設立3年のスタートアップでありながら、活用が難しいとされる非構造化データをはじめとしたマルチモーダルデータ活用を強みに、幅広いデータビジネスを展開している株式会社DATAFLUCT。
DATAFLUCTが目指すのは、まだ日本には浸透していない一気通貫のデータビジネスを展開できるプレーヤーだ。日本企業の課題や実情を理解したデータプラットフォームと、そこから広がる多彩なデータ活用ビジネス。それはどのようにして実現され、どんな未来へとつながっていくのか。
本記事では、DATAFLUCTの主力事業のひとつ「AirLake(エアーレイク)」の特徴と、そこから広がる新たな事業の仕組みについてひもといていく。
“三種の神器”にチャンスあり。「一気通貫」のデータ利活用プレーヤーを目指す
画像提供:DATAFLUCT
わずか3年の間に、25以上にも及ぶプロダクトを開発してきたDATAFLUCT。現在は、非構造化データの活用に着目したクラウド型データプラットフォーム「AirLake(エアーレイク)」を軸として、社会課題×企業の課題をテーマにしたデータプラットフォームも展開する。
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たとえば、酒類・食品卸業の国分グループが導入している「Perswell(パースウェル)」は、機械学習と外部データを組み合わせた自動需要予測によって、最適な仕入れと生産を実現する、サプライチェーンマネジメント(SCM)向けプラットフォームだ。企業ごとの販売・仕入れの過去データと、天気や新型コロナウイルス感染症の陽性者数といった外部データを組み合わせ、機械学習によって商品の販売数および適正在庫量を予測。欠品や余剰、在庫回転率・配送計画などの改善へとつなげられる。
また「TOWNEAR (タウニア)」は、「持続可能なまちづくり」実現のために、エリア(地域)に関するあらゆるビッグデータを、専門的な知識やソフトウェアなしで統合・分析できるプラットフォーム。「エリアのにぎわい」「地域交通」「災害対策」といった、複雑化するまちの課題を誰にでもわかりやすい形で可視化し、施策の計画に役立つデータの収集・統合・分析、施策実施後の効果検証などができる。
さらに、気候変動対策をテーマにしたサービスとして「becoz(ビコーズ)」がある。「becoz」では、決済データや移動データ、衛星データなどから、商品やサービスのCO2排出削減量を総合的に計算して表示し、サステナブルな購買を支援したり、個人のCO2総排出量、削減・オフセット量などを可視化したりできる。ほかにも同社では、食品流通、衛星画像解析、都市開発など、さまざまな領域の事業に取り組んでいる。
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DATAFLUCT代表取締役CEOの久米村隼人氏は、データプラットフォームを主軸としてこうした多彩なサービスを提供する背景に「データ利活用の“三種の神器”がある」と話す。
“三種の神器”とは、「データ基盤」「分析ツール」「事業(データビジネス)」のこと。久米村氏によれば、この3点にはそれぞれチャンスがあるが、日本ではバラバラのプレーヤーが手掛ける形が一般的。一気通貫ですべてを提供している企業は見当たらず、「まずは、そのプレーヤーになろうと考えた」という。
DATAFLUCTが提供するのは、データ基盤、データ分析、データ活用の3点すべて。この3つを包括的に幅広い企業に届けることによって、各専門家の手を借りなくても多くの人がデータ活用人材になることができます。活用人材が増えることでデータビジネスが活性化すれば、需要も増加します。そのために、「幅広い業界・産業のデータビジネスを一気通貫で手掛ける」というのが弊社の狙いです。
業界・分野を固定せず、さまざまな企業の課題解決に向けたデータ活用法を模索していく中で、マルチクラウドの運用やデータクレンジングといった技術が開発され、その技術を軸としてさらに新たなツールが生み出されていく。こうしたDATAFLUCTならではのデータサービスを、同社では「フルスタック(※)データサイエンス」と呼んでいる。
※フルスタック(full-stack):複数の分野にわたる技術や知識に精通していること
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クライアントとはまず「事業レベルでどんなインパクトを起こしたいか」をすり合わせしたうえで、「そのためにどんなデータを作るか」について相談します。その後、どんな特徴のデータエンジニアリングをするかなどを検討する、という流れをもって、フルスタックでサービスを提供していけるのが弊社の価値だと考えています。
日本企業のデータ活用を押し進めるための、「非構造化データの活用」に強みを持つデータプラットフォーム
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DATAFLUCTのコア技術となっているのが、先にも紹介したデータプラットフォーム「AirLake」だ。
