急成長ベンチャー企業フロムスクラッチの強者マーケターが考える『マーケティング』の今と未来

UU3200万!月間流通総額920億円!購買活動を具体的にデザインする。強者マーケター対談
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デジタルマーケティングのメディアをやっておいてなんですが、いろいろなところに行って取材をしていく中で、

「マーケティング」っていったいなんなんだろう…と思うことも正直あります。

よくイベントで登壇されているようなマーケターの方はどんなことを考えているんだろう?

ならばそのまま聞いてみようということで、今回は株式会社フロムスクラッチの三浦さんと兼本さんに

というかなり広めな切り口でインタビュー。

兼本さんは元ディズニーのマーケターということで、いつもとは違った視点からいろいろなことを伺えました。

いままで多くの経験をされたおふたりが語った『マーケティング』とは…

三浦將太:
船井総合研究所→リクルートマーケティングパートナーズ→株式会社フロムスクラッチ(執行役員)と長年マーケティングに関わり、現在はブランドコミュニケーションや組織開発、採用だったりと幅広く活躍。
兼本卓明:
ベイン・アンド・カンパニー→ストラテックスパートナーズ(創業)→ウォルト・ディズニー・ジャパン→株式会社フロムスクラッチ(執行役員)とコンサルティング、事業会社でのマーケティングと多岐にわたり経験。現在はマーケティング、セールス部門を束ねる

「売らなくていい」を実現するために

―今日はいろいろ聞きたいことがあるのですが、まずはマーケティングって広義ですよね。いったいマーケティングってなんなんでしょう。というところからザックリと伺いたいです。

三浦さん

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三浦さん
マーケティングという言葉や職務の定義は様々だと思いますが、僕らの場合、マーケティング業務のKGIは自社プロダクトである「B→Dashの導入数を増やす」になります。

そこに繋がるまでの各プロセスやパイプラインの最適化や管理がマーケティング業務の主ミッションです。

また、一口にマーケティングと言っても各プロセスごとに求められるミッションやKPIは異なります。

例えば、リード創出以降のプロセスにおけるセールス&マーケティング活動は、いかに1件1件をコントロールして成約につなげるられるかにこだわらないといけませんし、リード創出に至るまでのプロセスに至っては、いかに認知してもらうか、そして欲求を喚起して問い合わせなどのアクションにつなげられるかにこだわらないといけません。

特に、B→Dashのような比較的新しいコンセプトのプロダクトは、カテゴリ認知もプロダクト認知も低いので、マーケティングの上流プロセスが鍵を握ります。

そういう意味ではディズニーって、ほとんどの方が知っているブランドなので、またマーケティング活動の考え方も違いそうですね。

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兼本さん
ですね。

既に日本全国知れ渡っているブランドなので、認知に苦労するということはありません。

“新規で認知を醸成する”ということはなく “よりコアなファンになっていただくためのマーケティング”が活動の大半を占めます。

マーケティングの1つの理想形はこちらから売らなくていい状態をつくることだととらえています。

企業側が頑張って売らなくても勝手に欲しがってもらえる状態が理想です。

マーケティングを突き詰めていった先は“PUSHしなくていい世界”なんだろうと思います。

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Ledge編集部
なるほど。需要を喚起して、需要 > 供給になれば、売らなくても売れていく…まさに理想ですね。
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兼本さん
今思うと、ディズニーはそれに近いなと思います。

コアなファンの方が既に世界中にたくさんいて、そんなファンに支えられていました。

より喜んでもらえることが購入していただくことにつながっているという感覚です。

いまのフロムスクラッチのステージとはまったく違います。

ディズニーでは、認知形成やデマンドジェネレーションのプロセスをあまり気にしたことはありませんでした。

それよりも「良い商品をどう作るか」に徹底的にこだわれば、販売チャネルも豊富にあったので“自然と売れていく状態”をつくることができました。

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兼本さん
BtoB、BtoCという大きな違いをわかった前提のうえで話しますが、フロムスクラッチでは、まずは認知をあげないといけません。

