グーグル、有名なAI研究者をまたも解雇「私は完全に消され、チームは奪われてしまった」

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米グーグルを解雇されたティムニット・ゲブル氏とマーガレット・ミッチェル氏に代わり、新しくトップに就任したマリアン・クローク氏(YouTubeより)

米グーグル(Google)の倫理的AIチームの共同リーダーを務めるマーガレット・ミッチェル(Margaret Mitchell)氏は2月19日、自身のTwitterアカウントで同社に「解雇された」とツイートした。Twitter上では同情の声や、今後の活動を応援する声が寄せられている。

グーグルと言えば、同じく倫理的AIチームの共同リーダーを務めるティムニット・ゲブル(Timnit Gebru)氏が現地時間2020年12月2日、自身のTwitterアカウントで、同社に解雇を通告されたと書き込み、大きな波紋を呼んだばかりだ。

米Axiosの報道によると、今回解雇されたマーガレット・ミッチェル氏は、先に解雇されたティムニット・ゲブル氏に対する差別的な扱いを示す例を見つけるために、自動化したソフトウェアを使用し、自身が過去にやり取りしたメッセージを検索していたという。

>>米Axiosによる報道

その結果、米CNETなどで報じられているとおり、マーガレット・ミッチェル氏はグーグルに企業のデータ取り扱いに関して調査を受け、職務用アカウントをロックされるにいたった。

>>米CNETによる報道

「私は完全に消され、チームは奪われてしまった」

一方で、グーグルは現地時間2月18日、責任あるAIに関する新しい専門知識センターを設立し、トップにマリアン・クローク(Marian Croak)氏を迎えると発表した。

グーグルによると、マリアン・クローク氏は画期的な技術に数十年かけて取り組んでおり、複数の分野で200件以上の特許を取得しているという。現在は、グーグルがAIについて責任を持って開発し、良い影響を与えることを確認するといった新しいプロジェクトに取り組んでいるとのこと。



解雇されたマーガレット・ミッチェル氏は自身のTwitterアカウントで、倫理的AIチームが刷新されたことを報じた米Bloombergの記事のリンクを張り、「私は完全に消され、チームは奪われてしまったようです」と書き込んでいる。

新しくリーダーに就任したマリアン・クローク氏は、今回の発表に際して「この研究に取り組んでいるグーグルの優秀な人材を結集できることに興奮しています」「私がやりたいのは、人々にもっと外交的な方法で会話をしてもらうことです。そうすれば、おそらく今よりもこの分野を真に前進させられます」などとコメントしている。

>>ニュースリリース

グーグル、研究者たちにAIを肯定的に論じるように指示か

このような交代劇の発端となったのは、ティムニット・ゲブル氏の解雇である。そもそも、ティムニット・ゲブル氏はどのような人物なのか。ティムニット・ゲブル氏はスタンフォード人工知能研究所(スタンフォードAIラボ、SAIL)の出身で、AI倫理研究の第一人者である。

とくに、米マイクロソフト研究所(Microsoft Research)に所属していた2018年には、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者であるジョイ・ブオラムウィニ氏(Joy Buolamwini)と共同研究した、AIによる顔認証が白人男性では高い精度を発揮できるものの、アフリカ系(黒人)などの有色人種では精度が低くなってしまうことを明らかにした論文は大きな話題となった。

今回解雇されたマーガレット・ミッチェル氏がそうであったように、ティムニット・ゲブル氏を擁護する声は多い。インターネット上ではグーグルに反対する署名に、グーグル社員2695人に加え、学術・産業・市民社会の支援者4302人が署名した。SNS上でも、グーグルのほか、マイクロソフトやNVIDIAなど、さまざまな企業の研究者たちがティムニット・ゲブル氏への支持を表明している。

ティムニット・ゲブル氏が解雇されたことを理由に、グーグル Trust & Safety(トラスト&セーフティ)でエンジニアリングディレクターを務めるデヴィッド・ベーカー(David Baker)氏および、グーグルのソフトウェアエンジニアであるヴィネシュ・カナン(Vinesh Kannan)氏が辞職したことも記憶に新しい。

今回、新しくマリアン・クローク氏をトップに迎えたところで、グーグルへの批判はもちろん、同社と研究者たち、もっと言えば社員たちとの攻防が収まるとは到底思えない。今後の動向に注目したい。