12月19日、キヤノンは、ディープラーニング(深層学習)を用いて、ネットワークカメラで撮影した映像から、数千人規模の群衆人数をリアルタイムにカウントする映像解析技術を開発したと発表。あわせて、この技術を搭載した映像解析ソフトウェア「People Counter Pro」を12月下旬から発売する。(外部サイト)
キヤノンに価格を問い合わせたところ、システム構成によって大きく変わる可能性があるものの、XProtect版の場合はおおよそ100万円~(サーバー、カメラ、ライセンス含む)だそうだ。
キヤノンによれば、
とのことだ。
これまでの動体や人物の顔を検出する映像解析技術は、人が密集する混雑状況下では正確に数えることが難しいという課題があった。なぜなら、体の重なりや顔の向きなどの影響を受けるからだ。
キヤノンが開発した技術なら、映像から人の頭部を検出することで、人が密集している状況でも人数をカウントできる。また、指定した領域の中にいる人数の表示や、推移のグラフ表示も可能だ。そのため、混雑状況の把握や分析に活用できるとされる。
また、対応できる画角が広いため、カメラ設置場所の自由度が高いそうだ。さらに、GPUを搭載していないPCでも動作可能なため、設置や運用コストを抑制できる。
キヤノンの広報によると、サーバーの構成や映像の解像度によるものの理論値としては、2000万画素のAXIS Q1659使用時は8万人以上の検出に対応。フルHDの場合においても、9000人以上の検出に対応しているとのこと。
混雑状況の把握が容易になることで、都市や公共施設、スタジアムなどの監視においてデータを活用した警備計画の立案、警備員の効率的な配置に役立つと期待されている。そのほか、イベント会場や店舗での集客状況の把握、広告効果の検証などでも使われそうだ。
Ledge.ai編集部では、今年8月にキヤノン株式会社に対し本件に関するインタビューを実施している。混雑緩和や警備強化、さらにはマーケティングに活かせる技術についてなど、映像に付加価値を与えようとしているキヤノンの取り組みを聞いた。
インタビュー記事:キヤノンの群衆人数カウント、6,000人もの人数を瞬時に推定。AI技術をマーケティングやセキュリティに
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映像解析技術はテレビ局の番組制作でも使われている
カメラに映し出された内容を解析する技術は、人に代わる“目を持つ存在”として多くの利用シーンが生まれつつある。
まず、キヤノンが開発した解析技術のように、監視カメラとしても使えるケース。
今年11月から、神戸市ではフューチャースタンダードと協働で、放置自転車の監視に関する実証実験を開始している。放置の多い歩道や駐輪場付近にカメラを設置。収集した動画や画像をAIで解析することで、放置自転車の台数をカウントする。放置されている現状把握にまずは役立てるそうだ。
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また、人や物体数のカウントではなく、映像に出た人の顔を認識・判別する技術も実用化されている。
日本テレビでは、今年7月に放送した「NNN参院選特番 ZERO選挙2019」「日テレNEWS24×参議院選挙2019」において、AIの顔認識技術を使った実験を実施していた。映像内の人物と名前の間違いによる誤報を防止することが目的。結果として、AIが認識すれば一度の間違いもなかったようだ。
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今回キヤノンが開発した技術は、すぐさま解析結果を出せるのも特徴のひとつ。この技術が普及すれば、イベントなどでよくある「参加者〇〇万人!」みたいな発表も、入り口で“数取器”をカチカチして数える必要もなくなるかもしれない。