EAGLYS株式会社は2022年11月10日、三井物産株式会社と秘密計算技術を活用した共同実証実験をおこなったことを発表した。
従来の技術では困難とされていた、データやアルゴリズムを秘匿した状態での企業間データ連携と秘密計算活用に関するもの。検証の結果、実用可能な処理速度・安全性を確認できたという。
機密性の高いデータをいかに扱うか?
今回の実証実験では、異なる研究機関・事業者が互いのデータやAIモデルの秘匿性と安全性を維持しながら連携しあえる秘密計算プラットフォームの構築と実用性を検証した。機密性の高いデータゆえの外部連携の難しさや、計算を担うAIモデルの開発コストの高さが実現に向けたハードルとなっている状況が、この実験の背景にあるという。
※秘密計算とは
データを暗号化したまま計算できる新しい概念の技術。秘密計算技術を用いることによってデータそのものと計算処理過程が暗号化されるため、個人情報や企業の機密データを活用するための匿名加工作業をせずに、複数企業間でも互いにデータ秘匿したまま連携・分析できるようになる
EAGLYSの秘密計算サービス:https://www.eaglys.co.jp/service#datasecurity
実証実験の概要
創薬・素材開発(MI)などのビジネス上想定されるいくつかのユースケースをベースに、EAGLYSのゲートウェイ型秘密計算ソフトウェア「DataArmor」を適用した秘密計算環境を構築し、秘匿状態で特徴量抽出からAIモデルの学習、推論までの処理がおこなえるか、安全性・実用性・機能性の観点から実用性を検証した。
AIモデル提供者及び分析データを持つ分析ユーザは、データやAIモデルを秘密計算環境へセットする際にそれぞれ固有のゲートウェイ(※図中のオレンジ色箇所)を通り、データやモデルを暗号化する。
暗号鍵はそれぞれのゲートウェイで保持することで、秘密計算環境上にて連携するデータやAIモデルと暗号鍵を物理的に分離。もしサイバーセキュリティ攻撃が生じた場合でも、中身が流出しないよう安全性を保った設計としている。
実証実験の結果
実証実験の結果は以下のとおり。
【安全性】:AIモデル、暗号鍵管理、入力/学習/推論など各要素のセキュリティ要件に沿った想定シナリオに対して安全性診断を実施。問題がないことを確認。
【実用性】:ロジスティック回帰で約24万件、 ニューラルネットで約9万件、Light GBMで約5,500件を1時間で処理がおこなえたことを確認。1予測あたり多層ニューラルネットで0.06~0.11秒程度、平文との比較で2.1~3.8倍程度のため、現実的な分析時間で処理が可能であることを確認。クラウド環境へのAIモデルホスティングの実行時間は0.3~0.8秒で、ほとんどタイムラグなくAIモデルを他社に共有できることを確認。
【機能性】:暗号状態でも正しい推論結果出⼒を確認、また共有したAIモデルでおこなった推論処理が単体のAIモデルで推論処理をおこなった場合と比べて各精度指標が向上したことを確認。
今回の実証実験を経て、三井物産株式会社 デジタル総合戦略部 部長補佐 林郁夫氏は以下のようにコメントしている。
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