松尾豊さん「『国がAIをやります』と言っても意味がない」DCON2020レポ

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画像は『人工知能は人間を超えるか』(KADOKAWA)などの著書でも知られる松尾豊さん

日本ディープラーニング協会(JDLA)は8月22日、「第1回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2020(DCON2020)」本選を開催した。

DCON2020は、高専生が日頃培った「ものづくりの技術」と、人工知能(AI)分野でとくに成果を出す深層学習(ディープラーニング)技術を活用して、事業の評価額を競うというもの。本選には書類審査による1次審査、プロトコルによる2次審査を勝ち抜いた11チームが出場し、事業化を想定して作品をプレゼンする。

審査は、実際のスタートアップ企業を評価する際と同じ基準で、新たなビジネスにどれほどの価値があるのかを判断。バリエーションは売り上げや利益の見込みに加え、事業の意味や経営者の想いや資質なども判断材料にする。投資家による投資金額の判断で、会社の株式価値が決定。企業評価額に加え、投資額により、順位が決まる。

松尾豊さん、音楽クリエイターのヒャダインさん、タレントの小島瑠璃子さん(左から順に)

実行委員長は『人工知能は人間を超えるか』(KADOKAWA)などの著書でも知られる、東京大学大学院工学系研究科 教授で、JDLA理事長も務める松尾豊さん。早稲田大学基幹理工学部表現工学科 教授で、JDLA理事も務める尾形哲也さんが松尾豊さんとともに技術面を評価している。

松本真尚さん、仁木勝雅さん、河合将文さん、郷治友孝さん、川上登福さん(左前列から順に)

審査員には、株式会社WiLの松本真尚さん、株式会社ディープコアの仁木勝雅さん、DBJキャピタル株式会社の河合将文さん、株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)の郷治友孝さん、株式会社IGPIビジネスアナリティクス&インテリジェンスの川上登福さんが集まった。

岡田陽介さん、田中邦裕さん、小野裕史さん、草野隆史さん、渋谷修太さん、岩佐琢磨さん、佐藤聡さん(左から順に)

各チームのメンターは、株式会社ABEJAの岡田陽介さん、さくらインターネット株式会社の田中邦裕さん、インフィニティ・ベンチャーズLLPの小野裕史さん、株式会社ブレインパッドの草野隆史さん、フラー株式会社の渋谷修太さん、株式会社Shiftallの岩佐琢磨さん、connectome.design株式会社の佐藤聡さん、株式会社高専キャリア教育研究所の菅野流飛さん、ボストン コンサルティング グループの折茂美保さん、株式会社プレックスの黒崎俊さん、Sansan株式会社の寺田親弘さんが担当する。

企業評価額は5億円「いきなり世界にいけるのではないか」

優勝した東京工業高等専門学校のプロコンゼミ点字研究会

それでは、さっそく気になる優勝チームを見ていこう。数ある高専生によるチームがあるなか、1位に輝いたのは東京工業高等専門学校のプロコンゼミ点字研究会。企業評価額は5億円、投資額は1億円と評価された。

昨年、プロコンゼミ点字研究会は視覚障がい者に「娘が小学校からもらってくる手紙がまったく読めない」という相談を受け、「:::doc(てんどっく)-自動点字相互翻訳システム-」の開発に乗り出した。

東京工業高等専門学校のプロコンゼミ点字研究会によるプレゼンの様子

本作品は、視覚障がい者が自分自身で墨字(紙の印刷物)をスキャンすることで、全自動で点字として出力できる。点字をスキャンし、全自動で墨字(すみじ)として出力することも可能。これにより、視覚障害者が印刷物の内容を把握したり、自分が点字で書いた書類を墨字として印刷して配布したりできるようになる。

草野隆史さん

同チームのメンターを務める草野隆史さんは「彼らは情熱がすごくて、『この課題は僕らの技術で、なんとかするんだ!』という想いでやっているので、途中から僕もコンテストのためにアドバイスしているのか、本当に起業のためにやっているのか、わからなくなるほどでした。この結果は素直にうれしいです」と笑みを見せた。

松本真尚さん

審査員の松本真尚さんは「そもそも、(彼らは)点字という非常に深い課題を解決しようとしています。この課題を解決しようと思っている世界中のベンチャー企業は、そんなにたくさんいないのではないか。『競争がないところで戦う』というのは、すごく正しいビジネスだと思います。点字は世界中の共通語ですから、いきなり世界にいけるのではないかという部分も評価しました」と、今後の期待を込めながらも、評価の理由を語った。

「先輩が頑張って、後輩がそれに続く」を実現したい

松尾豊さん

松尾豊さんは総評として、「今回、本当に感動しました。非常にレベルが高かったですし、コロナで大変ななか本当によく頑張ってくださったと思います。(中略)しかも、厚みが出てきていると思います。プレゼンの質も非常に上がっていると感じました」と述べている。

続けて、今後の展開については、「昨年のプレ大会で優勝したチーム、準優勝のチーム、それぞれ起業しています。起業した会社がまた大きくなって、バリエーションを上げて、いずれ上場するところも出てくると思います。上場してさらにグローバルに事業をどんどん広げていっていただきたい。このように『先輩が頑張って、後輩がそれに続く』ということを実現したいと思っています」と期待を語った。

「『国がAIをやります』と言っても意味がない」

さらに、松尾豊さんは今回のテーマと日本の強みに言及し、「今回はハードウェア×ディープラーニングということで、いろんな技術があるところに、ディープラーニングの技術を組み合わせて、ビジネスの課題を解く(というテーマでした)。僕はこのような『すりあわせ』、言わば『いろんな技術の引き出しを持ち、上手に組み合わせて、現場の身近な課題を解く』ということが日本の強みではないかと思います」と話す。

最後に「アメリカや中国ではAIの技術が非常に伸びてきています。しかし、日本には日本のやり方があります。『国がAIをやります』とか『研究者がすごい研究をやります』と言っても、あまり意味がありません。『現場の技術者が自分たちの創意工夫で、何か新しいものを生み出す』ことが、経済の成長を生み出していく本当の基本なのではないかと思っています。(今回のDCON2020では)それをまさに体現していただいたと思います」と本選を締めくくった。

なお、松尾豊さんへのインタビュー取材は『松尾豊さん「AIのチャンスを掴めるのは若者だけ」』をチェックしてほしい。