たった一日で学習モデルを生成。AI実証実験までをワンストップで実現する「DeLTA-Family」

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8月31日に開催された、組込み型ディープラーニングの研究・開発で存在感を見せるLeapMind主催のカンファレンス「DeLTA TECH 2018」。

カンファレンスでは、LeapMindが持つ高い技術力と培ってきた知見を通して、AIをどうビジネスに導入するのか、どのように現場に取り入れることができるのか、「AIを開発・導入したい!」けれども、一歩が踏み出せない……。そんな悩みに寄り添う議論とプロダクトが展開されていました。

記事前半ではカンファレンスの講演をピックアップして紹介、そして後半ではカンファレンスにも登壇されたプロダクトマネージャーの安村 修一氏にお話を伺い、LeapMindが提供する「DeLTA-Family」の実力と今後のさらなる展望について、お届けします。

DeLTA TECH 2018 ── 『DeLTA-Family』エコシステムでAIの“実活用”を加速する

大きく技術編とビジネス編に分かれていたカンファレンス、今回はビジネス編の講演にフォーカスしたダイジェストをお届けします。

シンギュラリティなんて来ねえよ、2018年夏。

最初に紹介するのは、ここ数十年間AIがどう捉えられてきたか、その変化と誤解を「シンギュラリティなんてこねえよ」と一蹴した、LeapMindのCRO、兼村 厚範氏による講演です。

兼村 厚範
Chief Research Officer & Chief Scientist, LeapMind Inc.

京都大学大学院情報学研究科修了、博士(情報学)。大学や国研などを経て2018年7月にLeapMind株式会社にChief Research Officer & Chief Scientistとしてジョイン。ヒトを取り巻く様々なデータを知的に解析し、ヒトを支援する技術の研究開発を推進。産総研招聘研究員、ATR客員研究員などを併任。日本神経回路学会論文賞など受賞。

――兼村
「1950年代以降、何度もAIブームが来ては去っていっています。ブームの最中にはヒトのように考えて動作するAIがあたかも実現されたと宣伝しているような研究プロジェクトや商品が数多くありました。

しかし、当時の技術が実際に我々の生活に及ぼした影響は限定的で、影響がほとんどなかった失敗例が大半を占めていました。また、大きな影響があり生活が便利になったものの、ヒトのような知能は実現しているとは決して言えない技術など、過剰宣伝と言われても仕方のない事例が多数あります」

人工知能という言葉は、それが示唆する万能性から「宣伝文句」として便利に使われてしまっています。ですが、研究・開発にあたっては実際の技術内容を正確に理解する必要があると兼村氏は指摘します。

この意識のままでは「シンギュラリティなんてこねえよ」とのこと。

研究者として「技術内容を理解し、地に足の着いた開発」で、真のシンギュラリティを目指すべきだと語りました。

全てを解決「しない」AI-Deep Learning実用化をもたらすDeLTAのエコシステム

続いて登場したのは、LeapMindのフィールドアプリケーションエンジニア(FAE)、野尻尚稔氏。ディープラーニングモデル構築に必要な学習データ作成からハードウェア上での評価までワンストップで実現する「DeLTA-Family」の具体的な活用方法を紹介しました
※DeLTA-Familyの機能については記事後半で解説しています。

野尻 尚稔
FAE, LeapMind Inc.

米国系半導体ベンダにてCPUとDSPをベースとしたデバイスの設計に従事した後、コンフィギュラブルプロセッサIPのFAE、システムレベル設計環境、プロセッサIP、システムIPのFAEとして国内半導体ベンダの数々のプロジェクトを支援。2018年4月よりLeapMind株式会社にジョイン。

――野尻
「組込みディープラーニングがうまく活用できるアプリケーションには、

  • 省スペース・省電力
  • セキュリティ
  • リアルタイム処理
  • インターネットなし

という、4つのポイント(要件)があります」

――野尻
「『自動運転』や『ドローンによる建物点検』などが、これらに当てはまるアプリケーションですので、組込みディープラーニングが活用できます。DeLTA-FamilyのDeLTA-Liteでモデルを生成し、生成したモデルをDeLTA-Kitを使いハードウェアに組み込むことができます。

しかし、DeLTA-Kitは実運用には適していないので、今後パートナー様と連携して実運用ボードの設計や製造から、IoTプラットフォームを利用したエコシステムの実現を目指しています」

DeLTA-Familyが重視するのが、“AIのビジネス導入”。目的はAIエンジンや専用デバイスを提供することではありません。AIのハードルを低くし、操作は簡単に、かつ現実的にビジネスへの導入を実現します。

組込みディープラーニングが実現する世界

DeLTA TECH、最後に登壇したのは、LeapMind CEOである松田総一氏。

松田 総一
代表取締役CEO, LeapMind Inc.

