Google傘下のDeepMindが、メキシコのカンクンで開催されたタンパク質の構造予測コンペで1位を取ったとのこと。そのAIの名前は「AlphaFold」。あのAlphaGoを彷彿とさせます。
何が起きたのか?
DeepMindは、世界各地の研究グループを集めたタンパク質の折り畳み(フォールディング)を解析するCASP(Critical Assessment of Structure Prediction)コンペティションにAlphaFoldを投入。アミノ酸の配列からタンパク質の構造を予測するこの大会で、他の参加者を大幅に上回る精度を叩き出しました。
タンパク質の折りたたみ問題とは?
そもそも生物はタンパク質でできており、生物の機能はタンパク質の形状によって決まります。
人体は膨大な数の異なるタンパク質を作ることができ、推定値は数万から数十億に及びます。アミノ酸は20種類あり、これらのアミノ酸の配列によってタンパク質の立体構造は変わってきます。そして何百ものアミノ酸を持つタンパク質は、グーゴル(10の100乗)の3乗、つまり1の後に300個の0が付く量の構造の数にまで登る可能性があります。
タンパク質の形状は、それが含むアミノ酸の数とタイプに依存します。また、形状は身体における役割を決定します。たとえば心臓の細胞は、血流中の任意のアドレナリンがそれらに粘着し、心拍数を上昇させるように折り畳まれたタンパク質が点在。
一方、免疫系の抗体は、侵入しているばい菌を掴むなど、特定の形状に折り畳まれたタンパク質です。筋肉を緊張させ、光を感知して食べ物をエネルギーに変えることから身体のほとんどすべての機能を、タンパク質の形や動きで説明することができます。
通常、タンパク質はエネルギー効率が最も良い形状をしていますが、一方で、正しく折り畳まれていなければ、糖尿病、パーキンソン病、アルツハイマー病などの障害につながる可能性もあります。
つまり、アミノ酸の配列からタンパク質の形状を予測できれば、タンパク質がどのようにして体に害を及ぼすに至るのかがわかります。つまり、対策が打てるようになるということ。まさにAIが科学・医療を塗り替えようとしています。
圧倒的な一位を獲得したDeepMindは何をしたのか?
DeepMindはAlphaFoldを構築するために、アミノ酸のみから3D構造を予測できるまで、何千もの既知のタンパク質のニューラルネットワークを訓練しました。
AlphaFoldは新しいタンパク質を扱うために、ニューラルネットワークを使用してアミノ酸同士の距離と、それらを接続する化学結合の間の角度を予測。その後、最もエネルギー効率の良い配置を見つけます。このプログラムは、最初のタンパク質構造を予測するのに2週間かかりましたが、今は数時間でそれらを予測可能だそう。
科学を大きく進歩させる。科学 × AIの可能性
DeepMind CEOのデミス・ハサビス氏は
「タンパク質の折り畳みの問題は解決していないが、これはほんの最初のステップだ」
と語ります。
2016年にトップ棋士イ・セドルを倒したAlphaGoなど、目覚ましい技術を次々に発表してくるDeepMind。これによって新薬の開発も一気に進むかもしれません。AIが科学すらも塗り替えてくれることに期待です。