会社を知ってもらわないといけない。プロダクトを知ってもらわないといけない。欲しいと思ってもらわないといけない。すべてのプロセスをどう底上げしていくか。

歴史やブランドのある企業と比較すれば、今のフロムスクラッチはすべてのプロセスにおいてまだまだやれることはあります。

理想とする「売らなくてもいい状態」というゴールに向けて、すべてを底上げする必要があります。

マーケティングの考えはどこでも同じ。正しくデータを持つことの重要性

―ディズニーとマーケティングオートメーション(MA)。まったく違う市場ですが、共通点もあるんですか?

兼本さん

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兼本さん
マーケティングの考え方は同じです。

どのプロセスにボトルネックがあるかを明らかにし、そこを改善していくという活動を徹底していくことに変わりはありません。

ディズニーの場合は、それらすべてが高い水準にある特殊なブランドなので、最終的に商品力やコンテンツによって素直に成果がでていた。

今は、そのボトルネックを一つずつ改善していく必要があります。

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Ledge編集部
ボトルネックですか…。それぞれのプロセスに分けて考えたときにどの部分が弱いか…ということですかね。

そういう意味でいうとMA市場全体ではボトルネックってどうですか?

認知に関していえば、1年前はMAって何?っていう感じでしたけど、もうだいたいMA自体も理解されてきたといった感じですかね…?

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三浦さん
いえ。確かに認知は進みましたが、未だ本質的な理解にまで至っていないという印象を持っています。
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三浦さん
すべてのサービスや商品がライフサイクル上の“キャズム”を超えて普及するかというとそうじゃありません。

MAもまずは先進的な企業の一部が導入して、成功事例や成功体験が普及していくことで「MA使っていて当たり前」という空気が醸成されていきます。

しかし、現状はそうなっていません。

むしろMAの使い方自体が間違っていたり、ベンダー側が正しくレクチャーできていないため、失敗事例も増えてきている状況です。

そのため、導入が爆発的に進んでいるわけでもありません。

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兼本さん
MAという言葉自体、かなり色々な捉え方をされています。

MAを魔法の杖のように導入すれば全て自動化していくと考えている方もまだいるのが現状です。

“マーケティングオートメーション”という言葉から、すべてのマーケティング活動をそのツールで完結できてしまうように思ってしまうケースもあります。

すべてのコンテンツを自動生成して、自動で学習し、そしてひとりひとりに最適化して出しわけてくれるといったように…いまのテクノロジーで、そんなことはできません。

一方で、購入から1週間後にメールを自動配信する、たったこれだけでもMAでくくられるケースもあります。

このギャップが、「思っていたのと違う」という状況をつくりだす1つの要因になっています。

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三浦さん
また、B→Dash = MAではないので「MA市場」と、ひとくくりにもできません。
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Ledge編集部
と言いますと…?
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三浦さん
先ほどの話のようにMAはマーケティング業務のほんの一部しかできません。

正しくデータを取得し、そのデータを正しく加工・クレンジングし、それをキャンペーンやシナリオ設計に反映させていく。

このデータの取得・加工・統合・活用といった一連の流れができていないと、デジタル時代のデータを活用したマーケティングは実践できません。

そもそも、正しくデータを取得できていない、もしくは、データを統合できていない企業も多く、いざMAを通じて施策を打とうとしても、DWHやDMPのようなデータ統合基盤が別途必要になったり、他ツールとの繋ぎ合わせが難しく、プロジェクトが難航・頓挫することもあります。

MAだけでできることは限られており、裏側のデータの重要性を理解していることが大切なんです。

その点、B→Dashは“データの取得・統合・活用を1つでできる”ことがコアバリューなんです。

MAはあくまでも数ある機能のうちの1つです。

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兼本さん
MAって、一般的にメール施策されている企業がほとんどだったりすると思うんですけど、我々は基本となるデータを正しく持っていれば、どういう出し先でも、分析でも使えると考えています。

