G検定(ジェネラリスト検定)とは | 難易度・出題範囲・参考書、問題集・合格体験記まで

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本稿ではG検定(ジェネラリスト検定)についてまとめています。G検定とは何か、受験要項や出題範囲、参考書、合格体験記、受験するメリットなど詳しく解説します。

G検定とは

G検定(ジェネラリスト検定)とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(英称:Japan Deep Learninng Association、以下JDLA)が実施している資格試験です。ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有しているか検定します。ディープラーニングに関する知識を有し、事業活用する人材(ジェネラリスト)の育成を目指しています。

第1回が開催されたのが2017年11月であり、比較的新しい資格試験です。

受験資格なし
試験概要120分、小問226問の知識問題、オンライン(自宅受験)
(2020#1、問題数は前回実績)
出題問題後に解説
受験料一般:15,000円+税、学生:5,000円+税
申込サイトhttps://www.jdla-exam.org/d/
年当たりの開催回数3回(これまで約4か月に1回のペースで開催しています)

2022年における開催日程

第1回:2022年3月5日(土)
第2回:2022年7月2日(土)
第3回:2022年11月5日(土)

JDLA(日本ディープラーニング協会)とは

JDLAとは、ディープラーニング技術の活用による日本の産業力向上を目指し設立された組織です。ディープラーニング事業を核とする企業およびディープラーニングに関わる研究や人材育成に注力している有識者が中心となり、産業活用促進、人材育成、公的機関や産業への提言、国際連携、社会との対話など、産業の健全な発展のために必要な活動を行なっています。理事長は東京大学大学院工学系研究科教授の松尾豊氏が務めています。

E資格とは

JDLAは、G検定と共にE資格も並行して実施しています。E(エンジニア)資格とは、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているかを検定します。E資格では、ディープラーニングを実装する人材(エンジニア)の育成を目指しています。G検定に比べ、より専門的な内容を扱っています。

受験資格JDLA認定プログラムを過去2年以内に修了していること
試験概要120分、108問、会場試験(2020#1、問題数は前回実績)
出題問題JDLA公式HP上のシラバス参照
受験料一般:30,000円+税、学生:20,000円+税、JDLA正会員・賛助会員:25,000円+税
申込サイトhttps://cbt-s.com/examinee/examination/deeplearning.html
年当たりの開催回数2回(これまで約6か月に1回のペースで開催)

G検定を受験するメリット

G検定の受験には以下のようなメリットがあります。

・ディープラーニング(人工知能)に関する知識を体系的に取得できる
人工知能・機械学習・ディープラーニングの基礎知識から最新動向、法律・倫理までが出題され、幅広い知識が身に付きます。

・営業やマーケティングに活かせる
会社の営業職やマーケティング担当者であれば、人工知能やディープラーニング関連の商品やサービスの売り込みに生かせます。

・プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトを回せる
構想から運用まで担うAI開発プロジェクトマネージャーはビジネス課題を理解し、遂行する力が必要であり、G検定の取得は手助けになります。

コンサルティングに生かせる
技術を適切に理解し、導入する手助けになります。

また、資格としての効力として以下が挙げられます。

・転職や就職に有利
ユーザー企業・ベンダー企業問わず、就転職時にG検定保有者は書類選考が免除されるなど、検定試験合格者を優遇する企業が増えてきています。

・スキルや知識を証明し、社内外からの評価向上に役立つ
産業界・学術界の第一人者が毎回出題範囲を見直し、シラバスを策定。日進月歩する技術動向に対応しているので、ディープラーニング知識を持つ証明として活用できます。さらに合格者には認定ロゴを配布、名刺に記載できるので社内外にアピールできます。

JDLAはG検定を勧める人の例を次のように挙げています。

こんな人におすすめ

  • ディープラーニングの知識を体系的に学び身につけたい方
  • AIを活用したい企業のマーケティング職、経営企画職の方
  • 未経験からAIに関する仕事で就職や転職を考えられている方
  • 突然AIプロジェクトの担当者に任命された、AI関連部署に社内異動となった方
  • AIを活用したいという相談を受ける代理店、コンサルタントの方

合格率、出題範囲、傾向と対策

Photo by Kelly Lacy on Pexels

合格率

結果が公開されている直近の試験では、受験者数が6,580人、合格者数が4,652人、合格率が70.70%でした。また、のべ受験者数は21,275人、合格者数は14,523人、合格率は68.26%でした。

なお、合格ラインは7-8割と言われることが多いですが、公表はされていません。

G検定の申込者数、受験者数、合格者数、合格率の推移(出典:JDLA資料)

