ボストン小児病院の研究者が、従来をさらに上回る精度でインフルエンザの発生を追跡・予測できるアプローチを発表しました。
2008年から2015年にかけて運用されていた「Google Flu Trends」を凌駕
通常、インフルエンザの活動のリアルタイム追跡は、人々が動き回ったり、旅行したりするにつれて感染が容易に拡大するために困難と言われています。
今回発表されたのは、「ARGONet」と呼ばれるアプローチ。これまでの「ARGO」と呼ばれるアプローチよりも正確に予測を行います。
これまで使用されていたARGOでは、以下の情報ソースから得られるデータを使用していました。
- 電子カルテ
- インフルエンザに関するGoogle検索情報
- 過去のインフルエンザの発生記録
このARGOだけでも、2008年から2015年にかけて運用されていたGoogle Flu Trendsの精度を越えていたそう。
今回発表された論文のARGONetは、2014年9月から2017年5月までのインフルエンザシーズンに調査が行われ、調査が行われた州の75%以上でARGOよりも正確な予測を行いました。
ARGONetではARGOで使用していた電子カルテなどのデータに加え、近隣地域で広がるインフルエンザの時空間パターンのデータも使用。これにより予測の誤りを減らすのに貢献したといいます。
リアルタイム追跡により、より早急な対応を可能にする
ARGONetを使用することで、従来のインフルエンザレポートよりも1週間早く、かつアメリカ全土の州レベルでレポート作成を可能にしました。ボストン小児病院のComputational Health Informatics Program (CHIP)に属するMauricio Santillana氏、Fred Lu氏は、以下のようにコメントしています。
「インフルエンザをリアルタイム、かつ場所をまたいで追跡するこの手法は、インフルエンザのアウトブレイクを緩和し、当局が公衆のリスク意識を高めるためのコミュニケーション改善に大きく貢献するでしょう」
「今後、インフルエンザの検索ボリュームが増えれば増えるだけ、病院がクラウドベースの電子カルテシステムに移行すればするだけ、このシステムの精度は増していきます」
今回のアプローチが感染症の「精密公衆衛生」の基礎を築くと確信している、とのこと。世界中がインフルエンザに悩まされるこの時期、データドリブンな医療が実現が少しずつ近づいています。
Source:
Novel AI tool can predict how flu spreads
Scientists create AI tool that can predict spreading of flu
Using Artificial Intelligence to Predict Flu Activity