クラウドとは
クラウドとは、「手元のデバイス(パソコン、USBメモリーなど)にデータを保存していなくても、インターネット経由でサーバーのデータにアクセスできるサービス」です。
従来のコンピューターでは、利用者は手元のパソコンの中にあるデータを利用していました。しかしクラウドサービスでは、ネットワークを経由して、データを利用できます。
たとえば、作業をしようとカフェに行ったとします。ここで、必要なデータが入ったUSBメモリーを家に忘れてしまった場合、家に取りに行く必要があります。また、大事なデータが入ったパソコンを破損してしまった場合、データは戻ってきません。
しかし、あらかじめクラウドにデータを保存しておけば、このようなことを避けられます。USBメモリーを家に忘れても、カフェでインターネットに接続することで、クラウドに保存されているデータにアクセスすることができます。パソコンを破損しても、クラウドに保存されているデータに影響はありません。
このように、ネットワークがつながっていれば、どこからでもアクセスできるサーバーを雲(クラウド)にたとえています。
また、ひとことでクラウドサービスといっても、クラウドの提供できるサービスはMicrosoft WordファイルやMicrosoft Excelファイルなどのデータに限りません。パソコンにソフトウェアや開発ツールをダウンロードせずとも、クラウド上で作業できるため、運用の手間を抑えることができます。
クラウドでできること(メリット)
- 手軽に利用可能
- インターネットに接続できればどこでも利用可能
- 設備投資を抑えられる
- 運用の手間がかからない
ソフトウェアなどのインストールの手間がなくアカウントの作成だけで利用できる
端末にインストールするわけではないので、アカウントさえあればどの端末からでも利用できる
環境構築が不要なためサーバー購入費などを抑えられる
提供者が機能のアップデートやセキュリティ対策をしてくれるため、運用に手間がかからない
クラウドの弱点(デメリット)
- 有料の場合、ランニングコストが常にかかる
- データの移行が難しい
- セキュリティは提供者に依存
- リアルタイム性に劣っている
サービスを移行したくても、データの移行が難しく断念せざるを得ない場合がある
セキュリティ対策のレベルは提供者に依存するため、万全でない場合もある
ネットワークでのやり取りになるため、ラグが生じやすい
クラウドの種類
クラウドには種類があり、一般的に「SaaS・PaaS・IaaS」の3つのサービスに大別されます。クラウドで提供する内容が違うため、名前を分けています。
SaaS (サーズ、Software as a Service)
SaaS(サース)とは、Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)の略です。クラウドサービスのうちソフトウェアを提供するものを指します。
従来、利用者がソフトウェアを利用するには、パッケージ製品として購入し自分の端末で稼働させる必要がありました。SaaSの場合、ソフトウェアを自分の端末で稼働させる必要はなく、ネットワーク経由で利用できます。
多くの方が普段使っているであろうGmail、Microsoft 365、Slack、DropboxなどはすべてSaaSです。またコロナ下で一気に広まったZoomもSaaSです。
BtoB(B2B)としては、セールスフォース・ドットコム(Salesforce)という企業のSaaSがとくに有名です。業界に合わせたサービスを提供しています。
PaaS (パース、Platform as a Service)
PaaS(パース)は、Platform as a Service(サービスとしてのプラットフォーム)の略です。クラウドサービスのうちプラットフォームを提供するものを指します。
従来のシステム開発では、必要なネットワーク、ハードウェア(CPU、メモリー、ストレージなど)、OSやミドルウェアを自前で準備し、そのあとアプリケーション開発をする必要がありました。PaaSの場合、こうした準備が整ったアプリケーション開発環境であるプラットフォームをネットワーク経由で利用でき、いきなりアプリケーション開発に専念できます。
PaaSの例としては、Google App Engine、Microsoft AzureのApp Service、Amazon WebService(AWS)のLambdaやElastic Beanstalkがあります。
IaaS(イアース、Infrastructure as a Service)
IaaS(イアース)は、Infrastructure as a Service(サービスとしてのインフラストラクチャー)の略です。クラウドサービスのうちインフラストラクチャーを提供するものを指します。
従来のシステム開発では、必要なネットワーク、ハードウェア(CPU、メモリー、ストレージなど)やOSを自前で準備する必要がありました。IaaSの場合、こうしたネットワーク、ハードウェアやOSを、必要なときに必要な分だけネットワーク経由で利用できます。
IaaSの例としては、Google Compute Engine、Microsoft Azureの仮想マシンや、Amazon Web Service(AWS)のAmazon Elastic Compute Cloud(EC2)があります。
なお、IaaSはイアースに限らず、アイエーエーエス、アイアースなど多様な読まれ方をしています。
SaaS・PaaS・IaaSの比較まとめ
SaaS・PaaS・IaaSの特徴を表でまとめると、以下のようになります。
クラウドAIとエッジAI
近年注目を集めているAI(人工知能)とクラウドは密接な関係にあります。現在普及しているAIのほとんどはクラウドで提供されています。
クラウドAI
クラウドAIとは、クラウド上でAIの処理をすることです。端末で得られたデータをクラウドに送信し、クラウド上で処理し、アウトプットをデバイスに送り返すことでデバイスの負担を低減します。
しかし、データをデバイス内で処理せずクラウドに送信するため、リアルタイム性に優れていませんが、AIは大量のデータ(ビッグデータ)を必要とするため、AI導入の効果的なソリューションとなっています。
エッジAI
エッジAIとはクラウドAIとは対照的に、デバイス内で処理するAIです。リアルタイム性に優れているため、瞬時な判断が必要とされている自動車の自動運転などに欠かせない技術として知られています。
クラウドの今後
今までは、ハードウェアを購入したり、ソフトウェアをパソコンにインストールしたり、ソフトウェアのライセンスを購入しなければ、サービスが使えないことが一般的でした。しかし、クラウドの出現によりハードウェアを購入したり、ソフトウェアをインストールしたりしなくても利用できるサービスがすでにたくさん生まれています。
レッドオーシャンに突入したと思われがちな、クラウド(SaaS)ビジネスにも、まだ未開拓の領域が残されています。それが「デスクレス(Deskless)SaaS」と呼ばれる、建設、物流、医療、飲食店や工場などの「現場」課題を解決する、製造業や運送業向けのSaaSです。
これまでにオフィスワーカー向けのSaaSは数えきれないほど登場し、第1世代と呼ばれるコンピュータ初期からのインフラ企業たちも存在する世界では、新参者のベンチャー企業が入り込める隙間が残されていません。しかし、製造業や運輸業などへのテクノロジー導入はいまだに困難を極めており、デスクレスSaaSビジネスはまだまだブルーオーシャンです。