【サイバーエージェント×楽天×メルカリ3社対談】~ 企業研究発表カンファレンスCCSE2018発足の舞台裏 ~(前編)

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企業研究所の研究発表に特化したカンファレンス「CCSE2018(Conference on Computer Science for Enterprise)」が、7月1日に明治大学で開催されます。

“研究発表”とだけ聞くと、少し敷居が高いのか? と思うかもしれませんが、CCSE2018はビジネスにフォーカスし、学生から経営者、デザイナーなど、じつに様々な業界・職種の方々が参加するカンファレンスです。

CCSE2018概要

CCSE2018は企業の研究所が中心となって研究発表を行うイベントです。
企業研究所では自社サービスの発展やイノベーションを起こすことを目的とした研究が行われています。CCSE2018はそのような企業研究を議論・発展させ、企業の研究を広く認知してもらうことを目的に開催に至りました。マシンラーニングやコンピュータビジョンなどのAI技術や、ロボット、IoT技術など、幅広い領域の研究について一日で触れることが可能です。そしてCCSE2018は発表を「聞く場」ではなく、「議論する場」として存在します。研究発表の後に質疑応答の時間を設けていますので、積極的に議論に参加してください。

出典:CCSE2018公式サイト

概要説明からもわかるように、キーワードは“企業研究”。ただし、アカデミックの観点で発表がされるのでなく、あくまでビジネス活用にフォーカスして全9社25の発表が行われるのが当カンファレンスの特徴です。

今回は、発起人である株式会社サイバーエージェント 岩本氏、並びに運営メンバーかつ協賛企業でもある楽天株式会社 益子氏、株式会社メルカリ 木村氏に、CCSE2018の発足までの舞台裏と、開催にかける思いを対談形式で語ってもらいました。

岩本 拓也(真ん中)

株式会社サイバーエージェント ロボットサービス事業部 主任研究員

サイバーエージェントでロボットの社会実装とHCIの研究に従事。これまでにSIGGRAPHやCHIなどで発表し、受賞多数。 Human Computer Interaction研究会、WISS,IPSJ-ONEの運営委員として学会に関わる。


益子 宗(右)

楽天株式会社 楽天技術研究所 未来店舗デザイン研究室 シニアマネージャー
IPA未踏、学振を経て2008年筑波大学大学院システム情報工学研究科にて博士(工学)を取得。同年、楽天株式会社楽天技術研究所(現職)に入社し、コンピュータビジョンやHCIの研究領域のマネージメントを経験。IoTやAI技術のサービス応用や、領域横断的な産学連携を推進。2016年より筑波大学芸術系客員准教授(兼任)として、未来店舗デザイン研究室の設立に携わる。CEATEC AWARD (2015)、デジタルサイネージアワード(2016、2018)、IT賞(2017)などの受賞歴がある。


木村 俊也(左)

株式会社メルカリ Team AI Engineer Manager

2007年よりSNS企業にて研究開発を担当。機械学習の知見を活かして、レコメンデーションエンジ ンやグラフマイニングエンジン開発を担当。その他、自然言語処理学の知見を活かした広告開発や マーケティングデータ開発にも携わる。その後、技術を統括する組織の責任者を経て、インフラから アプリまで幅広いマネージメントを経験。2017年より株式会社メルカリにて研究開発のオフィサー を担当し、その後AIをメルカリに応用するチームのEngeer Managerを担当。

CCSE2018は企業の研究をオープンにすることで課題を解決する

――そもそもどのような課題があって、CCSE2018を立ち上げられたのでしょう?

――岩本
「企業の研究も学会などで研究発表は行われていますが、どの企業が何を研究しているかを知る機会は十分ではありません。また企業の研究は学会発表を行わないものもあり、そのような研究を議論する場も足りていませんでした。

企業の研究をオープンな場で議論をすることは、研究を発展させるだけではなく、学生や研究所で働くことを考えている方の選択肢にプラスになると考えています。そのような考えから発表を全て企業の研究に限定し、多くの方々と議論する場としてCCSE2018を企画しました。」

企業の研究機関、研究内容をCCSE2018などを通して伝えることで、学生・研究者の選択肢を増やし、企業としても研究力向上を期待できる。その結果日本全体の研究力が向上していく、と岩本さん。

――岩本
「自分も学生の頃に研究をしていましたが、就職先では研究とはまったく別の仕事をしていました。ところが、あるひょんなきっかけから企業の研究機関で働くことになり、集中して自分の研究に取り組むことができました。

私の場合はたまたま自分にマッチした企業に出会えましたが、企業の研究分野・内容がオープンになっていない以上、自分の好きな研究ができる企業を探すことは難しいです。

なのでCCSEは9社の研究者が10分間で自分の研究を発表し、聴講者と議論を行います。発表領域も機械学習やコンピュータビジョン、ロボットやIoTなど多岐にわたり、協賛発表や基調講演も入れると25の発表もあるので、自分の興味がある領域に出会えるのではないでしょうか。」

