松尾豊氏がAIの未来を語る場面も、日立造船がAIビジネス活用で1位に

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日経クロストレンド EXPO 2020内において10月14日に、日本ディープラーニング協会(JDLA)が後援する「第2回ディープラーニングビジネス活用アワード」の表彰が開催された。

本アワードでは、人工知能(AI)分野で、とくに成果を出す深層学習(ディープラーニング)技術を活用することで、新たな事業を生み出した取り組みなどを企業から募集し、とくに優れた事例を表彰した。

なお、審査員は東京大学大学院 工学系研究科人工物工学研究センター技術経営戦略学専攻 教授の松尾豊氏、東京大学総長室アドバイザーの吉本豊氏、エヌビディア エンタープライズ事業部 事業部長の井﨑武士氏、パロアルトインサイト CEOかつAIビジネスデザイナーの石角友愛氏、日経クロストレンド 編集長の吾妻拓氏、日経Robotics 編集長の進藤智則氏が務めている。

日立造船の発電所などに使える検査システムが大賞に

数ある企業のなかから、大賞に輝いたのは日立造船株式会社だった。同社はプラントや発電所などに使われる、熱交換器の損傷を検査するためのシステム「AI超音波探傷検査システム」を手がけている。

従来は、超音波検査結果の画像データを検査員が目視で判断するため、気の遠くなるような作業が必要だったという。そこで、画像データの解析にディープラーニングを活用し、高い精度での自動化を実現することで、解析時間とコストの低減に成功した。

開発した検査システムを競合も含む、他社の品質検査に提供する取り組みも開始。プラント設備のメンテナンスという分野で売り上げが増加している。

大賞として評価されたポイントとしては、日本が得意とするものづくりの領域で、もともと持つ技術力にディープラーニングを組み合わせて成果を出した点が挙げられる。また、他検査などに応用できる可能性も認められた。

成功要因としては、「溶接超音波/人工知能技術者を社内で確保できたことで、必要な人材が集まり、高頻度のコミュニケーションが取れたことが大きかった」とのこと。

電通「まぐろの目利き」AIなど優秀賞に

また、優秀賞は株式会社ナビタイムジャパン、ヤフー株式会社、株式会社電通、ニューラルポケット株式会社、株式会社イクシスの5社が受賞した。それぞれ詳細は以下のとおり。

ナビタイムジャパンは「ディープラーニング活用の『ドライブレコーダーNAVITIME』アプリ」でモビリティ部門賞に輝いた。同アプリは、ドライブレコーダーで撮影した画像をディープラーニングで分析し、前方車両の接近を検知できる。

ヤフーは「不適切なコメント投稿を検知するAI開発」でメディア部門賞を受賞した。同AIでは、ディープラーニングを活用し、Yahoo!ニュースのコメント欄に書き込まれる不適切な内容を自動的に削除する。自然言語処理のなかでも、最新モデルの「BERT(バート)」というモデルを応用し、従来の機械学習より3倍弱検知数が高めたとしている。

電通は「TUNA SCOPE」で食部門賞を獲得した。同AIはディープラーニングの画像認識によって、尾の断面を見て良し悪しを判断する「まぐろの目利き」を代替した。目利き職人の後継者不足などの課題解決に貢献したことに加え、大手回転ずしチェーンや中国の市場で導入されている実績が評価された。

ニューラルポケットは「ファッショントレンド分析AI AI-MD」でファッション部門賞を勝ち取った。同AIはSNSやショッピングサイトなど、オンライン上の情報や画像データをディープラーニングを組み合わせて分析した。半年後のファッショントレンドを分析することで、ファッション業界の課題である廃棄を抑制し、利益率の向上に対しても実績を上げたという。

イクシスは「社会・産業インフラの生産性向上プロジェクト」でインフラ部門賞を獲得した。同プロジェクトでは、橋梁(きょうりょう)などのインフラやビルのコンクリートの損傷点検などに、ロボットとディープラーニングを組み合わせて活用。点検用画像をロボットで撮影し、解析にディープラーニングを用いるシステムで点検業務に掛かる作業を効率化した。具体的には、生産性を2倍にできたとしている。

そのほか、特別賞は日本気象協会と株式会社ユーザーローカルが受賞している。日本気象協会の「JWA-AI予測」は、スーパーコンピューターを使わずに雨量予測の精度を高めた。また、ユーザーローカルの「オンライン試験の不正抑止AI」は、オンライン試験でのカンニング防止に使用できる。

松尾豊氏「企業にとって『速さ』は『強さ』になる」

さらに、本アワードの表彰のなかでは、松尾豊氏が講演を実施した。

松尾豊氏は総評として、「いずれも大変素晴らしいプロジェクトで、ディープラーニングという技術が事業の付加価値につながってることがとくに素晴らしいです。『企業が技術に投資をし、結果的に事業も技術も伸びていく』ことが、これからの日本に必要だと考えています」と語った。

また、松尾豊氏はディープラーニング技術のビジネス活用について、「広がっていくディープラーニング活用事例は『速さ』に向かうと考えています。今回受賞された事例でも、ある業務を自動化することで速さを獲得した結果、『顧客対応のスピード』という付加価値が生まれ、事業の価値が向上していました」と言及している。

続けて、「これからの企業にとって『速さ』は『強さ』になるでしょう。デジタル技術の進展でデータによる価値創造サイクルが加速し、社会全体のスピードも上がります。さまざまな産業で製品のライフサイクルは短くなり、イチ企業が競争優位を保てる期間も短くなっている。このように企業のスピードも求められている状況において、AI、とくにディープラーニングの技術は有効です」と話す。

最後には、テクノロジーの行く末に関しても言及した。松尾豊氏は「最近では人間の指示を読み取り、計算やプログラミングなどのさまざまな作業を代替するようなことが可能になり、さらに多くのタスクがディープラーニングで自動化できるでしょう」とコメントする。

続けて、さらに具体的に「自然言語処理の進歩により、交渉・調整など複雑な作業まで、自動化できる可能性が出てきています。長期的な未来には、人間の知能の正体を解き明かすなど、根源的で大きなイノベーションにもつながってくるはずだと思っています」と講演を締めくくった。

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