グーグル、AI倫理チームの規模を2倍に 著名なAI研究者解雇のダメージ回復が目的か

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米グーグルを解雇されたティムニット・ゲブル氏とマーガレット・ミッチェル氏に代わり、新しくトップに就任したマリアン・クローク氏(YouTubeより)

米グーグル(Google)は今後数年間で、人工知能(AI)倫理に関する研究チームの規模を2倍の200人に拡大にする計画を立てている。

米ウォール・ストリート・ジャーナルが主催するワークショップ「The Future Of Everything Festival 2021」における、責任あるAIに関する専門知識センターのトップを務めるマリアン・クローク(Marian Croak)氏の発言で明らかになった。

米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、マリアン・クローク氏はグーグルの最高経営責任者で、グーグル親会社であるアルファベット(Alphabet)の最高経営責任者であるサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)氏は、AIによる危害や差別といった問題を回避するために、コードや製品の評価を任務とするチームの運営予算を増やすことを約束したと述べているという。

同報道では、マリアン・クローク氏による「AI技術を開発・展開する方法に責任を持つことは、ビジネスを成功させるための基本です。倫理的な方法で実施しなれなければ、ブランドに深刻なダメージを与えます」というコメントが紹介されている。

>>米ウォール・ストリート・ジャーナルによる報道(英語)

グーグル、著名なAI研究者2名解雇の波紋収まらず

グーグルは2020年12月から2021年2月にかけて、同社の倫理的AIチームの共同リーダーを務めていたティムニット・ゲブル(Timnit Gebru)氏およびマーガレット・ミッチェル(Margaret Mitchell)氏を相次いで解雇した。

ティムニット・ゲブル氏はグーグルの従業員4人を含む計6人とともに、同社の自然言語処理モデル「BERT」のような、大規模な言語モデルの倫理的な問題を取り扱う論文を共同執筆していた。ティムニット・ゲブル氏は上司から論文の撤回を求められ、同僚らに送るメールのなかで状況を説明したところ、グーグルから解雇されるにいたったとされる。

マーガレット・ミッチェル氏はティムニット・ゲブル氏に対する差別的な扱いを示す例を見つけるために自動化したソフトウェアを使用し、自身が過去にやり取りしたメッセージを検索していたこともあり、同じく解雇されてしまった。

これら解雇の影響は計り知れず、グーグルの技術者たちが辞職したり、複数の研究者たちが同社の開催する招待制のワークショップ「Machine Learning and Robot Safety Workshop」をボイコットしたり、グーグルでAI研究チームのマネージャーを務めていたコンピュータ科学者のサミー・ベンジオ(Samy Bengio)氏がアップルに移籍したりするなど、大きな波紋が広がっている。

最近でも、グーグルは非営利の公民権擁護団体「Color of Change」に業務に関する人種的公平性の調査を許可するように求められている。AIの多様性の向上を目指す「Black in AI」「Queer in AI」「Widening NLP」の3つの非営利団体にも資金提供を断られた。

今回、チームの規模を2倍すると語ったマリアン・クローク氏は、グーグルが現地時間2月18日、責任あるAIに関する新しい専門知識センターを設立すると発表した際に、トップとして名前が挙がった人物だ。

同発表を報じた際、私は「新しくマリアン・クローク氏をトップに迎えたところで、グーグルへの批判はもちろん、同社と研究者たち、もっと言えば社員たちとの攻防が収まるとは到底思えない」とつづった。

今回の発言はティムニット・ゲブル氏らの解雇にともなうダメージの回復が目的か。いずれにせよ、今回のようにAI倫理を重視する姿勢を見せたところで、グーグルが汚名返上するのは難しいだろう。