例えば、ユーザーによってはメールが良い人、LINEが良い人、アプリのプッシュ通知が良い人、サイト内レコメンドが良い人…色々なタイプがあります。

出し先は、正しくデータを持ってさえいれば無限に考えられる。

施策から入って「メール施策をやりましょう!」「アプリプッシュ通知をやりましょう!」となり、そこだけ検討するのは失敗の元。

データを正しく作って、それをどう使い、そしてその施策をどう評価するか。

そういった点において、B→DashとMAはカバー領域が全く異なります。

ツールを提供しているというよりもマーケティングプロセスを改善するソリューションを提供しているといったほうが正しいと思います。

正しくデータを持っておけば、あとで困らない。データの持ち方が今後を大きく左右しそうです。

今後おそらくデータ量が少なくなっていくことはないでしょう。

今のうちに統合されたデータベースを持つことは、かなり重要だということを改めて感じました。

マーケティングを中心に置いている会社は強い?

―マーケの組織って、施策と実行だったり、組織作りに手を焼いている組織も多いと聞きますが、どうでしょうか?

兼本さん

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兼本さん
三浦は組織作りを専門でやっているので、彼の想いは、もっと深いところにあると思うんですけど、マーケティング組織において重視しているのは、「やりたい方向性・想いの共有」、「全員で泥臭くやりきれるか」です。

組織として共通言語があり、進むべき方向性が一致していて、さらに全員のやりきる力があれば、遅かれ早かれ必ず結果を生み出すことができます。

一方で実行が伴わないとまったく価値がありません。

スキルや体制よりも、まずはスタンスやマインドの統一が何よりも大事なのがマーケティングの奥深いところだと思います。

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三浦さん
僕は少し違った観点から。

マーケティング組織を中心に動いている企業は“強い”という印象があります。

マーケティングの機能を認知形成や需要喚起、案件創出に限定するのではなく、マーケットとのコミュニケーションを通じた商品企画や開発にまで活かしていくことが、これから先もっと求められていくと思います。

R&D部門だけでなく、マーケティング組織を起点とした将来の需要予測によって、商品・サービス企画をしていくことができれば、市場の変化にも柔軟に対応できます。

マーケターが、いかに案件を創出するか、いかに数字を上げるかといった役割を担うだけでなく、もっと幅広い役割を担えるような組織にしていく必要があるんだと思います。

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三浦さん
あとは

  • 思ったことがあったら必ず言う
  • 一度決定したことを後から掘り返させず、徹底的に実行にうつす

といった空気づくりも極めて重要だと考えています。

ビジネスの世界ではほとんどの場合、正解はありません。

つまり、1000な状況はなく、常に5149といったような曖昧な状況の中で、“正しい判断”よりも“強い決断”をしていくことが求められます。

方針や施策が決定するまでの過程では、とにかく議論を重ねますが、最終的には強い決断を下して、徹底的に実行に移した方が効率もいいですし、成果も上がるものです。

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兼本さん
「決断したらとにかくやる」と言うとトップダウンに聞こえるかも知れませんが、フロムスクラッチはトップダウンとボトムアップがうまく共存している会社だと思います。

決断するにあたって、「思ったことがあったら必ず言う」というルールがあるので、組織として同じ方向を向いていけるんだと思います。

そして、決断に至る過程には全員の意見が乗っているので、実行時のパワーも必然的に大きくなります。

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三浦さん
インハウス型の組織は、同じ思いや共通言語をもって業務推進できるからPDCAを回しやすいですが、全ての企業がインハウスで出来るわけではなく、外部の企業の手を借りなければいけない場合もあると思います。

外部のパートナー企業と業務を推進していく場合でも、共通のKPIをお互いに背負って、日次でモニタリング/管理するようにしています。

同じ思いで、同じ目標(KPI)を追っていけば、内部だろうが外部だろうが関係ありません。

そこまで徹底的に外部の方の力を借りて業務を推進している組織は少ないと思います。

市場の声を聞き未来の製品作りに活かす。マーケターがいることにより進む方向まで見える。

マーケターを兼務で置かれている企業も多いですが、やはり専門的に人財を割く意味は充分にあると思います。

データホルダーとこれからのマーケティング

―一般の方にも、簡単な施策じゃ訴求しにくくなっているのかなと感じますが、今後のB→Dashのマーケティングはどういった方向を狙っていくんですか?