出題範囲

G検定の出題範囲は、人工知能、ディープラーニングの概要といった基本知識から、人工知能の壁、ディープラーニングの仕組み、ハードウェア、活用方法まで、幅広く出題されます。ディープラーニングを事業活用できる人材を育成することが目的なので、定義や仕組みが問われるだけでなく、活用スキルに関する問題も出題されます。またディープラーニングを利用する際の影響、法的規制、倫理、現行の議論など、ディープラーニングと社会の関係についても出題されます。

出題範囲は主に8個の項目に分かれています。以下に詳細をまとめました。

1.人工知能(AI)とは(人工知能の定義)
人工知能の定義、歴史、重要人物名など、基礎知識が出題されます。人工知能が抱える問題やそれによる議論も扱っています。
2.人工知能をめぐる動向
探索・推論、知識表現、機械学習、深層学習
―技術面から見た、ディープラーニング発展の歴史問題が出題されます。
3.人工知能分野の問題
トイプロブレム、フレーム問題、弱いAI、強いAI、身体性、シンボルグラウンディング問題、特徴量設計、チューリングテスト、シンギュラリティ
―人工知能の研究で議論されている問題やぶつかっている壁に関する知識、その問題を解決できない理由など、深い知識が問われます。
4.機械学習の具体的手法
代表的な手法、データの扱い、応用
―機械学習のアルゴリズムや計算手法、仕組みなど、技術面の知識を問う問題が出題されます。この項目は他よりも難しいうえ、出題数も多い傾向にあります。
5.ディープラーニングの概要
ニューラルネットワークとディープラーニング、既存のニューラルネットワークにおける問題、ディープラーニングのアプローチ、CPU と GPU、ディープラーニングにおけるデータ量
―ディープラーニングのついての基礎的事項を扱っています。ニューラルネットワークやハードウェアなど、技術面でのディープラーニング周辺の問題も出題されます。
6.ディープラーニングの手法
活性化関数、学習率の最適化、更なるテクニック、CNN、RNN、深層強化学習、深層生成モデル
―ディープラーニングの仕組みや、学習率の調整、精度を高めるテクニックなどディープラーニングを使う上で必要な知識を問う問題です。特定の分野に適したニューラルネットワークの仕組みなども問われます。
7.ディープラーニングの研究分野
画像認識、自然言語処理、音声処理、ロボティクス (強化学習)、マルチモーダル
―画像認識、自然言語処理などディープラーニングが応用されている分野に関する知識が問われます。
8.ディープラーニングの応用に向けて
産業への応用、法律、倫理、現行の議論
―ディープラーニングを利用する際の影響、法的規制、倫理、現行の議論など、ディープラーニングと社会の関係に関する問題が出題されます。また、最新のディープラーニングの動向や、ディープラーニングを応用できる分野、場面、活用の手法に関する問題も扱われています。

傾向と対策

問題形式は、空欄を埋める4択問題、語群から単語を1つずつ選んで複数の空欄に埋める問題、文章の正誤を問う問題、など主に3パターンで、全て選択問題です。

自宅試験なので調べながら解くことは可能ですが、問題数224問、制限時間120分と時間に余裕がありません。内容はディープラーニングについての知識が幅広く問われる入門的な試験です。インプットの量が非常に多いですが、ディープラーニングの知識を事業活用する人の育成が目的なので、専門的な知識がない人でも対応できる難易度となっています。

以下はHPに掲載されていた例題です。

例題)範囲:人工知能をめぐる動向より

以下の文章を読み、空欄に最もよく当てはまる選択肢をそれぞれ1つずつ選べ。

第一次AIブームは1950年台に起こった。この頃に人工知能と呼ばれたプログラムは(ア)をもとに問題を解いていた。特に、1996年にIBMが開発した(イ)は、チェスの世界チャンピオンであるガルリ・カスパロフに勝利したことで有名である。しかし、ルールや設定が決まりきった迷路やパズルゲームなどの(ウ)と呼ばれる問題しか解けないという課題があったために、研究は下火になった。

(ア)1. 知識表現 2. 表現学習 3. 機械学習 4. 探索・推論
(イ)1. Deep Blue 2. Bonkras 3. Ponanza 4. Sharp
(ウ)1. A/Bテスト 2. パターンマッチング 3. トイ・プロブレム 4. ダートマスワークショップ

G検定の例題 – 一般社団法人日本ディープラーニング協会(外部リンク)

G検定向けの参考書

Photo by Pixabay on Pexels

以下で、G検定を受験する人の多くが利用しているオススメの参考書を紹介します。

1. 深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト 第2版

価格:2,800円(税抜き)
ISBN:9784798157559
発売日:2021年4月27日
著者:一般社団法人日本ディープラーニング協会(監修)
発行元:翔泳社
ページ数:404ページ
判型:A5