岩本さんご自身の実体験からもすでに、企業研究にフォーカスしたカンファレンスを開催する意図、メッセージが伝わってきます。

風呂場から始まった「CCSE2018」の構想

――CCSE2018立ち上げの経緯について、もう少し詳しくお聞きしたいです。

――岩本
「そうですね、協賛企業の方々に声をかけたのは数ヶ月前のお酒の席でした。ただ、カンファレンスの構想自体は3年ほど前から考えていて、『WISS』という人工知能やロボティクス、HCIなど様々な研究者が集まる泊りがけの学会に参加したときに、楽天の益子さんやほかの研究者の方とお風呂に入りながら、こんなカンファレンスをやりたいね、と話していました。

その翌年、『WISS』にて学生向けに企業研究者が話すイベントがあったのですが評判がよく、これはもっと大きな形でイベントを実施してみたいね、と話したことが本格的に企画をはじめたきっかけです。

そこで、まずはこの気持ちや研究発表カンファレンスの意味を理解してくれそうな、みなさんに連絡をとりました。」

まず岩本さんが連絡したのは、楽天株式会社 益子さん、株式会社メルカリ 木村さん、Unity Technologies Japan 簗瀬さんだといいます。

もともと何かの課題を解決するために始まったというわけではなく、 “これを実施したいな”という研究者の純粋な思いから、岩本さんを発起人として開催目前まできたCCSE2018。

――岩本
「僕1人で立ち上げた、というよりはみなさんに背中を押されたというのが正しいですね。

企業の研究発表という時点で、ほかの企業研究所、そこに所属する研究者の協力なしではカンファレンスは成り立ちません。もともと僕以外の研究者の方も同じような思いを持っていたからこそここまで来れたと思っています。」

協賛企業の協力、共通の思いがあってはじめて実現するのがCCSE2018。

ここからは、株式会社サイバーエージェント岩本さんに加え、今回の対談に来てくださった楽天株式会社 益子さん、株式会社メルカリ 木村さんも交えて、CCSE2018開催の経緯、各社の思いを聞いていきます。

根底にあったのは「日本の研究を盛りあげたい」という共通認識

――協賛を持ちかけられたときは、各社どんなことを思われたのでしょうか?

――益子
「声をかけられたときは、すぐに “乗ろう” と協賛を決めましたね。先ほど話にでてきた『WISS』で、企業の研究で何をしているのか、といった学生からの質問は非常に多かったんです。

一方で学会にでる企業の研究者は減ってきている印象で、企業の研究者のイメージが世の中に伝わってないなとは感じていました。就職のタイミングで研究を辞めてしまう学生さんも多いんですが、実はいろんな形で研究に携わっていけるということをもっと知ってほしいという思いはあります。」

――木村
「楽天さんと同じく、すぐに協賛を決めましたね。

まず、適材適所で研究者が世の中の研究所に配置されるべきだと思っていまして。企業研究といってもじつにさまざま分野に分散しているので、どの企業がどこでなにをしているのかわかりにくい構造になっているんですよね。そういった意味でも、各企業の研究内容を持ち寄って発表する場というのは求職している方にとっても非常に良いなと思います。

情報が行き渡っていないことで、研究所と研究者のミスマッチも起こりますし、企業と関わる機会が少ない学生には特にいえることです。情報がない、という理由だけで力が発揮できていない方々が一定数いるので、そういった課題の解決にもつながればと思っています。」

企業の研究機関の情報がとにかく少ない、というのが現状の根本的な課題として存在するそう。

情報が行き渡っていないという理由だけで、ミスマッチが起きたり、研究者が減ってしまうというのは避けるべきですよね。

――木村
「どこの研究機関も同じだと思うし、弊社もそうなのですが、多くの企業研究機関が世の中に共有できていないことってたくさんあると思うんですよね。各企業がどんな研究をしているのかを広める場というのは、企業研究の発展のためにも絶対に必要です。

さらにはよりアカデミアと企業研究がより密接に関わるようになり、アカデミアの学生と企業がシナジーを生む機会に貢献できたらと考えています。」

世界で開催されている機械学習やコンピュータービジョンなどのトップカンファレンスでは、とても高額にも関わらず企業のスポンサー参加が盛んです。その場で研究やビジネスについて議論をし、共同研究や採用が決まるケースもあるそう。

――岩本
「トップカンファレンスのようにアカデミックとビジネスの垣根を越えて議論をしやすい環境を作り、驚くような技術やサービスが発表されるきっかけが生まれる場になれればと考えています。

CCSE2018のような研究発表をするカンファレンスがきっかけになり、日本全体の研究を盛り上げていきたいですね。」

後編では、企業研究の情報をオープンにすることでどんなリスクがあり、どのような価値があるのか、CCSE2018はなにを成し遂げようとしているのか、引き続きサイバーエージェント 岩本氏、楽天 益子氏、メルカリ 木村氏に対談形式で語ってもらいます。

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【サイバーエージェント×楽天×メルカリ3社対談】~ 企業研究発表カンファレンスCCSE2018発足の舞台裏 ~(後編)はこちら