三浦さん

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三浦さん
リリースしてから約2年が経ちました。

当初は真新しいコンセプト・サービスだったので、色々な専門メディアを通じて露出が増えていくことで、情報感度の高いマーケターからの問い合わせがあり、すぐ導入にいたるケースもありました。

一方で、2年ほど経つと、明確な “同業界・同業態の成功事例”が求められるようになってきていると感じます。

そのため、これからは、いままで通りの導入事例や機能紹介といった通り一辺倒の情報発信ではなく、業界別の成功事例発信など、より具体的な成果訴求をしていくことが必要だと考えています。

B→Dash

https://mieruka-b-dash.com/

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兼本さん
あとは「主語」が大切です。

マーケターの方は情報感度の同じような人とか、同業界の動きをよく見ていらっしゃる。

だからこちらから発信するより、同業界の方とか、私たちのB→Dashを使用していただいているクライアントにお話しいただいたりするほうがはるかに信憑性があって、安心感がある。

フェイズ的には導入実績が増え、ファンも増えてきているので、そういった取り組みも進めていきたいと思っています。

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三浦さん
あとはどれだけ「体験してもらえるか」も考えています。

人間は体験価値がもっとも記憶に残りますし、それが最も消費行動のトリガーとなります。

加えて情報への接触頻度も重要です。

よく多大なコストをかけて大型のイベントを開催するケースがありますが、年に1度だけ大々的に盛り上げても数ヶ月後には忘れさられてしまう。

「誰に、何を、どのように」だけでなく、「どれだけの頻度で」発信していくかが重要です。

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三浦さん
それと、発信角度

どの角度からその情報に触れるか。

同じチャネル、同じメディアからでは、それ以上は響かない。

例えば、広告で触れて、SNSで触れて、イベントで出会った知り合いのマーケターからも同じ情報を聞く。

すると不思議なことにフッと腑に落ちてアクションにつながったりする。

コアとなるメッセージを同じにしつつ、色んな角度から発信し続けないといけません。

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Ledge編集部
なるほど。では、最後にマーケティング市場は今後どうなっていくと思いますか?
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兼本さん
データで勝負している強い会社は結構あって、例えば、伊勢丹の外商とかも究極のデータビジネスともとらえることができます。

顧客データという見えないアセットをベースにそこにテクノロジーという掛け算をすることによって、未来は相当広がる感覚があります。

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三浦さん
B→Dashはもの凄い量と質のデータ(B→Dashがアクセス可能なユニーク顧客IDで約3,000万、B→Dash上の月間流通総額約900億円)を記憶しています。

たとえ他のツールと機能が同じだったとしても、どういったデータを活用できるかによって、結果は大きく変わってきます。

今後、ますますテクノロジー自体はオープンソース化していくなかで、データホルダーがイニシアティブをとるようになるとデータホルダー同士の連携も起きていくと思っています。

そうすると、今はバラバラのオンライン、オフラインのデータが繋がり、ヒトの購買活動を具体的にデザインできるようになる。

テクノロジーを使えば間違いなくできるので、あとは時間の問題と思っています。

たしかに、今後はデータの質、量というのは必ずビジネスに大きく貢献してくると思いますが、特殊データというのも中小企業にとってビジネスチャンスになりそうです。

AIもそうだと思いますが、どんなデータをどうやって集めるか…。そこの勝負がより加速しそうですね。


違う業界からやってきても、変わらないマーケティングの考え方。そしてこれからのマーケティング。

いろいろな経験をしてきたからこそのお二人の言葉には非常に説得力がありました。

三浦さん、兼本さん、お忙しいところありがとうございました。