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米グーグル(Google)で人工知能(AI)の研究チームのマネージャーを務めていたコンピュータ科学者のサミー・ベンジオ(Samy Bengio氏)氏は4月28日に、グーグルを退職する。米Bloombergや英ロイターなどが報じている。
今回のサミー・ベンジオ氏の退職は、倫理的AIチームの共同リーダーを務めるティムニット・ゲブル(Timnit Gebru)氏およびマーガレット・ミッチェル(Margaret Mitchell)氏が解雇されたことを受けたものと見られる。
サミー・ベンジオ氏はグーグルに2007年に入社し、AI研究チーム「Google Brain(グーグル・ブレイン)」を共同設立したことで知られる。米CNETの報道によると、サミー・ベンジオ氏はティムニット・ゲブル氏が解雇されて以降、グーグルを退社する従業員ではもっとも高い地位にあるという。
英ロイターの報道によると、サミー・ベンジオ氏はAIの権威として知られるスタンフォード大学のAI研究者で計算機科学者でもあるスタンフォード大学のアンドリュー・ン(Andrew Ng)氏にも評価されているようだ。
サミー・ベンジオ氏がスタッフに送信したメールを入手した米Bloombergは、同メールの内容を公開している。本報道によると、同メールには「次のチャレンジを楽しみにしていますが、この素晴らしいチームを離れることは本当に難しいことは間違いありません」と書かれているという。
過去には2名が辞職「疲れ果ててしまった」
ティムニット・ゲブル氏は2020年12月2日に、マーガレット・ミッチェル氏はその約3ヵ月後の2021年2月19日にそれぞれ自身のTwitterアカウントで、同社に解雇されたとツイートした。
ティムニット・ゲブル氏はグーグルの従業員4人を含む計6人とともに、同社の自然言語処理モデル「BERT」のような、大規模な言語モデルの倫理的な問題を取り扱う論文を共同執筆していた。ティムニット・ゲブル氏は上司から論文の撤回を求められ、同僚らに送るメールのなかで状況を説明したところ、グーグルから解雇されるにいたったとされる。
これら不当とも言える解雇の影響は計り知れず、ティムニット・ゲブル氏が解雇されたことを理由に、グーグルの技術者2名が辞職した。グーグル Trust & Safety(トラスト&セーフティ)でエンジニアリングディレクターを務めるデヴィッド・ベーカー(David Baker)氏は米CNNと取材に応じ、「会社の文化を改善しようとしているうちに、疲れ果ててしまった」と述べたという。
最近でも、グーグルがティムニット・ゲブル氏およびマーガレット・ミッチェル氏を解雇したことに抗議し、複数の研究者たちが同社の開催する招待制のワークショップ「Machine Learning and Robot Safety Workshop」をボイコットした。
また、グーグルによる最大6万ドル(約650万円)の研究助成金「Google Research Scholar award」を、ウェスタン大学の助教授で、AIの社会的・倫理的影響を研究しているルーク・スターク(Luke Stark)氏が断った。今後もティムニット・ゲブル氏らの解雇の影響は続いていくだろう。