エンジニアのスキルを可視化・マッチングするサービスを2010年に立ち上げ、シンガポール支社を設立同事業を事業譲渡。その後、個人投資家からの出資と自己資金で2012年LeapMind株式会社を設立。インターネットと同じくらい重要な技術である「ディープラーニング」をあらゆるモノに適用させる「DoT(Deep Learning of Things)」を加速させるため、ディープラーニング技術を「コンパクトに、シンプルに」する組込み向け技術を開発・提供。

――松田
「我々は、DeLTA-Familyなどのパッケージを活用することで、ディープラーニングを搭載したアプリケーションを世の中に増やしていきたいと考えています。

現状、ディープラーニング運用には、GPUによるソリューションしか存在していません。LeapMindはそこに、FPGA小型チップという、新たなマーケットを生みたいと思っています」

LeapMindはDeLTA-Familyを始めとする、エコシステム構築に向けて積極的に技術開放していくと言います。

――松田
「LeapMindのミッションは『DoT(Deep Learning of Things)』の実現であり、機械に認知能力を持たせ、人間と機械の境目をできるだけなくすことです」

DeLTA TECHの各講演からも分かるように、やはりコアとなるのは「DeLTA-Family」。

ではDeLTA-Familyは具体的に何をして、どれくらいインパクトがあるプロダクトなのか、専門知識不要でAI開発は本当に可能なのか?

DeLTA TECH 技術編にも登壇された安村氏に、DeLTA-Familyのもう少し踏み込んだお話を伺いました。

専門知識不要。ディープラーニング学習モデル生成から組込みをワンストップで実装

――ディープラーニング設計に欠かせないのが「データ」ですが、データを用意した“その次にすること”から、DeLTA-Familyが支援してくれるのでしょうか?

安村 修一
法政大学大学院情報電子工学専攻修了。株式会社三菱東京UFJ銀行にて国内勘定系ホストおよび業務支援システムの開発担当・プロジェクトマネージャーを経験。プロダクト開発マネージャーとして、組込みDeep Learningモデル構築ソリューション「DeLTA-Lite」の開発に従事。
――安村
「データ収集後にする作業として、データに意味付けをする、アノテーションというプロセスがあります。その作業は、DeLTA-Markを使えば、GUIによる簡単な操作で行えます。

利用者が操作しやすいよう設計されたインターフェースで、誰でも使いこなすことが可能です。さらに存在するモデルを用いたアノテーションの半自動化も予定しています」

半自動である程度のラベリングをDeLTA-Mark上で済ませることで、ユーザーは確認作業のみ、もしくはちょっとした修正で済むようになるそうです。

何にどのラベルを振り分けるかのラベル付け作業は、人間なのでどうしてもズレが生じます。DeLTA-Markには、ラベル付けのクオリティコントロール機能も付いているため、そういった問題も解決できます。

データ準備の次は、いよいよモデル生成です。

――安村
「ディープラーニングの設計、モデル生成サービスがDeLTA-Liteです。

AI開発において最もハードルが高いのが、専門知識と高い技術力が求められる学習モデルの生成かと思いますが、DeLTA-Liteを使えば、データをアップロードし、マウス操作するだけで学習モデルの生成が可能です。

人手では約3ヶ月ほどかかるモデル生成も、DeLTA-Liteを使うことでたったの1日程度で終わってしまいます」

データの整形からモデル生成まで、あらゆるハードルと時間を振り切ってますね。

もちろん、生成されたモデルはハードウェア組込みに対応した形で、合成・圧縮までも自動で行うことが可能と、至れり尽くせり……!

――安村
「生成したモデルを検証するのが、DeLTA-Kitです。カメラとボードが入っており、ケースから出して、マニュアルに従うだけで、即座にハードウェアでの精度検証などが可能になります」

精度は同型モデルとほぼ同等。追加学習も可能に

――生成された学習モデルの精度は、どれくらいなんでしょう?

――安村
「生成されたモデルは、FPGA小型チップ組み込みに最適化されているので、従来のモデルとの単純な精度比較は難しいですが、同型モデルの精度とほぼ同等の精度が出ます。」

安価で低電力なFPGA小型チップ組み込みを可能にするため、独自研究を重ねモデル開発するLeapMind、その技術力の高さと努力が垣間見えます。

――安村
「必ずしも精度が保証されるわけではありませんが、追加学習というプロセスも今後サポートしていく予定です」

データに大きく依存するディープラーニング。再学習が必ずしも精度向上に繋がるとは限りません。“やってみないとわからない”、そのアクションをしやすいのも、DeLTA-Familyの魅力です。

ディープラーニングモデル版のApp Storeができる?

――DeLTA-Family導入の費用と期間、気になります。

――安村
「DeLTA-Lite初期費用が100万円、DeLTA-Markは10万円です。月額料金はどちらも10万円〜です。DeLTA-Kitは、無償モデルをダウンロードできる「Modeliteアカウント」込みで18万円です。

導入期間は規模にもよりますが、PoC検証期間が3ヶ月から半年、実際にハードウェアで動かし、調整などで半年ほど。最低でも合計9ヶ月から1年ほどの期間は要します」

――安村
「今後の展望としては、まずはエコシステムとしてAI開発・運用をDeLTA-Familyで全て解決できる形に仕上げたいと考えています。

あとはオープンなコミュニティも作りたいと思っていて。その一環として、App Storeのような、ユーザーが作成したモデルを公開、売買可能なプラットフォームの開発も視野に入れています」

モデルを公開、売買可能なプラットフォーム。非常におもしろい構想です。

LeapMindが目指す、IoTの次にくるDoTの世界は、ユーザーが好みのモデルをダウンロードし、あらゆるモノと簡単に連携できるようになっているのかもしれません。

Deep Learningがあふれる世の中の実現」に向かって突き進むLeapMind、今後のさらなる展開が楽しみです。