分類を可能にするAIモデルの開発)
論文リンク:https://www.nature.com/articles/s41598-020-58467-9
DOI: 10.1038/s41598-020-58467-9
PubMed リンク:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32001752

>>メドメイン株式会社

診断の効率化や労働負荷の減少など実用可能なレベルに到達

メドメインでは複数の医療機関との共同研究により、それぞれ4000例を超える胃・大腸の病理組織標本に対して標本単位のデジタルイメージ(whole slide image)を作成した。自社開発のアノテーションツールを用いた病理医による教師データを作成し、これらを深層学習させることによって、病理画像解析のAIモデルの開発に成功した。

開発には、スーパーコンピュータシステムが用いられ、試験データによる検証の結果、機械学習の精度の評価に用いられる指標「AUC」がいずれも0.96以上(1に近いほど判別能が高い)という、きわめて高い精度(病理専門医の正答率に肉薄した精度)を得るに至ったとのこと。

左図が胃、右図が大腸のAIモデルの精度の評価を示す

病理画像のAI解析による判定結果の精度は高く、病理組織標本レベルで判定結果が得られることからも、実際の病理診断の現場において、スクリーニングに使用することで診断の効率化・労働負荷の減少など、実用可能なレベルに到達している点を論文内で述べられている。

不足する病理医、求められる病理診断

「がん」は世界的な統計のなかでも病気死因の上位カテゴリーとされている。その種類のなかでも患者数や発症数から胃・大腸がんは主体を成しているそうだ。そのため、多くの医療機関でこれらのがんの診断をするための内視鏡を用いた微小生検材料の病理診断の検査数は非常に多く、また増加傾向にあるという。

ところが、診断をする「病理医」は国内外で慢性的に不足している。病理医がひとりで診断を担う医療機関も多く、労働負荷が非常に大きくなっている。そして、多くの医療現場では、他院や検査センターに病理診断を依頼している現状がある。

こういった状況から、患者に対してより効率的で迅速な病理診断を実現するワークフローの整備が望まれていた。病理組織学的判定のスクリーニングが可能になるAI開発には世界中の医療従事者から大きな期待が寄せられているそうだ。

メドメインでは、AIによる病理画像解析を医療の現場で円滑に使用できるように、病理画像のAI解析システム「PidPort」の正式なサービス開始を近日中に予定している。

PidPortは、Deep Learning/AIによる独自の画像処理技術によって超高精度で迅速な病理スクリーニングを可能にするほか、遠隔病理診断の機能も備える。すでに国内外の多数の大学や医療機関で試験運用と実証実験をしているとのこと。

マイクロソフトも医療AIへ取り組みはじめる

医療とAIの関係はより密接なものになりつつある。多くの企業がAIを使い医療の改善、向上を目指している。

マイクロソフトは米国時間1月29日に、世界中の人々と地域社会の健康に貢献する「AI for Health」を発表した。AI for HealthはAIによって研究者や研究組織を支援し、世界中の人々や地域社会の健康を向上することが目的のプログラムだ。

AI for Healthは、ヘルスケア分野におけるマイクロソフトの広範な活動を補完する慈善活動のひとつ。AI for Healthを通して、特定の非営利団体や大学などと、マイクロソフトの主要なデータサイエンティストとのコラボレーション、AIツールとクラウドコンピューティングへのアクセス、および助成金などのサポートを提供するという。