【富士ソフト】AI時代の生存戦略 ── 眠るAI人材を発掘し、育てなければ未来はない

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ベンチャー企業ばかりでなく、名の知られる大企業でも、AI時代に置いていかれないための動きをみせています。

AI人材の発見から育成、AIを活用したソリューション提案も行う富士ソフトも例外ではありません。

しかし、その始まりは“数人の勉強会”から始まったと、富士ソフト執行役員 八木 聡之氏は言います。

AI時代から取り残される危機感を感じた富士ソフトは、どのようにしてAIを取り入れ、事業展開までのアクションに落とし込んできたのか、富士ソフトの「AI時代生き残り戦略」を聞いてきました。

「正直、ディープラーニングをなめてた」富士ソフトが感じた”今までの技術が役に立たない”危機感

――八木
「正直、ディープラーニングなめてましたよ」

取材は、八木氏のこの一言で始まりました。

富士ソフトは10年ほど前からヒューマノイドコミュニケーションロボット「PALRO(パルロ)」の開発部隊がAIの取り組みを行ってきましたが、ビジネスの現場ではAIを使ってこなかった、そもそも使う機会がなかったと言います。

――「なめていた」とは、具体的にどういうことでしょうか?

――八木
「パルロを開発していた研究・開発部隊がすでにあったとはいえ、その組織は当時たったの20人。もちろんディープラーニングや機械学習をビジネスで活かす動きもありませんでした。

会社全体では約6,000人以上のエンジニアがいましたが、我々は大量のコードを書いてお金をもらうビジネスモデル

一方、AIがどうかというと、たった1000行程度のコードなんですね。ただ、技術的には非常に高度、さらに今まで培ってきた技術が役に立たないときます。量で勝負してきたので、様々なAIベンチャーも出てきていますし、正直やばいなと思ったんです」

その危機感が、本格的にAIに着手するきっかけだったといいます。

コード量は少ないが、高度な技術が求められる時代。そこに対して何が必要か? 何から手をつければいいのか? という観点で、八木氏はアクションに移していきました。

――八木
「まずは数十人の推進部隊を組み、会議を設けるところがスタートでしたね。

そもそも数年前まではAIの重要性に気づけている人も少なかったので、まずはそこから動き出し、AIを会社としてどのように活用していくかを考えていきました」

とりあえず動きだすことで現れたAI人材

――会社としてAI活用を考えていくのは、具体的にどのようなアクションから始めたのでしょうか?

――八木
「数十人のAI推進部隊を作るだけでは何も意味がないので、何かしらのKPI、指標が必要でした。

部隊発足時点では、AIの基礎的な知識や技術力も足りなかったので、まずはG検定を受けようと、合格に向けて動き始めました」

G検定とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(以下:JDLA)が実施する、ディープラーニングの基礎知識を持ち、事業に活かすための知識を有しているかを検定するものです。

AIの動向から手法、産業への応用知識を網羅的に習得することができるG検定は、今AI界隈で最も注目されている検定。富士ソフトはJDLAの賛助会員でもあります。

――八木
「社内でAIの勉強会を開き、2017年に実施された初回のG検定におよそ150人が合格、その中にはエンジニアだけでなく、営業や管理職のメンバーもいました。それ以降は役員クラスも含めた会社全体にG検定を推奨しています。より技術的なE資格に関しても予算を確保し、まずは12人で受験し、全員合格しています。

この流れで、社内で小規模なハッカソンをやろうという話になりました。当初は数人で開催するはずだったんですが、社内SNSで投稿したところ、全国支社のメンバーからハッカソンに参加したいという声が多くあがったんですね」

結局、小規模で行われるはずのハッカソンには、多くの社員がSNS経由で集まり、大規模なハッカソンとなったそう。

――八木
「参加したエンジニアの中には、実はAIに非常に詳しい人がいたり、すでに常駐先のクライアントにAI導入実績があるなど、思いもよらぬ発見が多くありました。

ゼロからAI人材を育成しないと、と思っていたにも関わらず、実はAI人材が社内に多く眠っていたんです。

まずはそこに気づけたこと、そして技術職以外の管理、営業メンバーもAIに興味を持ってくれた。最初のステップとしてG検定を指標に置いたのは正解でしたね」

富士ソフトがしたことは、企画書の作成や上層部との進まない議論ではなく、ただ行動したのみ。G検定受験を決め、勉強会・ハッカソンを開催するなど、まずは小さく動くということ、その重要性に改めて気づかされます。

AI人材が正しく活躍し評価されるインフラを作る

――勉強会を開きG検定を受験し、人材が発掘され育つ中で、組織として効果があるのは間違いなさそう。その一方で、新たに生まれた課題はあるのでしょうか?

――八木
「課題としてあるのが、G検定・E資格等を取得したAI人材の活用です。

AIの知識や技術を習得する人材は、すでに評価されている人間が多く、そういった人材は常駐先のクライアントもなかなか手放したくないため、AI人材の確保も難しいですね。

あとは、いわゆる優秀な“AI人材”を評価する仕組みがまったくないということです」

既存の評価基準に加えて、AIの能力を誰がどのように評価するか。その基盤作りにこれから注力していくと言います。

――八木
「すでにクライアント先にAIを導入していたエンジニアも、AIという観点ではまったく評価されていませんでした。

その課題を解決するために、まずはAIの重要性を理解している経営層が組織を横断する形で、評価することにしています。

AI人材がさらに生まれ育つように、全社として取り組んでいく予定です」

AI導入やAI人材の育成ばかりに目が行きがちですが、それを支えるインフラも必須。今後は、AIありきの組織作りも求められます。

まずは勉強会やPoCから ── 理想はAI推進部隊がいらない会社

――まだAI導入やAI人材の育成まで辿り着けていない企業にアドバイスはありますか?

――八木
「富士ソフトは現在、AI導入・開発支援を行っており、そこで思うのは、AIに携わる企業はクライアント含めG検定レベルの知識を保有しておくとよいということです。

支援先のクライアントも、AIに関して知識が少しあるだけで、スピード感がまったく違います。まずは小さいことから動き始める、差異がでるのはそこだと思います。

当社の今後の観点で言えば、AI推進部隊に頼らず全社員が自在にAIを活用できるSIerを目指していきたいです」

AIに関して知識が足りなければ勉強会を、AIプロジェクトでいえばPoCから。動けるところから確実に進めていくことが、これからのAI時代を生き抜く正攻法なのではないでしょうか。