2月17日〜18日の2日間で、中高生向けのディープラーニング体感ワークショップ「ディープラーニングの学校」が、下記企業の共同開催という形で開催されました。
NHKスペシャルやBS巻頭言、最近では「人間ってナンだ~超AI入門」などの番組で、世界の人工知能の最前線を紹介してきた番組制作会社。2017年、「ディープラーニングの学校」プロジェクトを発足。ライフイズテック株式会社
国内最大級の中学生、高校生を対象としたITキャンプ/スクールを実施するLife is Tech(ライフイズテック)。「ディープラーニングの学校」のカリキュラム・教科書の作成や運営を担当。
株式会社Qosmo
Computational Creativity and Beyondをモットーに、AIを用いた作品制作、アルゴリズミックデザインなどを手がける。「ディープラーニングの学校」の技術監修を担当。
世界のAI企業が必要としているAI人材の数は、推定100万人と言われています。これからAI人材の母数を増やすには、ライフステージのできるだけ早い段階から、AIに触れる機会を増やす必要性があります。
しかし、大人でも、AIについて学ぶのは骨が折れるもの。実際に中高生がAIについて学ぶのって結構難しいのでは……? 果たしてどのようなイベントなのか、以下レポートです。
モデルを作成し、アウトプットまで実践
イベントは、1日目にはAI全般に興味をもってもらうためのワークショップがおこなわれ、2日目はAI開発を実践する形で進みました。

実践は大きく2回に分かれており、1回目は、グループにわかれて犬猫の判定器を作成。ちなみに、環境はAWSのGPUへアクセスして動かしているとのことで、このワークショップだけのために構築した環境だそう。
具体的な実習のフローは以下のようになっています。
- web教科書を使い、ディープラーニングについて学ぶ
- Jupyter Notebook上でPythonコードを実際に書き、モデルを作成
- 犬と猫の画像データセットを学習させる
- 犬猫以外の画像も入力してみて、犬寄りか、猫寄りかなどを判定して楽しむ
このようにして、基本的なPCの操作から、実際にコードを書くということや、AIとはどうやって学習を重ねていくのか、などを一気通貫で学習できるワークショップとなっていました。
実践の2回目は、グループごとに担当をひとり決め、ひとりひとり別々の画像を学習させていました。

- Jupyter Notebook上でPythonコードを書き、モデルを作成
- 犬猫だけでなくさまざまなジャンルの(楽器、スイーツ、乗りものなど)のデータセットを学習させる
- 自分の顔やそのほかの画像を読み込ませて判定して遊ぶ
- 保護者と一緒に自分たちで作ったAIに触れる
教える側も芸能人の画像を学習させて判定機をつくり、自分たちの顔写真を読み込ませて誰に似ているかを判定したりと、盛り上がっていました。ここまでやれば、これまでAIになじみがなかった子でも、ハードルがぐっと低くなりますね。
東大の山崎准教授が語る、これからのAI学習に必要な要素
今回の講義では、AIの学習1時間ほどかかりました。学習を進めている間に、東大情報理工学系研究科 電子情報学専攻 准教授 山崎俊彦先生から子供たちに向けて、AIを自分で勉強するために何が必要なのかといったお話を伺う機会も盛り込まれていました。
「AIをこれから学ぼうと思っている中高生のみなさんには、数学、英語、国語を重点的に勉強してほしいです。特に数学を理解していないと、ある一定までレベルアップしたときに、そこから上がれなくなってしまいます。」
数学、もっと勉強しておけばよかった教科のひとつです……。AIの最新情報は基本的に海外発信なので、英語はもちろん必要になるし、論理的思考力という意味で国語も必要とのこと。さまざまな能力を総合的に身につけることが求められますね。
理論ではなく、感覚で構造をつかんでもらう
個別でお話を伺った、主催社のひとつであるライフイズテックCTO 橋本さんによれば、今回は中高生に技術的なことを学んでもらうよりも、持ち帰ってもらう知識のレベルを下げてでも「面白い」と思ってもらうことを重視してプログラムを作成したそう。
知識を10持ち帰ってもらうよりも、『面白い』『自分で勉強してみよう』と思ってもらうことの方が大切です。そのため、技術監修のQosmoさんにもご助言いただき、本質を理解してもらうためのワークに重点を置きました。
たとえば、1日目には、ニューラルネットワークの構造を直感的に理解してもらうため、グループに分かれて、以下の伝言ゲームのようなワークを行なったとのこと。
- ひとりめが動物の写真を見て、その特徴を抽象的な記号で表した紙を次の人に渡す
- 次の人はその記号を見て動物を想像し、記号を追加して次の人にまわす
- 最後の人は渡された記号をもとに、なんの動物かを判断する
少しずつ形を変えて、次の人に情報を渡していく様子をニューラルネットワークにたとえている取り組みですね。
今でこそ、無料でディープラーニングを学べる講座や教材は出てきていますが、本来は大人でもゼロから理解するのは骨が折れるもの。中高生向けだからこそ、理論的ではなく、先に本質を理解することは重要なんですね。
重要なのは興味を持ってもらう「きっかけ」づくり
単純ですが、「面白い」と思ってもらうことって、何かを普及させるときに、きっかけとしてもっとも有効な手段だと思います。今回参加していた中高生たちは、本当に楽しそうにAIに触れていました。彼ら/彼女らは、今回をきっかけに自分たちでAIを学び始めるかもしれません。
これからのAI人材普及の鍵になりうるイベントなので、Ledge.aiでも引き続き追っていきたいイベントです。