日本ディープラーニング協会のG検定公式テキスト。幅広い範囲を浅く扱っています。問題は本書の内容を基準にしているので、一度目を通すことをオススメします。

2. 徹底攻略ディープラーニングG検定ジェネラリスト問題集
価格:2,100円(税抜き)
ISBN:9784295005667
発売日:2019年2月8日
著者:スキルアップAI株式会社 秋松真司、田原眞一(杉山 将 監修)
発行元:日経BP社
ページ数:224ページ
判型:A5

G検定の問題集です。公式テキストに例題は載っていますが、より多く解きたい人のための一冊です。すでに知識がある人は練習のため、そうでない人は問題確認のため、一冊持っておくと良いでしょう。この問題集で対策するのがオススメです。

3. 人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの
価格:1,400円(税抜き)
ISBN:9784040800202
発売日:2015年3月9日
著者:松尾豊
発行元:KADOKAWA
ページ数:242ページ
判型:B6

内容はG検定に至らないものの、初心者でもわかりやすい入門書です。知識が羅列されている「深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト」より流れを持って説明されているので、読みやすく、とっつきやすいです。入門書ですが、情報量は多く、G検定の問題もある程度は解けるようになります。

4. マンガでわかる!人工知能 AIは人間に何をもたらすのか
価格:1,300円(税抜き)
ISBN:9784797392548
発売日:2018年5月22日
著者:松尾豊(監修)、かんようこ(イラスト)
発行元:SBクリエイティブ
ページ数:208ページ
判型:四六判

漫画でわかりやすくAIについて解説しています。とにかく簡単で読みやすい一冊です。きっかけ作りにオススメです。

5. AI白書2020 〜広がるAI化格差(ギャップ)と5年先を見据えた企業戦略〜
価格:3,800円(税抜き)
ISBN:9784049110340
発売日:2020年3月2日
著者:独立行政法人情報処理推進機構 AI白書編集委員会
発行元:株式会社角川アスキー総合研究所
ページ数:536ページ
判型:A4

最新の人工知能状況について詳しく解説しています。内容が応用的なので検定に受かるだけが目的の人には向いていませんが、G検定の1歩先に行きたい人にオススメです。

勉強する際にはこれらの参考書を用いるのが良いでしょう。参考書の内容をどの程度インプットすればよいか、以下に勉強方法を解説します。

合格体験記

以下にG検定合格者の勉強例をまとめました。

・男性(Data Marketing div.データサイエンティスト)

AIに関わった年数1年未満
総勉強時間10〜20時間
勉強方法テキストや参考書を読み込む
使用した参考書『AI白書2019』『人工知能は人間を超えるか』『徹底攻略 ディープラーニングG検定 ジェネラリスト 問題集 徹底攻略シリーズ』

・女性(Corporate planning div.人事など)

AIに関わった年数なし
総勉強時間約20時間
勉強方法G検定公式テキスト数周(ほぼ通勤時の電車の中)、webでの模擬試験
使用した参考書『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト』

・男性(Media div.ディレクター)

AIに関わった年数1〜2年
総勉強時間8〜10時間
勉強方法教科書と参考書をひたすら読み、例題を解く
使用した参考書『人工知能は人間を超えるか』『AI 白書』『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト』

・男性(Media div.マーケティング・イベントプランニング)

AIに関わった年数1年未満
総勉強時間5時間
勉強方法G検定公式テキストを読み、例題を解く
使用した参考書『AI白書2019』『人工知能は人間を超えるか』『徹底攻略 ディープラーニングG検定 ジェネラリスト 問題集 徹底攻略シリーズ』

AIに関わった経験がある人は10時間ほど、そうでない人は20時間ほど勉強していた、と言えるでしょう。また、合格率が6〜7割と合格するだけであればさほど難しくありません。

参考書は深層学習教科書 ディープラーニングG検定(ジェネラリスト) 公式テキストをほとんどの人が使用していました。公式テキストで基礎固めしてから問題集を使って演習する人が多いようです。インプット量がかなり多いですが、全問選択問題なので、知識を丸暗記する必要はありません。

公式テキストよりも簡単な参考書から始めたい人は『マンガでわかる!人工知能 AIは人間に何をもたらすか』『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』から読み進めるのが良いでしょう。

AIとの関わり方

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人工知能の浸透を見据えて勉強することは大切ですが、知識を得るだけでなく実際に活用していくためのスキルを身に付けることの方が大切です。

人工知能を活用するために、プログラミングを習得し自分の手で実装することも選択肢のひとつです。そのようなAI人材の需要は高まっていますが、プログラミングを習得せずとも、人工知能を活用することもできます。そのためには、課題を理解し、それに合う人工知能ソリューションを選定できる知識が必要です。