松尾豊さん「AI研究は米中がトップ」日本は……?

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日本ディープラーニング協会(JDLA)は9月18日、「第1回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2020(DCON2020)」の一環として、東京大学大学院工学系研究科 教授で、同協会の理事長も務める松尾豊さんによる、最優秀賞受賞の東京工業高等専門学校への表敬訪問を実施した。

その際に、松尾豊さんに日本の人工知能(AI)教育やAI活用の状況についてどう考えているか、少しだけお話を聞く機会を得た。改めて紹介するまでもないが、松尾豊さんは『人工知能は人間を超えるか』(KADOKAWA)などの著書でも知られる、AI研究の第一人者である。

AI研究は「米中の両国がトップ」日本は?

まずは、「現在の日本のAI研究はアメリカや中国と比較して、どのように位置にあると考えているか?」聞くと、松尾豊さんは学術面について「米中の両国がトップで、その後にイギリス、カナダ、ドイツ、シンガポールなどが続き、日本はまだその下という感じだと思います」と話している。

また、産業面については「やはり、米中の両国がインターネット産業を中心にAIの応用や実世界での活用を進めています。日本は独自のインターネット産業がない(弱い)ため、ほかの製造業や医療をはじめ、さまざまな産業での活用が期待されますが、それほどスピード感をもって進展してはないと思います」と語る。

日本のAI教育「いまのところ効果的なものはない」

さらに、「日本のAI教育は、海外と比較してどうか?」聞くと、松尾豊さんは日本について「国内でもいろいろな動きはありますが、いまのところ特段効果的なものはないと思います」と述べた。JDLAのG検定は3万人を輩出しており、日本国内ではもっとも規模が大きいと思われるが、国全体への効果は限定的というのだ。

一方で、海外については「中国ではかなり効果的にAIの教育が入っていると思います」と話す。米国をはじめ英語圏では、有名大学の講義が受けられるオンライン教育プラットフォーム「Coursera(コーセラ)」などのオンラインでの教育が有効であると指摘している。日本はこのような状況にはほど遠いと言える。

日本の強みを生かせる若者たちが状況を変えるか

DCON2020本選の総評のなかで、松尾豊さんは「アメリカや中国ではAIの技術が非常に伸びてきています。しかし、日本には日本のやり方があります。『国がAIをやります』とか『研究者がすごい研究をやります』と言っても、あまり意味がありません。『現場の技術者が自分たちの創意工夫で、何か新しいものを生み出す』ことが、経済の成長を生み出していく本当の基本なのではないかと思っています。(今回のDCON2020では)それをまさに体現していただいたと思います」と語っていた。

さらに、終了後のインタビューでは、松尾豊さんが若者たちに期待することとして、「若者は自分たちの持つ可能性に気づいていないと思います。日本全体が高齢化しているなかで、固定観念に囚われているところがあります。(中略)可能性に対してもっと自覚的になってほしいです。自覚的になって、どんどん自分のやりたいことをもっと広げていくことが、日本全体にとっても経済成長につながると思います」と話す場面もあった。

まだまだ先進国のなかでは日本のAIは研究、活用、教育あらゆる分野で進んでいるとは言いがたい。教育やビジネスなどにおける抜本的な改革はもちろん、DCON2020本選に参加したような、日本の強みを生かせる優秀な若者たちがこの状況を変えていくことにも期待したい。