「やみくもに窓を開けて換気」をやめた山梨県厚生連健康管理センター、その理由は?

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※本稿はアステリア株式会社公式サイトに掲載されている事例をもとに編集しています



Gravio画像認識サービスについての調査資料


山梨県厚生連健康管理センターは、山梨県最大規模の健康管理センターとして県民の健康を長年にわたり支え続けている。このセンターが設立されたのは1986年のこと。JA山梨厚生連によって、健康診断のための施設として設立された。現在では山梨県民約12万人に健康診断や人間ドックの受診してもらうなど、山梨県の7割近くの市町村と提携している。

同センターでは、新型コロナウイルス感染症に対しても発熱外来を開設し早くから診察に対応していただけでなく、ワクチン接種やスタッフ派遣などさまざまな面で自治体と連携していた。当然、同センターではマスク着用や消毒の徹底、待合室のイスの間隔をあける、こまめな換気など徹底した新型コロナウイルス感染症対策を施している。

ところが、山梨県厚生連健康管理センターは、新型コロナウイルス感染症対策にあたって「やみくもに窓を開けることをやめた」という。

作業負担が大きかった「窓を開ける作業」

感染リスクを回避するために、同センターでは2020年までは各フロアにいるスタッフが目視で人数を確認し、“密”だと判断したら窓を開けて換気していた。

しかし、新型コロナウイルス感染症対策でただでさえ忙しいスタッフにとって、目視による確認作業と窓を開ける換気作業は負担が大きいものだった。また、人による主観的な判断では、本当に換気の必要があるのか厳密にはわかっていなかったそうだ。さらには、真夏に窓を開けると室内が暑くなり、冬は寒くなってしまう。これらの背景をふまえ、窓を開けて換気する際には「“客観的な判断基準”があったほうがいい」と考えるに至った。

同センターの担当者も「当初は感染回避が何よりも最優先だったので『とにかく窓を開けろ、開けろ』の方針でしたが、やはり、やみくもに開けているだけでは季節によって室内の快適さが大きく損なわれてしまう」と話す。

これらの解決策として、厚生労働省が室内換気の目安として示している「CO2濃度が1000ppm以上」という基準値を正確に測定し、換気の目安を可視化する方法がないか探し始めた。CO2濃度を可視化する測定器はネットで安価に入手できるものもあったというが、測定器のそばまで定期的にスタッフが足を運ぶ必要があったため、現場が抱える根本的な課題解決には至らなかった。そこで何かいい方法がないか探していたところ、アステリア株式会社が提供する「Gravio」と出会った。

「Gravioなら情シスの手を借りずに独力でも導入できるかもしれない」

アステリアが提供しているGravioはノーコードでデータ収集や活用が可能なミドルウェア。CO2センサーによる3密防止ソリューションやネットワークカメラによるAI人数検知などでさえも、AIやIoTへの知識が少なくても手軽に導入までを実現する。

実際、Ledge.ai編集部でインターンをしているAIなどの開発未経験の学生でも、2時間あればAIによる人数検知ソリューションをゼロから実装させられた。

山梨県厚生連健康管理センターがアステリアに問い合わせをしたのは2020年11月。翌年の2021年1月にはすでに本番稼働させたそうだ。同センターの担当者は「別の業務に追われている期間もあったので、実質的にははるかに短い期間で構築作業を終えられていた」という。それほどまでに手軽にCO2検知ソリューションを実装させられるのもGravioの特長だ。

山梨県厚生連健康管理センターでは、Gravioを使って、CO2センサーを設置しCO2濃度を計測できるようにした。CO2センサーによる計測値が一定値を超えると警告ライトで周囲に通知できるようにしている。

特徴的なのは、CO2の濃度を可視化するLED表示パネルと警告ライトをセンター内の各所に配置することで、スタッフだけでなく受診者も確認できるようにしている点だ。これにより、誰が見ても“密状況”がわかるようになり、とくに受診者に対しては安心・安全を提供できているという。

同センターが導入したGravioによるセンサー類の構築や設定は、総務課の課長が独力で実装まで完遂させたそうだ。同氏は自身について「コンピュータに詳しいわけでもなく、ITリテラシーも高くはなかった」と振り返るが、アステリアの担当者によるデモや説明を受け、「Gravioなら自分でもできるのではないか」と思い挑戦したという。

多くの企業でも言えることだが、IoTやAIソリューションの導入は情報システム部などに対応してもらうことが多い。しかし、情シス部はさまざまな案件によって忙殺されていることもあるため、一刻も早く導入させたい場合は自身でどうにかするしかない。その点Gravioは文字どおり“誰でも簡単に実装できる”を体現するミドルウェアであり、山梨県厚生連健康管理センターが求めていた「早く使いたい」というニーズも満たした。

ちなみに、実装に携わった先の担当者は「わからないことが出てきても、アステリアに質問すればすぐに回答してくれた。構築といいつつも、プログラミング不要で、シンプルな設定作業のみで済むため簡単だった」と感想を述べている。

現場の医師からは「CO2センサーを追加できないか」と要望の声

山梨県厚生連健康管理センターではGravioを活用したCO2センサーは14ヵ所に設置している。3階建ての各フロアにエッジコンピュータを置き、密になりやすい待合スペース、受け付けカウンター、カフェスペースなどにCO2センサーと警告ライト(Gravioライト)を設置しているそうだ。

同センターでは、CO2濃度レベルが800ppm未満だと警告ライトの色が緑色に、800ppm~1000ppmの範囲だと黄色に、1000ppmを超すと赤色に光るように設定している。ライトの色が緑から黄色に変わるとすぐに換気するようにルール化しているため、厚生労働省が室内換気の目安として示したCO2濃度1000ppm以上を超したことは一度もないという。

受診者も安心できる環境を提供するようにした、というのは先に記載したとおりだが、いまでは働く医師から「CO2センサーを追加できないか」と要望が挙がっているそうだ。

胃カメラ検査をする診療現場では、受診者がマスクを外して嗚咽や咳をすることがあるため、より厳格な換気対策が求められる。そのため、検査用の個室それぞれにCO2センサーを追加するべきでは、と声が挙がっているという。また、健康管理システムやデジタルサイネージなど、外部のシステムや機器とのデータ連携ができればさらに便利になるのではないか、とGravioの新たな使い道も模索されているとのこと。

Gravioを使った取り組みは、同センターでは今後も積極的に実施予定だ。換気するために窓を開けたことによる室内の温度変化の可視化や、重要情報を管理している部屋の入退室管理、AI画像推論を使った待合室の混雑状況の検知およびウェブサイトでの待合人数の公開など、Gravioを使ったことによるアイデアや他社事例をもとにした取り組みを検討している。

そのほか、山梨県厚生連健康管理センターでのGravio活用におけるインタビューは、Gravioのウェブサイト上で公開されているので、チェックしてみてほしい。