グーグル、AI研究者に最大650万円の助成金断られる 著名なAI研究者2名解雇の波紋

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画像はNeon Tommy Follow「IMG_5600」より

米グーグル(Google)による最大6万ドル(約650万円)の研究助成金「Google Research Scholar award」を、ウェスタン大学の助教授で、人工知能(AI)の社会的・倫理的影響を研究しているルーク・スターク(Luke Stark)氏が断った。グーグルが倫理的AIチームの共同リーダーを務めるティムニット・ゲブル(Timnit Gebru)氏およびマーガレット・ミッチェル(Margaret Mitchell)氏を解雇したことを受けたものだ。米CNNなどが報じている。

>>米CNNによる報道

ティムニット・ゲブル氏は2020年12月2日に、マーガレット・ミッチェル氏はその約3ヵ月後の2021年2月19日にそれぞれ自身のTwitterアカウントで、同社に解雇されたとツイートした。

ティムニット・ゲブル氏はグーグルの従業員4人を含む計6人とともに、同社の自然言語処理モデル「BERT」のような、大規模な言語モデルの倫理的な問題を取り扱う論文を共同執筆していた。ティムニット・ゲブル氏は上司から論文の撤回を求められ、同僚らに送るメールのなかで状況を説明したところ、グーグルから解雇されるにいたったとされる。

マーガレット・ミッチェル氏は先に解雇されたティムニット・ゲブル氏に対する差別的な扱いを示す例を見つけるために自動化したソフトウェアを使用し、自身が過去にやり取りしたメッセージを検索していたこともあり、同じく解雇されてしまった

これら不当とも言える解雇の影響は計り知れず、ティムニット・ゲブル氏が解雇されたことを理由に、グーグルの技術者2名が辞職した。グーグル Trust & Safety(トラスト&セーフティ)でエンジニアリングディレクターを務めるデヴィッド・ベーカー(David Baker)氏は米CNNと取材に応じ、「会社の文化を改善しようとしているうちに、疲れ果ててしまった」と述べたという。

最近でも、グーグルがティムニット・ゲブル氏およびマーガレット・ミッチェル氏を解雇したことに抗議し、複数の研究者たちが同社が開催する招待制のワークショップ「Machine Learning and Robot Safety Workshop」をボイコットした

テキサス大学オースティン校のCS部助教授であるビジェイ・チダンバラム(Vijay Chidambaram)氏は3月13日、自身のTwitterアカウントにおいて、本ワークショップを欠席すると明かしたコーネル大学のロボット工学の教授であるハダス・クレス=ガジット(Vijay Chidambaram)氏のツイートを引用リツイートし、「私の場合、彼らがやり方を変えるまでグーグルの資金を用いません」と宣言している。

今回、ルーク・スターク氏がグーグルによる最大6万ドルの研究助成金「Google Research Scholar award」を辞退したとする報道は、同社のティムニット・ゲブル氏およびマーガレット・ミッチェル氏の解雇に対する抗議のほんの一部に過ぎない。今後も波紋は広がっていくだろう。