現状、機械学習を用いたプロジェクトは、日本の企業にとって難易度が高いといわれている。その理由のひとつは、「データプラットフォーマーはほとんどが海外の企業であり、現在ローンチされているAIやビッグデータ関連のソリューションも海外製が多く、日本人が使うことを想定して作られていないため」と久米村氏は指摘する。そこで、DATAFLUCTは、日本のITリテラシーの状況などを鑑みた、日本人にマッチするデータプラットフォーム「AirLake」を開発した。
「AirLake」の大きな特徴のひとつは、コールセンターの会話などの「音声」、SNS投稿や提案書、企画書といった「テキスト」をはじめ「動画」「センサーログ」など、通常データベース化がされていないために検索や集計、解析に不向きといわれる「非構造化データ」を構造化し、データとして活用できることだ。
DATAFLUCTのソリューションは、自動化技術などを駆使してこのフェーズをシンプルにしている点が特徴であり、他社との圧倒的な違いです。「AirLake」ではあらゆる非構造化のデータを、ユーザーが数回クリック操作をするだけで構造化できるようにしました。また、UIを含め、ほかの操作も徹底的にシンプルにしています。
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また、こうした企業向けのプラットフォームは、フルラインアップで導入すると数千万円の負担になることもあるが、同社の場合は10分の1の価格で提供できるという。
これらを組み合わせることで最大のデータ活用効果を発揮でき、個別に複数のベンダーを利用したときよりも導入費用やオンボーディングのコストを抑えられるほか、開発スピードやデータ連携のレベルを向上させられます。
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複数領域への参入で得たデータや知見が促進させる、“自己強化のループ”
幅広い業界への参入は、DATAFLUCT自体にも、新たな価値をもたらしているという。まず、クライアント企業の課題に合わせたソリューションを開発・提供していくことで、蓄積されたデータやコア技術、データ活用のノウハウが「AirLake」の強化に反映される。
さらに、関わったスタッフが各業界のビジネス知識を得ることで、対応できる領域も広がっていくからだ。こうした“技術の蓄積ループ”と“事業開発ループ”が、同社の事業を広げていくための自己強化へとつながっている。
また、DATAFLUCTのもうひとつの特徴として、「ビジネスにこだわる」点が挙げられる。前出のとおり、同社が目指すのは、単なるデータ分析会社ではなく「企業と共に、データ活用で社会課題を解決するビジネスパートナー」だ。高度なデータ分析を、さまざまな産業や企業が使えるようにすることで、すべての企業がデータに基づく持続可能な意思決定をできる世界の実現を目指している。
そのために、技術の保有にはこだわらず、企業(業界)ごとの課題の解決のために必要なデータとアルゴリズム、クラウドを選定し、データの専門家ではなくてもクライアント企業自身が自走しながら使えるソリューションを提供している。
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さらに同じ企業の中でも、「分析部」「生産部」「人事部」など部署ごとに課題が異なるケースが多いことから、現場それぞれの課題に合わせた解決用ソリューションの開発も考えているという。
そこで弊社は現場ごとの課題に合ったアプリケーションを作り分けながらも、データプラットフォームは共通で提供する方法を取りました。新たな課題や相談があれば、そこに合わせた新たなアプリを作る。そうして生まれた技術や経験をもとに、また新しいプロダクトを生み出し、展開することを繰り返していけるとよいと考えています。
開発力・技術力の源泉は、各領域に精通する多才なメンバー。基盤の強化とアップデートで日本のデータ活用推進を
最後に、ここまで紹介したビジネスモデルを支えるものは何かを尋ねると、幅広い領域の知見をもったスタッフ(人)であるという。
DATAFLUCTには、A.T.カーニー シニアパートナーとして通信・メディア・ハイテクセクターを担当し、情報通信業界のビジネスに豊富な知見と経験を有する吉川尚宏氏(取締役CSO/インパクトテック事業本部長)をはじめ、マイクロソフトでテクニカルトレーナーをつとめ同社のクラウド技術をコーチングしてきた原田一樹氏(執行役員CTO/クロスファンクショナルユニット長)など、事業開発と技術の両面で独自の得意分野を持つプロフェッショナル人材が在籍。さらに全員が自律して課題を発見し、解決の道筋を見いだしていける存在だと久米村氏は言い切る。
「データを商いに」のビジョンのもと、すべての産業にデータ活用を届け、ビジネスを通して社会課題を解決するDATAFLUCT。今後もデータプラットフォームの強化とアップデートを繰り返しながら、データ活用を通した日本企業のビジネス変革を目指していく。